カンフー映画としてのおすすめ度 ★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
カンフー映画の名匠ジョセフ・クオ監督、ウォン・チェンリー出演作品ながらも、継ぎはぎシーンと強引で極端な物語展開が厳しいコメディかシリアスかもはっきりしないカンフーアクション!!
作品紹介
日本劇場未公開
今回ご紹介する作品は、ジョセフ・クオが監督したカンフーアクション作品です。
それでは、まずはあらすじから、
武術界の悪の名門、滅族門の拳士たちが、六合門を抹殺しようとしていた。
多くの弟子たちが被害に合う中、なんとか難を逃れた数名の拳士たちは、隠れるように暮らしていたが、
十数年後、ついに逃げ延びていた拳士たちも倒され、最後の一人と、必殺の八仙拳を伝授された党首の息子のみとなってしまうのだった。
復讐を誓ったその若者、ホアジーは、カンフーの腕を磨き、宿敵の滅族門の四兄弟に戦いを挑む!?
ジョセフ・クオ監督のカンフーアクション作品です。
ややこしいですが、同年にラウ・カーユン、ヤム・サイクン、トニー・リャン出演で製作されたジャッキー・チェン武術指導作品(三十六迷形拳THE 36 CRAZY FIST)とは別作品です。
そちらは、ジャッキーが演技指導しているシーンを勝手に本編に使用されたり、という問題作となっていますが、
本作も、ある意味問題作で、当時のポスターや、本編中にも威龍(ロビン・ショウ、後のハリウッド作モータルコンバットの主演俳優)主演と表記されていますが、
ロビン・ショウは全く出演せず、代わりに本物の主演である張力(チャン・リー)は全く表記されていない、という奇妙な表記になってしまっています。
で、香港のデータベースではちゃんと張力が主演となっていて(でも、台湾のデータベースでは、威龍となっていますが、、)威龍は表記されていないので、正しい表記となっています。
では、張力が威龍という名前で活動していた時期があるのか?というと、本作製作の前年1978年出演の(威震天南)、
本作と同年1979年製作の(人鬼蛇狐大決鬥)、そして本作の翌年1980年製作の(黃飛鴻與鬼腳七)の当時のポスターを見てみると、
ちゃんと正しく張力と表記されていますので、時期的に別名を名乗っていた、というのも考えにくい状況となっています。
で、一方、威龍という名前で活動していたロビン・ショウはというと、本作製作の1979年当時は、まだ大学生で、芸能活動さえしていない時期で、
1987年のアレックス・マン主演の(1哥)という作品の脇役で俳優デビューしますので、その当時には俳優ロビン・ショウは存在していない事になります。
それらを踏まえて推測すると、ちょっと考えにくい、本来は絶対にありえない事ですが、、、
まさかの、、、、
主演俳優名の表記間違い
としか、考えられない驚愕の事実(恐らくですが、、)が浮かび上がってきます。
本当にそんな事があるのか?という感じですが、本作本編でも、ウォン・チェンリーが(蛇拳)のように色んな敵を倒していくシーンが複数ある作品ですが、
ウォン・チェンリーのキャラクター自体は登場しても、全て別人が演じる後ろ姿のアクションばかりで、(ジャッキーの醒拳や、ほとんどのセガール作品と同じ感じです)
ウォン・チェンリー本人が登場するのは、開始から1時間以上が経過してから、という酷い登場の仕方で、
さらに、マーク・ロンとジャック・ロンの対決物語が、本編にほとんど関係なく挿入される、という継ぎはぎ感で、
本編自体もブレにブレる物語展開、という作品総じて怪しさに満ちた作品となっています。
通常あり得ないような主演俳優の表記間違いですが、この継ぎはぎだらけのニコイチ映画のような構成の本編を観てしまうと、
ありえなくはない、というなんとも言えない、変な説得力が沸きあがってきます。
ただ、本編に流れる主演、威龍の表記は妙に新しいフォントなので、恐らく海外版のDVDが発売されるタイミングで、
オリジナルの映像に後から版権元が付け加えたと思われますので、公開当時のオリジナルの映像が威龍表記になっていたかどうかは分かりません。
ですので、もしかすると公開当時のオリジナルっぽいポスターが、実は意外に最近デザインされたもので、
DVD等のソフト化の際に間違って、その時には存在していたロビン・ショウとの表記の間違いが発生したのかもしれません。
あと、もう一つ、これも考えにくいですが、契約などの何らかの理由で、チャン・リーが張力名義で、出演できなくなり、
この1作のみ変名表記になっている、というハリウッドで言う所のアラン・スミシーのようなことも無くはないですが、
それだと、他人が1作のみ使用した芸名を、偶然その数年後に、新人のアクション俳優が使用する、という事になりますので、
どちらにしても、考えられないような出来事ですね、、、。
という事で、前置きが長くなりましたが、監督は勿論(少林寺へ道)や(ドラゴンズクロウ)(詳しくはこちら)、(少林寺炎上)(詳しくはこちら)等のカンフー映画の名匠、
ジョセフ・クオで、1979年というコメディカンフーの黄金期に本作を演出しています。
改めて主演は、残念な表記ながらも、本作のウォン・チェンリーも出演している(非情のハイキック)等に出演しているチャン・リーで、
甘いマスクで、コメディカンフーヒーローを演じています。
そして、実際の登場シーンは少ないながらも、ラスボス役を演じているのは、(醉拳)(蛇拳)等の連続出演で、
