おすすめ度 ★★★★☆☆☆☆☆☆
偶然発見した並行世界への入り口を巡って、欲望が暴走し始める若者たちを描いた(インビジブル)や(フラットライナーズ)のような仲間同士の争いが描かれるSFスリラー!!
作品紹介
日本劇場未公開
今回ご紹介するのは、並行世界への入り口を巡って仲間内で争いが生じるSFサスペンス作品です。
それでは、まずはあらすじから、
シェアハウスで暮らすノエル、ジョシュ、デヴィン、リーナの4人は新しい駐車アプリの開発でなんとか成功を掴もうとしていた。
そんなある日、ふとした事から、シェアハウスの屋根裏部屋に大きな鏡を発見する。
その鏡に触れると、体が吸い込まれていき、行き着く先には、現世界とは少しだけ違う別の並行世界が広がっていたのだった!?
(パラドクス)や(ダークレイン)等のちょっと捻りの効いたスリラー作品でお馴染みのイサーク・エスバン監督によるSFサスペンス作品です。
今回はタイトルにもそのまま表れているように、パラレルワールドを扱った物語となっています。
あるシェアハウスで暮らす4人の若者たち、駐車アプリ等を開発して、一攫千金を夢みるも、突然納期を早められ、
どう考えても間に合わずに、このままいけば一同解散に追い込まれる、という切羽詰まった状況で、偶然シェアハウスの壁裏に秘密の部屋を発見し、
その部屋に隠されていた大きな鏡に触れると、そのまま吸い込まれて、今の世界とは少しだけ違う並行世界へと繋がっていた、
というB級SF心を刺激するような設定から物語は始まります。
で、色々と調べて見ると、並行世界にも、自分達とそっくりな自分自身が存在し、ある程度はそっくりそのままながらも、
細かく確認すると何か違う点がある、という世界観となっています。
で、さらに調べると、並行世界と現実の世界では時間の流れ方が異なり、現世界の1分は並行世界の3時間に相当する、
という事で、時間の差があり、行くたびに別の並行世界に辿り着いても、帰ってきたときには同じ現世界に帰ってこれますので、
それを利用して、まずは並行世界に持って行った作業を向こうで完了させて、持って帰ってくる事で、アプリの納期にも間に合いますし、
色んな儲け話にも活用することができたりします。
で、そこから4人は、目に見えてやりたい放題の上に、暴走行為をエスカレートさせていきます。
本作はここからが特徴的になっていきます。
画家として有名になりたい女子は、並行世界で存在して現世界では存在しないアーティストの作品をパクッてみたり、
野心家のアプリ開発者は、色んな並行世界のまだ見ぬ新開発製品を持ってきて、自身の現世界で発表して世界一の実業家を目指してみたり、
かつて、犯罪を犯して自殺してしまった父親が、生きているかもしれない並行世界を探しまわるマジメ青年がいたり、
という感じで、各々が欲望を加速させていきます。
※↓ここからは、後半の展開に触れていますので、真っ新な状態で鑑賞したい方は、ご注意ください↓※
で、ある時、並行世界で事件が起こり、メンバーの一人が、悲惨な目に合います。
で、その事実を隠蔽するためには、並行世界に存在する、(もう一人の)その人物を現世界に誘拐して連れてくれば良い、
という間違った判断の下、その人物が寝ている隙に、現世界につれてきて、何食わぬ顔で接するという、別のサスペンス展開へと入っていきます。
連れてこられた人物からすると、今まで通り生活はしているけれども、なんとなく今までの記憶と少し違う部分が多々ある世界です。
そこに、さらに野心家の暴走も加わって、他の人物もいつのまにか別人とすり替わる、という(SFボディスナッチャー)や(遊星からの物体X)や、
(US)等のような成り代わりサスペンス的な要素も加わってくる展開となっていきます。
非常に面白い設定ではあるのですが、
盗作による偽りの名声を得てしまった女子が本当に大切な事に気付く成長物語と、
愛する父親が自殺の直前に、心無い言葉をかけてしまった青年の後悔と懺悔、そしてそこからなんとか立ち直る物語、
別の次元に誘拐されてしまった事で、今までの生活とは違った違和感を感じ続けて追い込まれる青年の物語、
そして、野心家の青年による暴走で、他の人物も誘拐して連れてきてしまったので、誰が基の人物なのか、分からなくなるサスペンス物語、
という感じで、面白くなりそうな要素が、かなりの渋滞を起こしてしまっていて、結果的にそれぞれの要素が薄まってしまっている、
という非常に勿体ない作品となっています。
中盤以降は、野心家の暴走は度を越して、やりたい放題の繰り返しで、世界の覇者ぐらいのイメージになってしまって、
リアル感も全く無くなってしまうので、そんな大魔王の世界支配みたいな部分を掘り下げるよりも、父親とのエピソード(結局父親と逢えても、その後は放置)や、
暴走して得た利益のしっぺ返し(お金を稼ぎまくるという描写はあるものの、その後、金持ちになり過ぎて飽きてしまったので、ゴッドファーザーの物まねをしながら札束を燃やす、という寒いシーン有り)等を掘り下げるか、
そもそも、その鏡の存在理由や、どういう経緯でそんな事ができるようになっているのか?
等の根本的な基本設定の説明は、放置されたままですので、そういう部分がもっと描かれていれば、もっと傑作になったと思われるのですが、どうでしょうか。
恐らく、(インビジブル)で描かれた透明人間の世界や(フラットライナーズ)で描かれた死後の世界の多次元版を意図しているような感じがありますので、
メンバーの暴走と仲間内での戦いというのは必須だったのかもしれませんが、
それにしても、暴走方面ばかりが掘り下げられてしまうのは、設定が面白いだけに、やはりちょっと残念な作品となっています。
という事で、設定が変わっていて、勢いもあって、楽しめる娯楽作品になっていますので、SF好きの方や、ブラムハウス社製作作品等が、お好きな方等、ご鑑賞されてみてはいかがでしょうか。
作品情報
2018年製作 カナダ製作 SFサスペンス
監督 イサーク・エスバン
出演 アムル・アミーン、マルティン・ヴァルストロム
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