お薦め度 ★★★★★★★☆☆☆
香港の町で活躍する警備会社を舞台に、才人マイケル・ホイとサミュエル・ホイ、リッキー・ホイの三兄弟が結集したドタバタコメディの決定版!!
作品紹介
1982年1月30日公開
今回ご紹介するのは、マイケル、サミュエル、リッキーのホイ三兄弟が主演したドタバタコメディ作品です。
それでは、まずはあらすじから、
警備会社に勤めるチャウ(マイケル・ホイ)は、勤務態度は真面目ながらも、部下をいじめ、威張り散らす自称鬼隊長だった。
しかし社長の息子ファン(フォン・ツイフォン)が、身分を隠して会社の内情を探り、経営者の後を引き継いだため、やり方が古すぎる、と身分を降格させられてしまう。
入れ替わりに身分が上がった副隊長(サミュエル・ホイ)と新人隊員ロン(リッキー・ホイ)と共に、任務に精を出す日々だったが、
ある日の任務で、町を騒がせる強盗団と遭遇することになる!?
香港コメディ映画の流れを完全に変えた才人マイケル・ホイ率いるホイ三兄弟(実際は5兄妹)主演によるコメディ作品です。
日本では(Mr.Boo)シリーズとして一作目の(Mr.Boo!)(詳しくはこちら)以降、関連作のように扱われていますが、
基本的にマイケル・ホイ主演作という以外に物語には関連性のないシリーズとなっています。
ただ、それぞれ、全てマイケル・ホイとサミュエル・ホイ、リッキー・ホイの兄弟が共演しているコメディ作品という事で、
演じている役柄は違いますが、同じような雰囲気で笑って楽しめる作品となっています。
で、今回の物語の舞台は警備会社という事で、発展途上が急速に進んでいた香港の町を舞台にして色々なシチュエーションでドタバタの笑いが展開されます。
例によってマイケル・ホイは悪人ではないけれども、ちょっと意地悪で、過剰に威張り散らす警備隊長を演じ、サミュエルは副隊長としていつもこき使われ、
新人として入隊してきたリッキーは、やはりいつものようにドジなスッコケ隊員として物語を引っかき回します。
基本的な物語の流れは、他のホイ作品のように、大きな設定の中で、細かい状況でのコント的なお笑いシーンを挿入していきつつ、
色々小さな伏線を入れながら、後半の大騒動に向かって終息していく、という大筋となっています。
メインなお笑いシーンで言うと、まず契約している店舗の売上金などの輸送をするために車の運転免許が必須ですので、
教習所の試験に合格するための訓練を受けるシーンが秀逸です。
この運転の練習シーンも、その後の実際に免許を取得しにいくシーンに繋がっていて抱腹絶倒ですが、さらにこのシーンは後半最後のラストシーンで、この運転練習ネタが再び登場しますので、
一応作品としても伏線となる重要なシーンとなっています。
そこから、ライフル銃を撃つ訓練をするシーンで、銃口に指を入れたら大丈夫、というマイケルの説明に対して、バカにしているように笑っていたリッキーが、結局代わりにやる事を強要され、あわや、、!?
というこちらも有名なシーンへと繋がります。
そんなドタバタの日々が描かれていきますが、ついに、身分を隠して新入隊員になり切っていたフォン・ツイフォンが、社長から後を引き継ぎ、新世代の社長として就任することで、物語は展開していきます。
新社長の元、マイケルは、その他の隊員への不適切な態度と、やり方の古さを理由に隊長の身分は剥奪され、ヒラ隊員へと降格させられてしまいます。
さらに、副隊長のサミュエルと新人隊員のリッキーが事件を解決する功績を上げたため、身分が昇格、結果的に立場が逆転します。
晴れて上下関係がほとんどなくなった3人(サミュエルとリッキーは特に威張らないので3人並列のような身分)が、船上仮装パーティの警備任務に就くことで、物語は急展開していきます。
そこでもお笑いのシーンは満載なのですが、その船上を巡回警備中にリッキーが難民(分かり易く広東語を話しているので、どこから来た難民なのかはよく分かりません)一家を発見してしまいます。
で、どう対処しようか迷っている内にマイケルがパーティーに出されている料理をくすねて、こっそり食べようとリッキーと難民一家がいる部屋に入ってきてしまいます。
そこで、テーブルの下に難民一家を隠し、マイケルに見えないようにします。その間もマイケルは頂いてきた蟹を骨折して石膏で固めている両腕で、なんとか食べようと一生懸命やっています。
で、蟹を食べつつ、同じように食事を頂いてきたと思われるリッキーの前のテーブルを見ると、なんとなく食べ物を持つ手の動きがおかしいような、、、
実際食事を食べているのは、あまりの空腹で辛抱できなくなった難民家族が、テーブルの下から手を伸ばして食事をとっていたのですが、まだマイケルにはバレていません。
何度も繰り返して鑑賞したシーンですが、難民という社会問題的な緊迫感のある状況の中で、マイケルの両腕を固定された状態で蟹を食べる、というそれだけ笑えるシーンにプラスして、
