おすすめ度 ★★★★★☆☆☆☆☆
(男たちの挽歌)でブレイクする以前のジョン・ウーが、ディーン・セキ主演で監督したチャップリンの(キッド)を下敷きにした笑えるシーンも多いコメディアクション!!
作品紹介
日本劇場未公開作品
今回ご紹介する作品は、ジョン・ウーが監督した人情コメディアクション作品です。
それでは、まずはあらすじから、
戦後間もない不況の時代。ある放浪者が、みなし子の少年と出会い、親子のような信頼関係で結ばれて行くが、
ある日、少年が、その街を牛耳る悪党組織に追われる身となってしまい、ついに捕まってしまう。
朝目が覚めて、少年がいない事に築いた放浪者は、少年を救うため、悪党組織に乗り込んで行くのだった!?
監督は、(男たちの挽歌)や(アーメン・オーメン・カンフーメン)(詳しくはこちら)等のジョン・ウーで、
ブレイク以前の監督作品ですが、意外なコメディセンスの香るドタバタ劇を演出しています。
主演は、(クレイジークロック)(詳しくはこちら)や(レイド)(詳しくはこちら)等のディーン・セキで、
お得意のドタバタアクションの集大成とも言えるキャラクターを好演しています。
で、やたらと衝突し、最終的に相棒となる男役で、(チャイニーズゴーストストーリー)や(バーニングセンセーション)(詳しくはこちら)等の
ウー・マが登場し、ドタバタを繰り広げていきます。
で、街を牛耳る悪党ボス役で、本作の製作も務めている(悪漢探偵)や(マネーチェイス)(詳しくはこちら)等の
カール・マッカが登場し、珍しく完全な悪役として主人公達と戦います。
で、ディーン・セキの親子関係の様になる少年役を、(我願意)や(大搶特腸)等の天才子役ウォン・ワイが演じ、愛嬌のある演技でディーン・セキと名コンビぶりを発揮して行きます。
で、カール・マッカの奥さん役で、(燃えよデブゴン 正義への招待拳)(詳しくはこちら)や(養鬼)(詳しくはこちら)等の、
アニー・ラウが登場し、ズッコケ要素を掘り下げていきます。
で、事件を追う警察官役で、チャウ・シンチー監督の(人魚姫)や(打出頭)等のリー・チュンキョンが登場し、ドタバタに参加して行きます。
で、外道な父親に酷い目に合わされる少女役で、(スペクターX)や(專撬牆腳)等のウォン・サウマンが登場し、最終的にヒロインのように活躍していきます。
そんなスタッフ・キャストが製作した本作の物語は、戦時中の貧困に喘ぐ中国のある街で、貧しいながらも、
ずる賢く生きるディーン・セキが、今日も一人一回の炊き出しの食事を、人相を変えて何度も貰ったり、
子供が食べているパンをかじったり、等、繰り返しながら、食堂で同じくずる賢く、たくましく活きる孤児であるウォン・ワイと出会うシーンから始まります。
で、少しずつ親子のような、兄弟のような、親友のような信頼関係が生まれていきますが、ある時、その街の慈善家ながらも、
裏では人身売買や麻薬の密売等、犯罪なら何でもする勢いの顔を持つ悪党カール・マッカの部下が、ウォン・ワイを、
本人が知らないうちに麻薬の運び屋として雇う事で、組織を捜査中の警察からも、組織からも追われる身となってしまいます。
で、なんだかんだと騒動を繰り広げた挙句、結局ディーンが寝ている間に、ウォン・ワイが悪党組織に攫われてしまいます。
で、既に信頼関係で結ばれているディーンは、ウォン・ワイを救出すべく、なんとなく知り合いになった飲んべぇのウー・マと共に悪党のアジトに乗り込む、、、、というのがシンプルな大体の大筋となっています。
本作、だれが見ても分かるように(キッド)を始めとするチャップリン映画にオマージュを捧げたパロディ満載、、、、と言えば聞こえは良いですが、
当時の香港映画の状況を考えると、オマージュという真面目な要素よりも、誰もが知る人気のキャラクター人気にそのままあやかったタイプの作品で、
チャップリンの風貌や動きをそのまま真似てしまう、という実に商業主義の香港映画らしい作品となっています。
しかも、本作、その後(悪漢探偵)シリーズや(男たちの挽歌)シリーズ、(チャイニーズゴーストストーリー)等を生み出すシネマシティ社の第1回製作作品、
という記念すべき作品ながらも、他の人が一から創り出した作品を真似る、という香港映画界でしか、企画自体が通らなそうな作品となっています。
オマージュと言えば、普通は物語の要素だけを真似るとか、全く別の世界観に同じようなお笑いシーンを入れ込むという感じでサラっと挿入するぐらいだと思われますが、
香港映画はそんなパッと見て分からないオマージュよりも、
パクっている!!