ラスボス役として大ブレイクしていた時期のウォン・チェンリーで、相変わらずの強敵ぶりを発揮しています。
で、主人公と共にラスボスに立ち向かう事になるヒロイン役で、本作と同じジョセフ・クオ監督の(ドランクマスター酒仙拳)(詳しくはこちら)と(雙馬連環)に出演している
ジェニー・チャンが登場し、華麗な技を披露しています。
で、敵組織四兄弟の末っ子役で、(ドラゴンズ・クロウ)や、ニコイチ映画(バイオニック忍者)(詳しくはこちら)等のチャン・ラウが登場し、
シリアスな敵役の中で唯一、ちょっとコメディっぽいノリのキャラクターを演じています。
で、敵役四兄弟の三男役で、(燃えよデブゴン7)(詳しくはこちら)や、(プロジェクトA2)等のラウ・クオシンが登場し、
奇抜な鬘着用で、目立つ悪党を演じています。
で、悪党四兄弟の次男役で、(燃えよドラゴン)や(クローン人間ブルースリー)(詳しくはこちら)等のヤン・スエが登場し、
後半のアクションを盛り上げていきます。
で、後半、主人公にカンフーを手ほどきする師匠役で、(燃えよデブゴン7)や(爆笑少林寺)(詳しくはこちら)等のファン・ムイサンが登場し、
後半のみですが、ユニークな訓練法でカンフーを指導していきます。
で、主人公が身を寄せるお寺の住職役で、(ドラゴンズクロウ)や(醉殺拳スーパーフィスト)等のパク・シャーリが登場し、
真面目な住職かと思いきや、少し笑いを添えた高僧を演じています。
で、本編に強引に挿入されるニコイチ編集のような登場の仕方で拳士を演じているのは、ジョセフ・クオ作品の常連俳優(逆襲!少林寺必殺拳)(詳しくはこちら)等のマーク・ロンと、
(少林寺への道)、(ドランクマスター酒仙拳)等のジャック・ロンで、本編とはほとんど絡みませんが、
同じ流派の別拳士の対決シーンが唐突に、ニコイチ映画のように挿入されていきます。
という、ジョセフ・クオらしいスタッフ・キャストが集結した本作の物語は、悪の名門滅族門に追われた正義の名門六合門のチャン・リーと叔父が逃げているシーンから始まります。
で、傷を負った叔父はチャン・リーを守りつつ、なんとかある寺に逃げ込みますが、叔父は絶命してしまい、そのままチャン・リーだけがその寺で住み続けるというシーンから本筋に入って行きます。
本作、この出だしの展開こそ他のカンフー作品でもありがちな流れなのですが、ここからがとにかくブレブレで、
数秒前に叔父の非業な絶命シーンを描いておきながら、次のシーンでは、突然のコメディ調になったかと思うと、
突然お寺の同年代の僧侶二人と主人公のズッコケカンフーシーンや、ズッコケ食材買い出しシーン、
そして、街の食堂で買い出し中に、看板娘のジェニー・チャンとお気楽カンフー勝負等の平和な日常が描かれ、急に目的を見失ったかのようなシーンが繰り返されます。
で、その合間に、マーク・ロンがジャック・ロンと戦うシーンが強引に挿入されていき、さらに、滅族門の長兄である後ろ姿限定のウォン・チェンリーが六合門の他の拳士と戦って、
一人ずつ抹殺しているトリック撮影シーンをも繰り返して挿入していく、という感じで、完全に物語の向かう先が分からなくなってしまっている展開が割と長時間続きます。
で、突然寺での修行を辞めて出ていく、と夜中に言い出したチャン・リーは、途中でジェニー・チャンにお別れの挨拶をして、その場を後にしますが、
その後何故か昼間に急に変わって、寺の荷物を運んでいるシーンになって、さっき見たばかりの厳しいので辞める、というくじけるシーンがもう一度繰り返され、
その後また急に夜になって師匠が呼び止めにくる、という感じで、とにかく全体的に継ぎはぎ感が目立ちます。
で、なんとなく実はその寺の師匠が六合門の生き残りで、ジェニー・チャンのお父さんであるファン・ムイサンも実は生き残りだった、
という奇跡の偶然&突然過ぎる展開で、さらに滅族門の次男であるヤン・スエと本物のウォン・チェンリーも合流して、急激に本筋に戻っていく事になります。
そこからは割と安定しますが、いよいよクライマックス、というラストバトルで、ジャック・ロンとマーク・ロンの方の本筋とは関係ない物語も一応クライマックスを迎え、
別々な場所で展開されている二つの物語のラストバトルが、数手ごとに交互に描かれる、というまさかの編集になっています。
クライマックスバトルを盛り上げるつもりが、逆に本編の合間に、本筋に関係ないバトルを見せられるので、その度にテンポが乱れる、という
カンフー映画のラストバトルとしては致命的な対決シーンとなっています。
おそらく、ウォン・チェンリーのスケジュールの都合で、あまり長時間拘束ができなかったための苦肉の作なのかも知れませんが、
それにしても全体的に継ぎはぎ感ばかりが目立つ、セルフニコイチ映画のような作品となってしまっているのが残念です。
ただ、
【カンフーシーンのオムニバス集】
と、気持ちを切り替えれば、キャストも豪華ですし、結構楽しめる内容とはなっていますので、カンフー映画好きの方や、香港映画好きの方等ご鑑賞されてみてはいかがでしょうか。
作品情報
1979年製作 香港製作 カンフーアクション
監督・製作・脚本 ジョセフ・クオ
出演 チャン・リー、ウォン・チェンリー、ジェニー・チャン、ファン・ムイサン、チャン・ラウ、ジャック・ロン、マーク・ロン、ヤン・スエ、ラウ・クオシン
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