おすすめ度 ★★★★★★★☆☆☆
24時間営業のファストフード店に深夜に集まる人々の視点から、貧困層が抱える悲劇を描いたアーロン・クォック、ミリアム・ヨン主演の社会派ヒューマン・ドラマ!!
作品紹介
日本劇場未公開 東京国際映画祭で上映
今回ご紹介する作品は、アーロン・クォックが元凄腕金融ブローカーながらもホームレスとなってしまう男を演じたヒューマンドラマです。
それでは、ますはあらすじから、
金融ブローカーとして成功していたポックだったが、公金を横領してしまい、10年間服役した後は、定職にもつけずに24時間のファーストフード店で夜を過ごすようになっていた。
そこには、色んなワケありの人々が集まり、家族のような関係を保っていた。
経営難のラウンジで働くジェーンは、羽振りが良かった頃からのポックの知り合いで、ポックに想いを寄せていたが、ポックは覚えていなかった。
そんな、2人にある悲劇が起こる、、、、。
監督は、ジョニー・トー監督やソイ・チェン監督の助監督を務めた後、本作でデビューし、監督二作目となる2023年製作(斷網)でもアーロン・クォックとコンビを組んでいる
ウォン・シンファン監督で、貧困層の日常と悲劇を詳細に描いています。
主演は、(プロジェクトグーテンベルク偽札王)(詳しくはこちら)や(ピースブレーカー)(詳しくはこちら)等の香港四天王の一人、
アーロン・クォックで、元エリートのホームレスという役柄を熱演しています。
で、そのアーロンに密かに想いを寄せる売れない歌手役で、(風雲!格闘王)や(白蛇伝説)等のミリアム・ヨンが登場し、
アーロンを想い続け、優しく見守る深みのある女性を好演しています。
で、ある理由で、ファーストフード店の決まった席に座り続ける老人役で、(ミッシングマン)(詳しくはこちら)や(群狼大戦)(詳しくはこちら)等の
アレックス・マンが登場し、瞬発力のある演技で味を出していきます。
で、アーロンの母親役で、(キョンシー)や(スペシャルID)等のパウ・へイチンが登場し、姿を見せなくなった息子を、
何年間も待ち続ける母親役を好演しています。
で、実は絵の才能がある男役で、(幽霊刑事)(詳しくはこちら)や(七人楽隊)(詳しくはこちら)等の名脇役チョン・タッミンが登場し、
迫真の演技で、後半にかけて展開のある役柄を好演しています。
で、幼い娘を持つ若い母親、通称ママ役で、(シャクラ)(詳しくはこちら)や、アンディ・ラウ主演の新作(潜行)等に出演している
リウ・ヤースーが登場し、義母の借金を返しつつ、娘のために必死に働く女性を好演しています。
で、そのママの義母役で、(ドラゴンへの道)や(蛇鶴八拳)等のノラ・ミャオが特別出演し、
ギャンブル依存症から抜けられない義母役を演じています。
で、アーロンと出会い、ストリートの色んな事を教えてもらう少年役で、サモ・ハンも出演しているコメディ(如珠如寶)やパトリック・ツェー主演の(殺出個黃昏)等の
クー・ティンヒンが登場し、ナイーヴな少年が少しづつ成長していく姿を好演しています。
で、アーロンの妹役で、(ホワイトバレット)や(華麗なるオフィスライフ)等のキャシー・ウーが登場し、
突然姿を消した兄の借金を返しつつ、母親の面倒も見ている妹役を好演しています。
そんな、スタッフ・キャストで製作された本作の物語は、まずは家族と上手く行かずに家を飛び出し、そのままなんとなく路上生活をしている青年サムチャイの物語から始まります。
で、とりあえず携帯(主にゲーム用)と荷物だけを持ち出して家出したため、どうしようもなくなっていたサムチャイが、
同じく路上生活をしている面倒見の良いアーロン・クォック演じるポックに出会います。
で、ボサボサ頭で、髭の生え邦題ながらも、上にスーツを着ている、という独特の出で立ちのポックに、
なんとなく着いて行く事になったサムチャイは、色んな事を教えてもらいながら、深夜になると24時間営業のハンバーガーショップへとやってきます。
そこには、夫の死後、借金を返しながら、ギャンブル狂の義母の借金も返しつつ、幼い娘のために必死で働く母親(通称ママ)とその娘や、
