お薦め度 ★★★★★★★☆☆☆
シンプルなストーリーで少ない出演陣ながら、しっかり描かれたドラマと緊迫感のある演出で、終始目が離せない展開が秀逸なパニックサスペンス!!
作品紹介
日本劇場未公開
今回ご紹介するのは、原因不明で停車できなくなった深夜列車から、乗客たちが必至の脱出を試みるパニックアクション作品です。
それでは、まずはあらすじから、
医師でありシングルファーザーでもあるルイス(ダグレイ・スコット)は、深夜に息子と列車で自宅に向かっていた。
ふと停車中に線路わきに倒れている人影を見かけ、不審に思ったルイスは運転手にに接触を試みるが、
列車は停車予定の駅を通過し、さらに速度を上げていた。
乗客は6人。
それぞれの思惑を乗せて、列車はさらに加速していくのだった!?
監督のオミッド・ノーシンがわずか500ポンドで製作した予告編動画をネットで公開して投資を募り、集まった250万ドルで製作された作品です。
物語は、停車できない暴走列車の乗客が、悪戦苦闘してなんとか列車を停車させようと奮闘する、
というトレインパニックものの王道ストーリーで、非常にシンプルな構成となっています。
しかし、低予算ではありますが、少ない出演者のキャラクターとドラマがしっかりと描かれており、新人とは思えない内容となっています。
登場キャラクターは6人。
主人公のルイスは医師でシングルファーザー、息子と帰宅途中で病院から連絡が入り、急患が搬送されてきたので、病院に急ぎ行かなければいけない状況。
その息子は甘えん坊でいつも恐竜の玩具で遊んでいる。
ちょっと無鉄砲そうな若者ヤンは、やたらと行儀が悪く、周りの迷惑とかはあまり気にしないタイプ。
銀行家のピーターは堅物で、若者ヤンの喫煙を率先して注意しに行くが、あまり協調性がなく、どちらかと言うと自分さえ良ければよい、と考えるタイプ。
ヒロインサラは、仕事帰りで疲労しているが、他人の子供の面倒も見る母性に溢れたタイプ。
そして高齢のエレインは、一人読書に没頭し、静かな状況を好み、携帯の着信音にも過剰に反応するタイプ。
という感じでそれそれのキャラクターがしかりと描かれ、いよいよ、列車の異変が発覚するあたりから、いよいよ各キャラクターが作用し合います。
ここからが、大人しいながらも、非常に興味が持続する展開となっていて、お互いに協力し合い、時にはいがみ合いながら、なんとか列車を止めようと奮闘していきます。
状況としてはいわゆるトレインジャックをされている状態で、ジャックした犯人が暴走しながら運転しているのですが、
この犯人の姿は画面には映らず、目的もはっきりとしません。
一応、主人公たちが動機を予想はしますが、はっきりと語られません。
この展開はスピルバーグ監督の(激突!)などと同じ展開で、その存在を明かさない事で、犯人の不気味さと、
その理不尽な状況に置かれた乗客たちが、生還するために命がけで奮闘するサスペンスを非常に盛り上げています。
そんな状況で、ヤンとピーターは度々衝突します。
事件が起こる前からいがみ合っていたので、その衝突がどんどんとエスカレートするのですが、
後半になってヤンは実は奇術師として成功する事を夢見ており、親にはまだ成功していない事を打ち明けられないまま、
今親に会うために列車に乗っている事がわかります。
そんな自分の成功を日々願っている親を傷つけてしまう事を恐れている、実は心優しい青年だという事が分かります。
ピーターも自分の子供と上手く行かずに、そんな不器用な自分に嫌気がさしているような一面を見せます。
そんな二人のドラマはラストになって大きく展開する事になります。
後半は暴走列車ものの傑作(暴走機関車)などの影響もみられる展開で、アクション要素も盛り上がり、非常にサスペンスフルな展開となっています。
個人的に一番気に入ったのは、いよいよ一致団結して、事にあたろうとする前に、みんなで一旦ゆっくりとお酒を一杯ひっかけるシーンです。
このままいくと列車が激突して死ぬ可能性が高い状況で、ここぞという時に、まずはお酒を飲む、というまるでジョニー・トー監督作品を観ているような、
嵐の前の静けさの中で、これから命がけで一致団結して事にあたる仲間との、信頼関係を確かめ合うような、
そんな静かにテンションを上がっていくような名シーンだと思います。
で、ラストは多少強引ではありますが、怒涛の展開で、助かる者、犠牲となる者出てきますが、
後味は良い雰囲気で終わっていきます。
というように、本作は、少ない予算ながらも、しっかりとキャラクターと物語展開を描くことで、
ちゃんと楽しめる秀作が製作できるという事を証明するような内容となっていますので、
アクション好きの方や、サスペンス好きの方などご鑑賞されてみてはいかがでしょうか。
あと、製作に日本人製作者の名前が入っていますので、こういうところで活躍している日本人を目にするのは、同じ日本人として誇らしいですね。
作品情報
2013年製作 イギリス製作 パニックアクション
監督 オミッド・ノーシン 制作 ザック・ウィンフィールド、吉崎道代、吉崎アド
出演 ダグレイ・スコット、カーラ・トイントン、イド・ゴールドバーグ、リンゼイ・ダンカン、デヴィッド・スコフィールド
↓ランキングに参加しています。宜しければ下記をクリックお願い致します↓