おすすめ度 ★★★★★★★☆☆☆
香港ニューウェーブ派のシュウ・ケイ監督による香港版(グロリア)とも言える名女優ディニー・イップ主演の秀作サスペンスアクション!!
作品紹介
1988年10月9日公開
今回ご紹介する作品は、香港ニューウェーブ派のシュウ・ケイ監督がディニー・イップ、ジャッキー・チュンを招いて製作したサスペンスアクション作品です。
それでは、まずはあらすじから、
警察官の夫と平和に暮らす平凡な主婦ディニーは、今日も近隣の主婦と取り留めのない会話等をしてくつろいでいたが、
そこへ突然現れた黒社会の男たちによって、日常は壊される。
男たちはディニーと一緒にいる親子を誘拐する目的でやってきたのだった。
咄嗟の判断で、なんとか撃退するディニーだったが、その襲撃で狙われた母親は命を落とし、そして、残された子供に関して衝撃的な事実が判明するのだった!?
1970年代後半から登場したツイ・ハークや、パトリック・タム、アン・ホイ、イム・ホー等の海外で映画製作学び、
その後香港で映画製作者として活躍した世代を中心とした、いわゆる香港ニューウェーブ派と言われた新世代(当時)監督の一人、シュウ・ケイ監督によるサスペンスアクション作品です。
シュウ・ケイ監督は、元D&Bフィルムズの宣伝プロデューサーで、映画雑誌(電影)の編集長も務めた経験もあり、
その多才ぶりは、その後の監督作品(喝采の扉 虎度門)や、(BE MY BOY)等のドラマ系作品でも確認できますが、
近年はほとんど監督業は引退している状態になっているのが残念です。
本作は、低予算系の作品ながらも、それまでの経歴による顔の広い人脈を活かしたようなキャスティングとなっています。
まずは、主人公を(燃えよデブゴン4ピックポケット)(詳しくはこちら)や(サイクロンZ)、
そして2011年製作のアン・ホイ監督作(桃さんのしあわせ)では香港電影金像奨で主演女優賞を受賞する程、長年に渡って歌手としても俳優としても活躍しているディニー・イップが演じ、
事件に巻き込まれ戸惑いながらも自身を奮い立たせて悪漢に立ち向かう、強い女性主人公を好演しています。
で、その主人公を襲う側の犯人グループの下っ端の若者役を、当時まだ売り出し中だった香港四天王の一人ジャッキー・チュンが演じ、
危なっかしくて、ほっとけない、人の良さそうな得意のキャラクターを好演して、作品を和らげつつも、サスペンスを盛り上げる重要な役割を果たしています。
その後1988年に、同じような暗黒街のチンピラ役を演じたウォン・カーワイ監督の(いますぐ抱きしめたい)で香港電影金像奨の助演男優賞を受賞する事になりますので、
ジャッキー・チュンにとっても本作での好演は、非常に重要な作品となったのではないでしょうか。
因みに、本作は撮影もクリストファー・ドイル、音楽もダニー・チャンと(今すぐ抱きしめたい)と同スタッフ・キャストが参加していますので、
映像派同士で結構なつながりがあったのかもしれません。
で、中盤以降ディニー・イップを完全にバックアップ体制で援助する親友役を、(傾城の恋)や(大丈夫日記)、(密会)、(地下情)等のチョウ・ユンファ作品や、
近年でも(モンスターハント)(詳しくはこちら)や(三城記)等、長年に渡って活躍しているエレイン・ジンが大人の魅力たっぷりに演じています。
さらに主人公を追い詰める側のリーダー格を(新ミスターブー 香港チョココップ)や(ポリスストーリー2)等大作系から低予算作品まで、
名バイプレーヤーとして活躍し、近年もアーロン・クォックとトニー・レオン共演の話題作(风再起时)に本作出演のエレイン・ジンと共に出演しているデニス・チャンが演じています。
悪役で悪事を働く役柄なのに、どこか少し抜けていて、本質的には憎めないキャラクターながらも、ボスの命令には絶対的に服従しているので、
結果的に主人公を追い詰める、という微妙な立場のキャラクターを好演しています。
で、刑事でありながらも実は、、、、というキャラクターに(キョンシーチャイルド精霊夢童子)(詳しくはこちら)等のコー・イーチェン、
後半からの活躍ながらも、主人公ディニー・イップをエレイン・ジンと共に助ける元カレ役を、まさかの大監督、ホウ・シャオシェンが演じ、
