お薦め度 ★★★★★★☆☆☆☆
日本以外では大人気の探偵シリーズ第3弾は、ワン・バオチャン、トニー・ジャー、妻夫木聡、長澤まさみ、浅野忠信など豪華スターがそれぞれしっかり見せ場を作る奇跡的なバランスのお祭り映画!!
作品紹介
2021年7月9日公開
今回ご紹介するのは、アジア圏の豪華なスターが日本を舞台に共演するお祭りドタバタアクション作品です。
それでは、まずはあらすじから、
チャイナタウンに住む中国人探偵タン・レン(ワン・バオチャン)とチン・フォン(リウ・ハオラン)のコンビは、友人である野田探偵(妻夫木聡)の捜査協力のために日本を訪れる。
そこで、ヤクザ組織のボス(三浦友和)の冤罪を証明するために捜査を開始するが、何者かの妨害工作などにもあい、捜査は進まなかった。
そんな時、ある組織が事件に深く関わっている事を知り、チン・フォンは決断を迫られることになる!?
日本以外のアジア圏で大ヒットしている中国製作の人気探偵コメディシリーズの第3弾です。
日本では1作目、2作目ともに未公開のままでの、緊急公開となります。
一応、シリーズの流れとしては2015年製作の1作目が、タイのバンコクのチャイナタウンを舞台としていて、そこで探偵業を営むタン・レンを甥であるチン・フォンが訪れ、殺人事件の容疑者にされてしまった叔父の容疑を晴らすためにチン・フォンがタイ中を捜査で駆け回る、という物語となっています。
で、続く2018年製作の2作目は、アメリカのニューヨークのチャイナタウンを舞台としていて、現地で開催されている(世界名探偵大会)に参加したチン・フォンとタン・レンがマフィアのボスの孫を殺した犯人を突き止めるという物語となっています。
この2作目で、3作目で妻夫木聡が演じている野田探偵が既に登場していますので、2作目からの引きのネタもあるようなので、やはり2作目だけでも早く鑑賞したいところですね。
という事で、日本以外では記録破りの大ヒット中の本シリーズですが、本作は探偵が活躍する物語という事で、おそらく2作目あたりで、クローズアップされたと思われる、ある設定が採用されています。
作品内の探偵界では常識のように使用されているという設定の、探偵の事件解決率をそのままランク付けした、【クライマスター】と呼ばれる探偵アプリです。
物凄く、今風で、漫画チックな設定ですが、この設定を取り入れる事で、日本や、中国、タイ、アメリカなどの世界中の探偵が、そのアプリ内ランクを上げるために
世界中で事件の捜査を行う、という強引な展開も、強引に納得させるようになっています。
常識的に考えたら、本作の事件のように日本で起きた殺人事件の捜査を日本人探偵を介しているとはいえ、実際の捜査を外国に住む中国人にわざわざ依頼する事なんて、
何か特別な理由がない限り絶対ありえません。
ただ、本作には、そいういう漫画チックな世界観が売りの作品でもありますので、日本が舞台の作品ですが、かなり非日常的な荒唐無稽な展開となっています。
まず、二人の探偵が成田空港に降り立ったシーンで、空港内が、いきなり無法地帯のような荒れ狂った日本人で溢れかえっています。
中国探偵『日本って法治国家だよね?』
野田探偵『ウェルカム・トゥ・ジャパーン!』
みたいな感じで、いきなり本作が、そういう荒唐無稽で漫画チックな作品であることが示されます。
しかも、ここで一騒動あるのですが、その一連のアクションもワンカットで撮影する、というかなり気合の入った冒頭で、
わざわざ名古屋にこの成田空港の巨大セットを製作して撮影されたようです。
ある意味、この冒頭のシーンで、いかに本作の世界観に没入できるかどうかが、本作を楽しめるかどうかに、そのままつながってくるかと思われます。
気持ちの切り替えを、作品世界に合わせつつ、空港のシーンから続いて街中をゴーカートで走り廻るカーチェイスシーンへとなだれ込みます。
流石に、そんな事は、絶対現実世界ではありえませんが、でも段々と作品世界に慣れてくると、この非現実的なドタバタアクションが逆に癖になってくるので不思議です。
恐らく、本シリーズを2作目まで既に鑑賞している日本以外の人たちは、本作の世界観にすでに耐性があるので、この冒頭の一連のアクションも『待ってました!』的な展開なのかもしれませんが、
いきなり本作から鑑賞している日本人は、この冒頭のアクションで、なんとか作品世界に慣れて、物語に入り込んでいく必要があります。
ただ、なんだかんだとドタバタを見ている内に、そのアクションにトニー・ジャーの超絶アクションが混じっていたり、
実は、その風貌で、頼りないズッコケキャラかと思いきや、実際は幼いころより嵩山少林寺で修行を積んだという経歴の持ち主、ワン・バオチャンの、
凄まじい身体能力を活かしたアクションの数々が、要所で入りますので、
荒唐無稽で漫画チックでありながらも、リアルな本物のアクションが、その中に潜んでいる、というちょっと他では味わえないようなアクションシーンの連続となっています。
ですので、このゴーカートアクションが終わるころには、逆にこの唯一無二の世界観にすでにハマってしまう人も結構多いのではないかと思われます。
で、そのまま、依頼のあったヤクザ組織のボスに面会に行くのですが、ここでもヤクザでありながらも、本気で危ない人たち、という表現ではなく、
