お薦め度 ★★★★★★★★★☆
深夜のスーパーに押し入った若者強盗団。しかしそこを守るのは母国アフリカを救った英雄としての過去を持つ元最強兵士の警備員だった!!ありがちな設定ながらも、一切バイオレンスに頼らない演出で類似作以上に盛り上げていく手腕が素晴らしいフランス興行収入1位作品!!お薦めです!!
作品紹介
日本劇場未公開
今回ご紹介するのは、舐めてたスーパーの警備員は実は、元最強兵士だった、というアクション作品です。
それでは、まずはあらすじから、
スーパーの警備員として働くワルテルは、曲がった事が許せない性格で、今日も着実に警備員としての仕事をこなしていた。
しかし、勤務後に警報機の誤作動の連絡を受け、確認のために深夜に仕事場のスーパーへと戻る。
そこでは、まさに強盗団が貴重な金品を強奪する作業の真っ最中で、ワルテルは監禁状態となってしまう。
強盗を思いとどまるように説得していたワルテルだったが、奪われた携帯の妻からのメールに侮辱的な返信をされた事で、ワルテルの怒りは一気に頂点に達し、反撃を開始する!?
最近流行の舐めてた相手が実は物凄く強かった、というアクション作品の流れをくむ、フランス製作の作品です。
個人的には、この知名度で、このDVDジャケット、スタッフ・キャストもそれほど馴染みのない顔ぶれだったので、それほど期待することなく、
舐めて鑑賞してみたら、予想を遥かに越える面白さに、ノックアウトされてしまいました。
はっきり言って、物語自体は非常に既視感の募るどこかで見た事のある展開が散見される地味なアクション映画といった風貌です。
似たような作品では、古くはブルース・ウィリス演じる普通のおじさん刑事ジョン・マクレーンが巨大ビルで複数のテロリストを相手に孤軍奮闘する(ダイハード)はこの流れの作品の元祖といえますし、
普通のおじさんに見えるリーアム・ニーソンがテロリスト相手に無双ぶりを披露する(96時間)は、この流れを一気に推し進めましたし、
普通の隣に住むお兄ちゃん、なウォン・ビンが実は元特殊工作員で、実は凄まじい戦闘能力を持っている、という(アジョシ)などがありました。
なかでも、気の良い普通のホームセンター従業員のデンゼル・ワシントンが実は凄まじい戦闘能力を持つ人間兵器だった、
という(イコライザー)は本作との共通点も多く、直接的な影響を受けている作品なのではないかと思われます
これらの作品は、そのキャラクターを演じるキャストのそれまでのイメージと、それを裏切る展開が、そのまま作品の面白さにつながりますので、
その意外性と興味から、感情移入度が凄く高まり、作品の後半では、いつのまにか主人公の暴走ぶりを応援してしまう、
という、アクション映画とは切っても切れないぐらい相性の良い表現の一つとなっています。
そこで本作では、そのありきたりな設定を決してバイオレンス表現に頼る事なく、常に興味を引く物語展開と、しっかりと描き分けられた登場人物たちのキャラクターによって、
他の作品とは全く趣の異なる作品へと押し上げています。
特に目を引くのは、やはり主人公のワルテルのキャラクターです。
無骨で無口な警備員の責任者ですが、帰宅すれば、とても奥さんを大事にしている優しい男で、その強面から、有無を言わさぬ芯の強さと畏怖感を感じさせつつも、
瞳の奥ではどことなく優しい、という深みのあるキャラクターを少ない台詞ながらも、確実に人となりの伝わる演技と演出で、違和感なく感情移入できるキャラクターとして表現されています。
しかも、このワルテルというキャラクター、自分では語りが少ないですが、その分奥さんが、ワルテルの凄さを語ってくれる、という演出で、だんだんとその凄さが伝わってくるようになっています。
そういえば、無双キャラクターの元祖ともいえる、シルベスター・スタローン演じる(ランボー)も、暴走し出したら止まらずに、
その無双ぶり、乱暴ぶりを、現場に招集されたリチャード・クレンナ演じる元上官トラウトマン大佐の語りによって表現されていましたので、
そういった優れた表現を本作でも積極的に取り入れています。
その奥さんからの凄さの語りですが、まずは、深夜に警備上に何か問題があって職場に向かったワルテルが、何かの問題に直面しながらも奥さんに心配しないように電話した時に、奥さんと交わす会話からワルテルの計り知れない凄さが伝わります。
奥さん『何か問題があったの?大丈夫?』
ワルテル『問題はあるが心配するな。大丈夫だ。』
奥さん『分かったわ。でも約束して。』
奥さん『だれも殺さないって。』
もう、この台詞を聞いた瞬間から、この作品が他の作品と一線を画する作品である事が約束されてしまいました。