目の前のリッキーが他人の腕を自分の腕のように振る舞うという二人羽織り的な笑いの要素をプラスする、という才人マイケルにしか思いつかないような名シーンとなっています。
やはりこのシーンは何度観ても笑えますね。
結局難民家族の存在は、マイケル、サミュエルにも知れてしまい、対処に困ってしまいますが、ここで他のパーティ客が入って来てしまいます。
で、意地悪なマイケルもいるので、どうするのか?となりますが、、、
マイケル、サミュエル共に難民家族を匿ってしまいます。
なんだかんだ言っても腹を空かせている難民家族を警察に突き出す事はできない、このキャラクターこそが、マイケル・ホイ映画の良いところで、
ほとんどの作品通じてマイケルは、嫌味なキャラクターを演じていますが、この厭な奴ではあるけれども、実は心根は優しく、
本当は人情味に溢れている、という内面の親しみやすさが、香港の庶民に受け入れられて大ヒットに繋がったと思われます。
90年代に登場する、チャウ・シンチーも同じような嫌味なキャラクターを演じる事が多かったですが、同じように完全に嫌味なキャラクターで終わる事なく、
物語が終わるころには、ちゃんと感情移入できるキャラクターになっている所が共通していたように思われます。
で、結局難民家族と一緒に生活することになり、リッキー・ホイと難民家族の娘チャンとの愛も育まれ、順調に幸せな日々を過ごすことになりますが、
ある警備の任務中のリッキーが、そのチャンとバッタリ出くわす事になります。
ゴツイ男と一緒に、厚化粧の派手な格好で。
チャンは借金5万ドルを返済するためにその身を犠牲にしていました。
で、この事が理由でリッキーはどうしても5万ドルを工面したくて、ある強盗団によって奪われそうになった、現金に隙をついて手を付けてしまいます。
結局その出来事が原因で、この強盗団にチャンをさらわれてしまい、人質に取られ、ある大変価値のある博物館の展示品強奪計画の手引きをさせられてしまいます。
そんなことも知らずに、強盗団によって狙われている博物館の鎧の警備をしていたマイケルとサミュエルは、そこで強盗団との攻防を繰り広げます。
この強盗団のメンバーにはまさかの大カンフースター、チェン・シンと、サモ・ハン作品で有名なリー・ホイサンが扮していて、
カンフー映画では見せないようなドタバタ演技で楽しませてくれます。
できれば、少しでもカンフーシーンが欲しかったところですが、コメディ作品なのでしょうがないですね。
で、そんな強盗団4人を相手に二人しかいないマイケルとサミュエルは、自分たちを少しでも多くいるように見せかけるために、仕切り越しに声色を変えて会話をする名シーンが爆笑ものです。
さらに、その大人数に見せる芝居を行っている仕切りが、薄い障子で、しかも逆行なので、二人で大人数に見せて動き回っている様子が、全部透けて相手に見えてバレている、
というシチュエーションの発想力が流石マイケル・ホイという名シーンとなっています。
散々なドタバタの末に、ラストは鎧を着たまま、前半に登場したパラシュートでビルから飛び降りて、競馬レース真っ最中の競馬場に降り立つ、
という結構大掛かりなシーンがクライマックスとなっています。
このシーンでは、ジャッキー・チェンの(ポリスストーリー)シリーズの上司役で後ほど有名になるトン・ピョウがまだ競馬解説者としてゲストで出演していたりします。
結局、鎧を守り切り、強盗団逮捕へと導いたマイケルとサミュエルは昇格となり、マイケルは長年(15年)の功績が称えられ、報奨金5万ドルを受け取る事になります。
で、結局お金に手を付けてしまったリッキーは、たとえ告訴が取り下げられたとしても、5万ドルというお金は帰ってこないので、逮捕されてしまう事になります。
5万ドル、、。
という事で、嫌味なやつのいびりシーン満載で笑いをさらっていた本作は、後半では人情味あふれる物語となり、非常に後味の良いラストで終幕となります。
この結構どぎつく、ブラックな笑いも入れながら、観終わってみると、しっかりと人情物語として後味の良い作品になっている、という点が、マイケル作品が長く愛され続けている理由なのではないでしょうか。
という事で、ホイ兄弟渾身の人情物語ですので、コメディ作品好き、香港映画好きの方などご鑑賞されてみてはいかがでしょうか。
広川太一郎の日本語好き替えも抱腹絶倒ですよ。
作品情報
1981年製作 香港製作 コメディ
監督・脚本 マイケル・ホイ 制作 レイモンド・チョウ 脚本・主題歌 サミュエル・ホイ
出演 マイケル・ホイ、サミュエル・ホイ、リッキー・ホイ、フォン・ツイフォン、リー・ホイサン、チェン・シン、トン・ピョウ、ウォン・チョーシー
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