気合が入っていながらも、どこか憎めない人たち的な描かれ方をしています。
そこから、回想シーンなども交えつつ、捜査を開始していくわけですが、捜査シーンでは、手がかりを探しながら、テレビシリーズの(シャーロック)のように手がかり一つ一つにスポットを当てて、
細かく検証を重ねていく、というスリリングなシーンをVFXなども用いながら表現されていて、アクションやドタバタコメディだけでなく、
ミステリーを盛り上げるシーンもしっかりと見せ場が作られています。
世界的に有名な探偵小説の捜査方法の法則などの引用も多数ありましたので、しっかりとそういったミステリーの王道要素も加えながら物語は展開していきます。
さんざんドタバタを繰り返した挙句に、ラストではまさかの泣ける展開が待っている、という奇蹟のような脚本を担当したのは、2作目、3作目からの監督でもあるチェン・スーチェン自身が書いているようで、
その独特の世界観とコメディ、アクション、ミステリーを絶妙のバランスで取り入れた物語展開に今後の大活躍も期待できそうです。
監督始め、巨大セットを丸ごと製作してしまうという製作サイドの凄さもありますが、本作はそのキャスト面で、まるで邦画作品かと思ってしまうぐらいの豪華なキャストの共演が実現しています。
日本側のキャストではまず、2作目からすでにシリーズに登場している野田探偵役の妻夫木聡の作品への溶け込み方が素晴らしいです。
中国側の主演2人と共演しているシーンが多いですが、もう完全にゲストという感じではなく、3番目の主演キャスト、といった感じで、中国側と日本側の橋渡し役として十分すぎるほどに活躍しています。
(ワイルドスピード3)で『GO!』と言っていたことが懐かしいですね。
で、何といってもラストで作品の流れを全部持って行ってしまうのが、小林秘書役の長澤まさみで、正直物語的には予想がつくような展開になりますが、
ラストの熱演のおかげで、冗談みたいな展開の多い作品が急に無茶苦茶引き締まる、という物凄い説得力のある演技となって印象を残していました。
個人的には、他のキャストのように弾けたシーンも観たかったですが、他のキャストでは代用がきかないぐらいの存在感のある演技でした。
その他にも依頼主でもあるヤクザのボス役の三浦友和や、警察官役の浅野忠信、殺人犯役の染谷将太、裁判官役の鈴木保奈美など、
邦画作品でもあまり見た事のないような凄い顔ぶれの共演が実現しているのも中国製作作品の勢いを示しているようです。
その他にも、前作からの出演者や、スピンオフドラマからの出演者など、唐人街探偵ユニバースの展開も見せているようですが、
そういう部分を楽しむためにも、早急に前作までをリリースして欲しいところですね。
個人的にはワン・バオチャンとトニー・ジャーのバトルが是非とも観たかったのですが、身内という事で、それは今回お預けでした。
対決はありませんが、それぞれの超絶アクションは合間で見れますので、十分堪能はできるようになっています。
それにしても、トニー・ジャー、真面目な戦う男か、凶悪な敵、みたいな役柄が多いですが、本作のようなコメディ演技が意外にハマっていて良い感じです。
やってることは凄いのに、スッコケて、しかもなんとなくイジられている、というキャラクターが、凄く親しみがわいてしまう役柄でしたので、
今後は、そういったキャラクターを演じている気さくなお兄ちゃん的なトニー・ジャーも、もっと見て見たいですね。
あと、出演者で言えば、今回ラストに香港映画ファン感涙のあの大スターがゲスト出演しています!
それを書いてしまうと楽しみが半減してしまいますので割愛しますが、香港映画ファンで知らない人は絶対にいない、あの大スターです。
本シリーズは4作目の予定としてロンドンが舞台となるそうですが、恐らく、その大スターがメインで登場する展開になるのではないでしょうか。
そうなってくると滅茶苦茶楽しみですね。
と、思いつつ、劇場で販売されているパンフレットを購入すると、まさかのそのスターの名前と解説が、、、。
書いてしまうんかいっ!
いや、そこは絶対事前情報なしで、鑑賞した方が良いと思います。
それを売りにするなら、あの大物スターもラストで登場!?ぐらいの謡い方の方が良いと思うのですが、どうでしょうか。
という事で、前半に気持ちの切り替えがちゃんとできれば、その後続く漫画チックなシーンの連続も、しっかりと楽しむことができ、
後半には、その世界観がなんとも言えない楽しさに変わっていき、ラストでは、まさかの号泣展開が待っている、という奇蹟のバランス感覚の中国映画の勢いを感じる作品となっていますので、
娯楽作品好きの方など、ご鑑賞されてみてはいかがでしょうか。
絶対にシリーズ全作観たくなりますよ。
作品情報
2021年 中国製作 アクションコメディ
監督・脚本 チェン・スーチェン
出演 ワン・バオチャン、リウ・ハオラン、トニー・ジャー、クララ、染谷将太、鈴木保奈美、妻夫木聡、長澤まさみ、浅野忠信、三浦友和、奥田英二
その他の日本人か活躍する香港映画作品
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