頼りがいがありそうで、土壇場でちょっとつまずく、という渋さと優しさ、弱さを兼ね備える、という難しいキャラクターを好演してします。
さらに、ゲスト出演ではありますが、ディニー・イップの夫役にデビッド・チャン、
マカオ行の定期船のチケット売り場の販売員にユン・ピョウ主演の(オン・ザ・ラン)や、サモ・ハンとケニー・ビー、ジョイ・ウォン共演の(人質に気をつけろ)等の監督アルフレッド・チェンと、
(欲望の街)シリーズのプロデューサーとして知られるマンフレッド・ウォン等、
端役も含めて、豪華なキャストが集結して製作した作品となっています。
そんな豪華キャストが実現した物語は、主人公ディニー・イップ演じるガール(ディニー)の普通の日常から始まります。
で、何気ない夫の会話、お手伝いさんとの会話等が続いた後に、警察官である夫がいきなり飛び降り自殺をとげ、
夫が持っていたとされるある事実の証拠となるノートを探す目的で、裏社会のチンピラグループ三人が突然ディニー・イップの住むマンションにやってくる、
という衝撃的な展開でドラマの幕開けとなります。
で、いきなり理由も分からず命を狙われる事になり、近所の台湾人の親子と一緒にいる所を襲われる事になります。
で、なんとか一旦撃退はできるものの、その時の騒動で、近所の台湾人の母親(台湾女というだけの設定なので役名も台湾女です)が命を落としてしまい、
とりあえずその子供を連れて、警察と一緒にその台湾女の自宅を訪ねてみると、、、
夫と台湾女、さらにその子供を交えたどう見ても幸せな家族写真にしか見えないような写真が多数部屋に飾られている、、、、
というショッキングな状況で、夫の死を告げられる、という今朝まで普通に幸せに暮らしていた主婦が、
急転直下のどん底に落とされるという絶望的な状態に陥ってしまいます。
で、とりあえず、その微妙すぎる関係の台湾女の子供(夫の不倫相手の子供)を世話することになり、突然の関係に衝突しあいながらも少しづつ関係を築いていきます。
ただ、黒社会チームもボスにノートのゲットをせかされているので、さらに追い込みをかけるために、隙をついてこの子供を連れ去ってしまいます。
で、既に信頼関係が芽生えていたディニーは、母性を発揮し、犯人グループに戦いを挑む、というのが本筋となっています。
明らかに映像や設定、ストーリー展開等、ジョン・カサべテス監督、ジーナ・ローランズ主演の(グロリア)の影響が大きい作品ですが、
そのハリウッド有名作の大筋を、香港の住宅街から街中、そして後半の舞台となるマカオまで、ロケーションをフル活用して子供と二人での逃避行を描く、
という点では非常に香港映画らしい、香港映画でしか味わえない魅力の詰まった作品となっています。
冒頭の襲撃事件や、犯人グループとの子供引き渡しを懸けたビリヤード対決(勝てば子供を返してもらえる)という緊張状態の中でのちょっと緩い対決や、
なんだかんだと行動を共にする事になるジャッキー・チュンの好演、逃避行の果てに迎えるボスとの一騎打ち、
と映画を面白くする要素を熟知しているシュウ・ケイ監督ならでの、見せ場盛沢山のレディースサスペンスアクションとなっています。
中盤以降、エレイン・ジンと合流してからは、幼い子供との孤立無援バトル要素が薄くなてしまうのが少々残念ではありますが、
それでも、全編通してスリリングな展開が楽しめる作品となっていますので、機会がありましたら、是非ご鑑賞下さい。
それにしても、シュウ・ケイ監督の新作がもっと観たかったですね。勿体ないです。
因みに、当然ですが、今現在でもバリバリ活躍中の(トランスポーター)や(西遊記はじまりはじまり)等の女優スー・チー(舒琪)と
本作の監督シュウ・ケイは、(舒琪)は、同姓同名の別人です。
カタカナ表記は何故か全く違いますね、、、。
作品情報
1986年製作 香港製作 サスペンスアクション
監督・脚本 シュウ・ケイ 製作 ジョン・シャム 撮影 クリストファー・ドイル 美術 トニー・オウ
出演 ディニー・イップ、ジャッキー・チュン、ホウ・シャオシェン、デビッド・チャン、エレイン・ジン、デニス・チャン、アルフレッド・チョン、サンディ・ラム、コー・イーチェン、マンフレッド・ウォン
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