奥さんの台詞一言だけで、もう既にワルテルへの興味は止まらなくなります。
そう、普通のスーパーの警備員、ワルテルはその昔、故郷のアフリカの戦争で多くの命を救った英雄だったのです。
しかも、本作はその凄まじく人間碧並みに強いキャラクターを、類似作品にありがちなもはや流行りともいえるバイオレンス描写に一切とよる事なく描いていますので、
格闘シーンやガンアクションシーンなどは、ほとんどありません。
それでも、この凄まじく強い、というキャラクターに違和感は全くありません。
ワルテルも残酷な仕打ちを強盗団に強いるのではなく、良く考えると、それぞれやられた事を倍返しにする、という非常に律儀な応戦の仕方をします。
奥さんの個人的なメールを見られて、侮辱的なメールを送られた者には、その者が騙している最中の出会い系で知り合った女性に、自分のクズっぷりを正直に話すように強要したり、
殴られたら、メガトンパンチをお見舞いしたり、といった感じで、過剰に攻撃するという事は一切ありません。
という感じで順調(?)に応戦している中、心配して職場に来てしまった奥さんが強盗団に捕まってしまいます。
この辺から、本作の特徴となるような展開になっていきます。
強盗団は刑務所で知り合った者同士が基本的に組んだチームですが、刑務所でリーダーだったおじさんをボスとして、
それに従う無軌道そうな若者4人という構成となっていて、おじさんと若者たちの間には実はちょっとした溝があります。
ワルテルに対して、隠し持っていた拳銃をおじさんが使用するあたりから、この溝がさらに広がっていきます。
無軌道でどうしようもないと思っていた若者たちは、言います。
『銃を使用するつもりなら、俺たちはこの計画を降りる。』
ここで、よくありがちなキャラクターだった無軌道な強盗団の若者たちが、違った意味で一気に感情移入できる魅力的なキャラクターになっていきます。
感情移入できるようになってくると、後半では、完全におじさんとは敵対関係になり、銃で脅され冷凍室に4人とも閉じ込められてしまいます。
そこで、ワルテルを心配してきてしまった奥さんもおじさんにつかまり、一緒に冷凍室に閉じ込められてしまいます。
こういう展開になると、ハリウッド作品だと良からぬ流れになりそうなものですが、本作は違います。
奥さんは言います、
奥さん『あなたたちが強盗であろうとなかろうと関係ない。あの人は礼儀を失するものには暴走が止められなくなる。』
奥さん『一度暴走してしまったら、誰にも止められなくなる』
強盗団『血に飢えた男という事なんだろ』
奥さん『違う、あなたたちガキが、オムツを履いていたときから故郷のために戦っていた英雄なのよ』
と、強さの凄まじさを伝えながらも、強盗と戦っているワルテル自体の心配よりも、ワルテルの暴走によって手が付けられなくなって死人が出てしまうかもしれない、
という、むしろ強盗団の方を心配する奥さんの様子が、その凄まじさをさらに適格に表現しています。
という具合に、バイオレンスに頼る事なく、ワルテルの凄まじい強さがしっかりと伝わってくるわけですが、
後半いよいよ奥さんを人質にワルテルとおじさんが対峙する展開になります。
とは言っても、もうすでにそこまで行けば、ワルテルの凄まじさはそこにいる全員が知っている当然の事実となっています。
おじさん『奥さんの命を助けて欲しかったら、俺を無事にここから逃がせ』
これは、要求と言うより、ただの命乞いです。
要するに、いつのまにか立場は逆転して、襲う側と襲われる側が入れ替わっている、という事になります。
そうなる事が最初から分かっていたのは奥さんだけ、という事ですね。
その先、この凄まじく強いワルテルがどう決着をつけるのか?が見ものですが、ここまでワルテルというキャラクターを十分観てきた観客にとってはは
それがバイオレンスな決着ではない事だけはもうはっきりと分かっています。
その終わり方も、この流れの作品の中では非常に珍しい後味の良いラストなっています。
という感じで、物語の大筋はよくありがちな、舐めてた相手が実は強かった映画ですが、その描き方に卓越した手腕の光る、優れた作品となっていますので、
機会がありましたら、是非ご鑑賞ください。
お薦めです!!
それにしてもDVDジャケット、もうちょっとなんとかならなかったのでしょうか、、。
作品情報
2019年製作 フランス・ベルギー製作 サスペンスアクション
監督・脚本 ヴェランテ・スージャン
出演 イッサカ・サワドゴ、アルバン・イヴァノフ、ジュディス・エル・ゼイン
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