お薦め度 ★★★★★★★★☆☆
キョンシーブームを巻き起こしたサモ・ハンキンポープロデュースによる大ヒットホラーコメディシリーズの記念すべき第一弾!!2作目以降のファミリー路線に向かう前の怪奇ホラー色の強さと笑いのバランスが絶妙の傑作!!
作品紹介
1986年4月26日公開
今回ご紹介するのは、キョンシーブームを作り出した伝説のホラーコメディ作品です。
それでは、まるはあらすじから、
道士を生業としているガウ(ラム・チェンイン)の元に大富豪のヤン(ウォン・ハー)から墓の改装を依頼される。
しかし、既に行っていた埋葬方法に誤りがあったために、祖先の恨みは増幅され、成仏できない状態となっていた。
埋葬し直すために棺を一旦持ち帰るが、すでにキョンシーとなっていた先代は、ヤンを襲い、ヤンもキョンシーと化すのだった!?
その後多くのシリーズ作品や亜流作品などを生みだし、キョンシーブームを巻き起こした伝説的作品です。
本家の正統なシリーズはその後、(霊幻道士2キョンシーの息子たち!)、(霊幻道士3キョンシーの七不思議)、(霊幻道士完結編/最後の霊戦)と4作製作されました。
一応同じキャストでの続編的な作品などもありますが、本作と同じゴールデンハーベスト製作で、サモ・ハンキンポープロデュースの4作が正統なシリーズと言っても良いのではないでしょうか。
とは言いつつ、サモ・ハンキンポープロデュースのホラーコメディという流れで言いますと、本作以前にもシリーズ的な作品が存在します。
本作(霊幻道士)が製作される以前に製作されていた(妖術秘伝鬼打鬼)、(霊幻師弟人赫人)、(霊幻百鬼人赫鬼)のいわゆるサモ・ハンホラー3部作というシリーズで、
それまでの時代劇カンフー作品一辺倒だったサモ・ハン作品のもう一つの流れを作った人気のシリーズです。
1作目の(妖術秘伝鬼打鬼)はまだ、ホラーカンフーという流れで、肝心な見せ場は、ほとんどがカンフーファイトとなっていて、そのメインのカンフーバトルに呪術合戦を融合するという画期的な作品となっていました。
ただ、カンフーメインではあるものの、作品全体を包む雰囲気は日本の怪奇映画のようなおどろおどろしい世界観で、なんとなく見てはいけないものを見てしまっている、
という恐怖感も、やんわりと伝わる独特の雰囲気を持った作品でした。
それと、もう一つ特筆すべきは、この時点ですでにキョンシーが登場し、サモ・ハンとバトルを繰り広げている点です。
その後の面白設定が確立される前ですので、少々違和感もありますが、恐怖のイメージが前面に出された(霊幻道士)1作目の怖さに通ずるものがあります。
2作目の(霊幻師弟人赫人)は、カンフーアクションは少な目に、仮死状態になったサモ・ハンの魂を救うためにデビュー間もないチェリー・チェンが宇宙人みたいな生物と戦いを繰り広げる、というファンタジックな物語となっています。
特筆すべきは、ラム・チェンインが後の(霊幻道士)に通ずるような役柄で出演していますので見逃せません。
3作目の(霊幻百鬼人赫鬼)は、唯一サモ・ハンの出演していない作品ですが、代わりに(燃えよデブゴン9プロジェクトD)で共演していたトン・ワイが主演し、ラム・チェンインも座長役で出演するなど
アクション面を追求した作品となっています。舞台は京劇の世界で、他の作品に比べると怪奇ホラー色は薄まってしまいましたが、
その分、娯楽要素に徹した後半の空中戦バトルは、実際に京劇出身者が多数いる出演陣の腕の見せ所となっています。
というような流れで、本作(霊幻道士)が製作されるまでにしっかりとした怪奇ホラーとコメディと武術アクションと呪術合戦の融合という独特の世界観が作られていきました。
その流れを受けて満を持して製作された本作ですが、その世界観はそれまでのサモ・ハンホラーの集大成といった感じで、それまで誰も見たことがないような世界観が構築されていました。
まず、最大の魅力は何と言っても現在まで続く、ほぼ完成形に近いキョンシーの容姿と設定が本作でいよいよ登場します。
基本的には、あの両手を前に突き出して、ぴょんぴょん飛び跳ねる特徴的な歩行(移動?)手段や、額にお札を貼ると動かなくなったり、
息を止めると、こちらに気づかなかったり、もち米が効いたり、噛まれたり、深い傷を負わされると被害者もキョンシーになったり、
と面白そうな要素が、本作から本格的に物語に組み込まれています。
これは、監督のリッキー・リュウの先代が本作に登場するラム・チェンインのように道士として活躍していたそうで、
幼少期から本作に登場するような怪奇話をよく聞かされていて、その経験を脚本に活かした、とのことで、
本作のような物語は、古くから言い伝えられてきたような怪談話となっているようです。
そういう民間伝承や、サモ・ハンホラーを下地としたホラー要素や、主演二人とキョンシー役のユン・ワーの超絶武術、あとは結構怖めのキョンシーの特殊メイクなど、
色んな要素が重なり合って本作は今も愛される作品となっています。
アクション面では、ラム・チェンイン=霊幻道士というぐらいに、ハイレベルで説得力のあるアクションと、波に乗っていたころのキレのあるチン・シユウホウの超人的な身軽さ、
顔は見えないながらも、制限のあるキョンシーの動きを創造したユン・ワーの素早いながらも、力強さのあるアクションなど、
この3人の達人が作り出した、新しい【キョンシーアクション】というジャンルが、この時点ですでに完成形ぐらいにまで達しているのが見逃せません。
特にラム・チェンインが演じた超絶アクションと厳しそうにみえて、どことなく愛嬌のあるキャラクターは、
後に製作される傑作カンフー映画(ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ)シリーズのウォン・フェイホンとその弟子たちとの関係などに強く影響を与えるように思えます。
それぐらい、本作は色んな作品に影響を与えた香港映画の中でもかなりの重要な作品となっています。
という事で、その後のベビーキョンシーなどのファミリー路線で、すっかり子供に人気のキョンシーちゃん、というイメージになりましたが、
原点である本作は、まだそれほどファミリー路線全開ではなく、怪奇ホラーとしての要素の多い、ホラーファン必見の作品となっていますので、
機会がありましたら、是非ご鑑賞ください。
今観返しても、やはり名作は面白いですよ。
作品情報
1985年製作 香港製作 ホラーアクション
監督 リッキー・リュウ 制作 サモ・ハンキンポー 原案 エリック・ツァン、
武術指導 ラム・チェンイン、ユン・ワー
出演 ラム・チェンイン、チン・シユウホウ、リッキー・ホイ、ムーン・リー、ビリー・ロー、ポーリン・ウォン、ユン・ワー、ウォン・ハー、アンソニー・チェン、ウー・マ
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