自殺して亡くなった妻を忘れられず、ずっと同じ席で妻の帰りを待ち続ける老人、
幼いころから痩せた外見だけで差別を受け、何事も上手く行かなくなってしまった男性等、
様々な、行き場の無くなった人々が自然と集まり、なんとなく家族のような関係となっています。
ただ、ここも基本的には深夜に寝るために集まっている、という感じで、昼間はそれぞれの生活を送っている、という、
店には出来るだけ迷惑をかけないようなルールの下に、生活が送られています。
で、アーロンには、実は他人に誇れない過去があり、10年前には金融ブローカーとしてかなりの金額を稼いでいたものの、
公金横領に手を出してしまい、結局は逮捕され、10年後に出所したら、どこにも就職することができずに、そのまま路上生活を始めてしまった、という過去がある事が分かります。
で、しかも、その時の横領金を、妹(多分母親も)に返済させ続けてしまっている引け目と、愛情深く育てられた母親の期待を裏切ってしまった、
という後悔と懺悔の想いが強すぎて、出訴後もどうしても家族に会いに行けない、まま時が過ぎて行ってしまっている、というやるせない日々を送っている事も分かっていきます。
で、そんなアーロンを含めたファストフード店に集う人々を、優しく支える女性が存在します。
それが、長年歌手を生業としながらも、大成する事なく、場末のカラオケバーで、リクエストに応えて他人の歌を歌い続けるミリアム・ヨン演じるジェーンで、
実は、ポックは忘れてしまっていますが、ジェーンは、羽振りが良かった時代にポックに出会っていて、
その頃からポックに密かに想いを寄せている事が分かります。
頻繁に喧嘩で揉めるポックとジェーンですが、なんとなく心の奥底では想い合っているような関係が続いています。
ただ、ポックは昔のジェーンの事は覚えていないようですが、、。
でも、本当に覚えていないのでしょうか、、、。
で、そんな中、ママは、義母(演じるのは貫禄のついたノラ・ミャオ!!)の借金の返済を、黒社会の構成員に迫られ、
お金に困ったママは、路上で自らの体を売ろうとまでしてしまい、ポックやジェーンに引き留められ、なんとか援助も受けて借金を返し続けます。
面倒見の良いポックは、ママに仕事を譲ったり、仕事中には娘の面倒を見たり、と皆の頼れる存在となっていますが、
その頃から気になる咳を繰り返し始めます、、、。
という感じで、ポックとジェーンの物語を中心に、そこに集まった貧困層の人々の、それぞれの生活と苦悩が、それぞれの目線で描かれていきます。
リアルな表現から、ドラマチック過ぎる表現まで様々ですが、年齢を重ねたアーロン・クォックとミリアム・ヨンの物語は、
二人の説得力のある名演を伴って、非常にグッとくる物語で、なんとなく、そうなるだろうなぁ、という展開は読めますが、
家族に帰って謝罪したくても、どうしてもその一歩が踏み出せないアーロンの逡巡と、歌手としての大成は、もう諦めていても、
輝いていた頃に着ていた衣装は処分できずに、輝いていた時から想いを寄せている人との思い出は捨てきれないミリアムの物語は、
ミリアムが選択した人生について、ミリアム自身が語る最後の台詞に集約されていて、涙を誘います。
という感じで、香港の貧困層の人々の悲劇を、時にリアルに、時にドラマチックに描いた秀作ヒューマンドラマとなっていますので、
香港映画好きの方や、ドラマ映画好きの方等、ご鑑賞されてみてはいかがでしょうか。
恐らく、アーロン、ミリアムと同年代の方だと、結構胸に刺さる物語ですよ。
作品情報
2019年製作 香港製作 ヒューマンドラマ
監督 ウォン・シンファン
出演 アーロン・クォック、ミリアム・ヨン、アレックス・マン、チョン・タッミン、リウ・ヤースー、クー・ティンヒン、パウ・へイチン、キャシー・ウー、ノラ・ミャオ、ロー・ウィンチョン
↓ランキングに参加しています。もし、宜しければ下記をクリックお願い致します↓
映画評論・レビューランキング
にほんブログ村