修行度 🔥🔥🔥🔥🔥●●●●●
実在した英雄たち(広東十虎)の一人、鉄橋三の大活躍を描く爽快なカンフー映画かと思いきや、同じ門派内のドロドロ権力争いを何故か悪人の悪事をメインに描き、主人公の人間性はほとんど描かれないカンフーシーンのほとんどないカンフー映画。陰鬱な物語です。
作品紹介
インターネット配信専用
今回ご紹介するのは、実在した英雄、鉄橋三を描いた(一応)カンフー作品です。
それでは、まずはあらすじから、
清朝末期の広州、国と民を守るため武道達は武学会を結成した。
しかし、アヘンの密輸事件をきっかけに身内内に密輸に手を染める者の存在が発覚し、会長は信頼する鉄橋三に調査を命じるが、
裏切り者の謀略によって逆に鉄橋三に密輸の嫌疑がかけられてしまう。
嫌疑を晴らすため、奔走する鉄橋三だったが、裏切り者の思惑によって、その後も様々な寝れ衣を着せられてしまうのだった?
(広東十虎)の一人で、実在した英雄、鉄橋三の活躍を描いた(一応)カンフー映画です。
(広東十虎)とは、河南嵩山少林寺を発祥とした高名な武術家達の総称で、
(ワンス・アポン・ア・タイム・インチャイナ)シリーズや、(ドランクモンキー酔拳)などの主人公として知られる黄飛鴻、
その父親で、(ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ外伝アイアンモンキー)ではドニー・イェンが演じていた黄麒英、
ユエン・ウーピン監督の(ドランクモンキー酔拳)の師匠役として登場し、同監督の(酔拳レジェンド・オブ・カンフー)では主役として描かれた蘇乞兒、
(ワンス・アポン・ア・タイム英雄少林拳)でチェン・カンタイが演じていた陸阿采(黄澄可)、
そして本作主人公のアイアンブリッジこと鉄橋三(梁坤)は、これまでもインターネットで配信されているショウ・ブラザース製作、
ティ・ロン主演の(断罪のカンフーマスター)や、
未公開ですがリョン・カーヤン主演の(銅身鐵線拳)等、で描かれていますが、
残念ながら日本では黄飛鴻や黄麒英、蘇乞兒等に比べていまいち紹介される機会に恵まれませんでした。
その他のメンバーでは、鶴拳の達人王隱林、七星拳の達人黎仁超、鉄指拳の達人アイアンフィンガーこと鐵指陳(陳長泰)、
足技で有名な3本脚のタムこと谭济筠、南少林寺出身で独自のブラックタイガースタイルを編み出した蘇黒虎、の十人を総称して(広東十虎)と呼ばれていました。
そんな英雄たちの物語ですが、それぞれの活躍は色んな作品で語られていますが、一堂に会するような作品は、
残念ながらこちらも鉄橋三の物語同様に、香港、中国では製作されているものの、日本ではこれまで公開されることが少ない、という状況でした。
そんな日本ではあまり紹介される機会に恵まれなかった鉄橋三の物語(断罪のクンフーマスターも未VHS化、未DVD化で最近になって配信されました)が、
いよいよ日本でも本格的に紹介されるという事で、そういう意味でも期待のかかる新作カンフー映画となっています。
これはさぞかし、散々語られてきた他の(広東十虎)である黄飛鴻や蘇乞兒の物語のような英雄快男児物語を新たに堪能できる作品が登場するのか!?
と期待(と不安)が織り交じった感情で早速配信されている作品を鑑賞してみました。
結果は、、、、、
まさかのカンフーシーンのほとんどないカンフーヒーロー作品!!
最近の作品ではベニー・チャン主演の(南拳宗師ライズ・オブ・フィスト)(詳しくはこちら)でも似たようなカンフーを描かないドラマ重視のカンフー映画がありましたが、
ベニー・チャン作品はカンフーシーンがなくても、ズッコケカンフーでも、ベニー・チャン自体のなんとなく親しみの沸く雰囲気から、
ドラマ部分がしっかりしていれば、飽きてしまったり鑑賞が苦痛になる、という事はなく、それなりに楽しめてしまえるのですが、
本作に関しては、とにかく会長として実権を握るための身内の裏切りドロドロ展開が半端なく、しかもそれを主人公目線で描くのではなく、
悪事を企てる側目線(嫌な奴が嫌な事を実行しているシーンの連続)でドラマが描かれていくので、
主人公の英雄ぶりや人となり等を描く余地がほとんどなく、英雄であるはずの主人公がまるで魅力的に描かれていません。
結果的には、悪人が善人を陥れていく物語を延々と見せられる、という本末転倒な非英雄物語となっています。
もう、言葉悪いですが、はっきり言って胸糞映画です。
アヘンという、いつものありがちストーリーを発端にしてはいますが、実際は、同門内での時期会長をめぐるドロドロ覇権争いを、
ねちっこく描いた爽快感のかけらもない陰鬱なストーリーとなっています。
ですので、厳密にいうとカンフー映画ではありません。
カンフーは味付け程度です。
そういう構成の作品ですので、とにかく主人公は一本調子で、ずっと動かずに、前を見て英雄っぽい事を言っているだけ、という印象のキャラクターとなっています。
とにかく、受け身のキャラクターなので、身内の裏切り者の陰謀を暴いていく、という痛快な展開ではなく、
悪人によって練られた陰謀によって濡れ衣を何度も何度も着せられ続けて、結果的に所属していた武学会をあとにすることになります。
その濡れ衣の回数、短い期間にまさかの4回!!
