おすすめ度 ★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
シンガポール製作による(グエムル)へのリスペクトが香るトレイン暴走パニックとモンスターパニックを融合させた薄味展開のモンスターパニックドラマ!!
作品紹介
2023年7月14日公開
今回ご紹介する作品は、珍しいシンガポール製作のモンスターパニック作品です。
それでは、まずはあらすじから、
幼い息子ルーカスと共に地下鉄で帰宅中の母親イーだったが、突如地下鉄が制御不能となり、暴走し始める。
閉鎖されていたはずのトンネルへと突き進んだ列車は、暫くすると停まるが、そこは未知の生物の巣窟となっていた!?
シンガポール製作のモンスターパニック作品です。
中国語のタイトルが付いていて、全編中国語で台詞のやり取りをする作品なので、中国作品のようですが、
シンガポールでは英語が公用語であるものの、ほとんどの人が中国語で会話する背景がありますので、生粋のシンガポール製作の作品になります。
監督は、テレビシリーズ(The Multiverse at 13 Hill Ave)等のJ・D・チュアで、他国で製作されたモンスターパニック作を参考にしたような既視感のある物語を演出しています。
主人公を演じているのは、バンパイアコメディ(女鬼爱上尸)等に出演しているジェセカ・リウで、過去の事故で心に傷のある元看護士を好演しています。
で、地下鉄のコントロールセンターで、一人真面目な意見を言い続ける職員役で、ホラーオムニバス作品(开夜车)等のアンディ・チェンが登場し、
真面目な事を言う割にはロン毛でポニーテール、という文化の違いを感じさせる真面目会社員を演じています。
で、主人公達と行動を共にする女子大生役を、フレッシュなアシュリー・ソーが演じ、活発な魅力で物語を主人公並みに引っ張っていきます。
そんなシンガポールスタッフ・キャストが製作した初のモンスターパニック作品の物語は、冒頭で、ある少年が、
父親に謎の爬虫類のペットを買ってもらうところから始まります。
どういう世界観なのかは全く分かりませんが、この爬虫類のペットが、もう本作のいきなりの答えぐらいに未知の生物で、
水槽の中に入っていてまだまだ手のひらサイズなので危機感はありませんが、どう見ても成長するとヤバそうな雰囲気を出しています。
何故、こんな生物が存在するのか?何かの突然変異なのか?この生物を買ったペットショップでは他にどんなペットが売っているのか?そもそも爬虫類なのか?等の説明は無いどころか、
このモンスター初登場シーンは、まさかの本作のタイトルが出る前のエピローグ的なシーンで、走馬灯のように描かれていますので、
興味だけ引いておいて、この未知の生物に関する説明は一切なく、物語は時間が飛んでしまいます。
因みに、本編突入後も、モンスターの説明はありませんので、結局本当に最後まで一番知りたいモンスターについては何も分かりません。
で、走馬灯の後のタイトル提示後に始まる本編は、いきなり時間が経過していて、
母親が運転する乗用車が事故を起こしてしまい、その事故で同乗していた夫は亡くなり、そのショックで少年は、心を閉ざしてしまい、言葉を発さなくなってから、さらに一定の時間が経過している、
という最近の短めの中国映画の流れを汲んでしまったかのような、物語の発端と何故そうなったのか?等の理由を一切描写する事無く、
物語は、一番やりたかった地下鉄のシーンへと突入してしまいます。
因みに、事故の詳細なども、物語が進むにつれて小出しにしていく、という中国映画っぽい言葉足らずさで、
主人公二人が積み重ねていくべきドラマは断片的なスカスカ状態で、物語は進んでいきます。
で、本題の舞台である地下鉄に舞台が移ると、今度は、地下鉄を運営する鉄道会社の方のドラマが物語の半分を占めていくようになります。
予算のカットによって、施設の老朽化や、システムのアップロードができずに、古いシステムで運営しているので何かと危険、
というちょっと、現代では考えられないような杜撰な管理体制で、案の定システムのエラーによって、地下鉄は暴走し、
そのまま配線となっている線に入っていって、ある程度進んだ地点で急停止します。
で、ここまできてモンスター編へと突入していく事になるのですが、本作、そこまでの人間ドラマを結構大胆に端折ってしまう割には、
モンスター描写よりも人間ドラマを優先して描くという表現で、パニックものにありがちな自分勝手な太めは速攻で犠牲になりますし、
悩みを抱える女子大生は活発に主人公達を助けてくれますし、ヒーローっぽい位置にいる男性キャラも親子を導いてくれる、
という感じでモンスター映画でお馴染みの王道展開が描かれていきます。
お馴染みの展開の中で、モンスターの描写だけが抜けている、という感じでしょうか、、。
ただ、この人間ドラマに鉄道会社の、責任と取る、取らない、上司に連絡する、しない、等のモンスターとは別次元の人間ドラマも同じ割合ぐらいで挿入されますので、
人間ドラマの半分はモンスターの存在を知らない鉄道会社の社員が相談し続けるドラマとなっています。
簡単に言ってしまうと、多くの人が本作を鑑賞する目的になっているはずのモンスターの活躍を描いたシーンが極端に少ない
作品となっています。
79分という、そもそもが短い作品で、低予算なのは理解できますが、人間ドラマを盛り上げるにしても観たい部分は端折られて、
モンスターとは関係ない鉄道会社社員の相談が描かれる、という望んでいない意外性が前面に出た作品となっています。
冒頭の走馬灯で、モンスターは少年が昔飼っていたあの謎の生物の成長した姿、というなんとなくの描写があるものの、
結局飼い主であった少年も、母親もその生物が、自分達が飼っていた生物であるとは最後まで認識しませんので、
結局、そのドラマをなんとなく観ている観客以外は誰も知らない、という冒頭のフリが、全くドラマには活かされない、という残念な流れとなってしまいます。
さらに、沢山いた乗客も、いつのまにかモンスターの犠牲になっているような説明を、台詞だけで片付けてしまい、
生き残っていたはずの乗客も、善人で主人公達と絆ができていたはずなのに、モンスターに攫われた親子を見捨てて帰る、という色んなドラマが望んでいない方向へと進んでしまいます。
という事で、色々と鑑賞前のイメージと異なる作品ではありますが。(グアイウ)という邦題と、暗い地下の世界で、子供が連れ去れてモンスターに戦いを挑む、
という明らかに名作韓国映画(グエムル)からの影響が強く見られる作品で、
まだまだ、これから発展していく、というシンガポール映画の今後の発展の方に期待したい作品となっていますので、
モンスター映画好きの方や、パニック映画好きの方等、ご鑑賞されてみてはいかがでしょうか。
作品情報
2023年製作 シンガポール製作 モンスターパニック
監督 J・D・チュア
出演 ジェセカ・リウ、アンディ・チェン、アシュリー・ソー、ピーター・ユー、シュリー・ソー、パトリック・ペイシュー・リー
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