と思われても良いレベルまで、徹底してやり抜く、という潔さが全開に出た作品となっています。
ただ、オリジナルが1921年製作の60分ほどの作品ですので、勿論そのままでは1980年代の作品に作り直す事はできませんので、
そこは香港映画独自のドタバタお笑い要素とラブコメ要素、悪漢の悪党ぶり、相棒の意外な大活躍等の要素を膨らませて、
ほぼ全編ドタバタで埋め尽くして101分の作品に仕上げる、というシネマシティ社の意気込みを感じる作りとなっています。
恐らく、当時の香港映画界の常識として、劇中で流れる他の作品のBGM等も含めて、良いと感じる者は他人が創り出したものでも積極的に自作に取り入れる、
という風潮があったようですので、そういう流れから【香港映画には台本が無い】という他の国の映画界では考えられないような常識が出来上がっていったようです。
と言っても、実際は勿論台本はあったようですので、台本があっても、撮影中にその場で内容がコロコロ変わるので、
結果的に撮影開始段階の脚本と撮影終了時の実際に出来上がった内容に、結構な相違がある事から台本はあっても無いような物、という感じになっていったようですが、、。
本作も、正直、ストーリー自体はほとんど展開が無く、最終的には悪党に攫われたウォン・ワイを助けに向かう展開にはなりますが、
これが、ウォン・ワイが攫われたタイミングではなく、別口で攫われていた好きな女性ウォン・サウマンが悪党に攫われたタイミングで救出に向かいますので、
疑似親子ドラマとして一番盛り上がるはずの救出シーンが、
実際には子供を助けるためでは無く、好きな女子を助けるため
に救出に向かったら、偶然一緒に囚われていた、という、ちょっと『あれっ?』と感じるようなご都合主義ぶりも、
その場の流れとお笑いシーンのパワフルさで、押し切ってしまえる香港映画ならではの展開と言えるのではないでしょうか。
ただ、チャップリン的な要素はさておき、ドタバタコメディとしては、流石にコメディ映画のプロが結集して製作している作品ですので、
『プッ!』と笑ってしまうシーンも多く、さらに親子ドラマにジーンとくるシーンも結構あったりしますので、
コメディ映画としては、しっかりと楽しめる作品となっています。
という感じで、戦時中の貧困に喘ぐ下町、というリアルな舞台の作品ですが、どこかファンタジックな童話のような世界観を持つ、
お笑いシーン満載の作品となっていますので、コメディ映画好きの方や、香港映画好きの方等、ご鑑賞されてみてはいかがでしょうか。
作品情報
1980年製作 香港製作 コメディアクション
監督・脚本 ジョン・ウー 製作 カール・マッカ
出演 ディーン・セキ、ウー・マ、カール・マッカ、アニー・ラウ、リー・ホイサン、ウォン・ワイ、リー・チュンキョン、ウォン・サウマン、リー・ホイサン、ウォンヤッフェイ
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