していないアヘンの密輸をしたと言われ投獄&拷問(1)、師匠殺しの犯人に仕立てられ同門全員から人殺し扱いされ逃亡者となり(2)、
嫌疑が晴れた後は、同門の弟子を襲って内乱を興したという身に覚えのない罪を着せられ(3)、正々堂々と同門の師範と勝負して勝利したと思ったら、その後その師範が他の人物によって殺されて、
試合によって鉄橋三がその師範を殺したように見せかけられる(4)、
という物語のほとんどが英雄鉄橋三が、陰謀によって濡れ衣を着せられているシーンの連続で構成されています。
そのたびに投獄されたり、拷問を受けたり、仲間から敵視されていきます。
師匠殺しの濡れ衣を着せられた時には、ラブラブだった恋人から『何故、殺したの!!!』
と有無を言わさず怒鳴りつけられていました。
さっきまでラブラブだったのに、有無を言わさず一挙に全員敵になる、このパターンが多く、その度に観ている側の不快指数が高まります。
何故、誰も信じない?
というか、何故、信じようとする人を描かない?という感じですが、そのままですと物語が進みませんので、なんとなくはっきりとした理由もなく一応後半になって味方が増えてはいきます。
そんな調子で物語は、悪人が悪事を働き、善人はその悪事にまんまとハマっていく過程が延々と語られていきます。
合間にカンフーアクションなどが入れば、まだ息抜きもできる(本来カンフー映画のメインのはずですが)のですが、
そんな気の利いたシーンはほとんどありませんので、陰鬱ストーリーはずっと続きます。
で、流石にそのままでは物語が完結しませんので、ラストは悪事は白日の下にさらされますが、
そこに至るまでのあまりに長い陰鬱ストーリーを挽回できるほどの爽快感はありません。
一応ちょこっと存在するラストバトルも、主人公の体育の成績7ぐらいのアクションで、
いつものカット割りとスローと遠くからのスタントマン撮影がメインですので、見所には全くなっていません。
あと、ポスターでは主人公の虎拳のような構えが凛々しいですが、実際にはそんなシーンは存在しませんし、アクションの攻撃のほとんどが直線的なグーパンチです。
もう少し、力強さや、しなやかさがあれば、それなりにキマって見えるのかもしれませんが、そういう面を掘り下げる作品ではないようですので、
カンフーシーンは至ってシンプルな、始まったら終わる、といった感じのアクションとなっています。
さらにヒロインも剣を持って凛々しく構えていますが、剣を構えるどころか、そもそも戦いません。
という感じで、色んな意味で宣伝ポスターのイメージと実際の内容の異なる作品となっています。
という事で、短い期間に濡れ衣を4回も着せられる陰鬱な実在した英雄物語、という世にも珍しい作品となっていますので、
ご興味のある方は、修行覚悟でご鑑賞ください。
でも、恐らく実際の鉄橋三の物語は、アへンに関するある程度のエピソードは(断罪のカンフーマスター)でも語られていましたので、
実際の出来事に着想を得ているかもしれませんが、身内のドロドロ展開は、あまりに身内すぎる物語なので、ほとんど創作だと思われます。
なんとか、しっかりした鉄橋三の新作物語が観たいですね、、、。
因みに主演の孫浩然は本来歌手のようで、俳優としては(広東十虎)の一人黄麒英を描いた(擎天無影腳黃麒英)という作品でも主人公を演じているという事で、
ちょっとした(広東十虎)専門キャストとなっているようですね、、、。
作品情報
2018年製作 中国製作 カンフーアクション
監督 ティエン・シャオボー
出演 スン・ハオラン、ワン・シーユー、シェン・バオピン
その他の実在の英雄を題材にしたカンフー作品
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