おすすめ度 ★★★☆☆☆☆☆☆☆
香港映画には珍しい、ヒッチコック風の入れ替わりミステリーな作品ながらも、二転三転しすぎるストーリーの果てに、最終的に整合性のないトンデモ展開になってしまう、非常に惜しいサスペンス!!
作品紹介
日本劇場未公開
今回ご紹介するのは、ジョイ・ウォンが本格的なサスペンスに挑んだ現代劇です。
それでは、まずはあらすじから、
夫のDVに悩まされる妻レベッカは毎日のように口論を続けていたが、ある日出かけた夫が数日戻らなかったため、警察に捜索願を出す。
しかし、さらに数日後、夫は何食わぬ顔で帰宅するが、レベッカは、その男が夫ではなく、別人だと主張する。
そんな中、レベッカの周りで、怪しい男の影が近づくのだった!?
ショウブラザース社の(嵐を呼ぶドラゴン)や、(少林寺列伝)、(続少林寺列伝)、等に出演していたイップ・ティンハンが、
その後製作者側に回り、監督となってユン・ピョウ主演、ビビアン・スー共演の(ロマンシングドラゴン)や、
金城武主演の(チャイナドラゴン)等で愛嬌を振りまいていたキッズが活躍する台湾お得意のキッズアクション(少林活寶具)等の娯楽要素の高い作品の監督となり、
その勢いで、当時人気絶頂だったジョイ・ウォンを時代劇ではなく、現代劇の、しかも香港映画には珍しい完全なミステリーサスペンス作品の主演として迎えた異色の作品となっています。
主演のジョイ・ウォンは同年にチョウ・ユンファ主演の(ゴッドギャンブラー)や、(風にバラは散った)等に出演し、
翌年の1990年には(チャイニーズゴーストストーリー2)を始めとして年間10本以上の作品に出演していますので、
まさに人気絶頂期に出演した作品となっています。
で、怪しい夫役を演じているのが、チョウ・ユンファ共演の(愛と復讐の挽歌)シリーズや(風の輝く朝に)、
ダニー・リーと共演した(男たちの絆)等、男臭い作品で個性的な魅力を発揮していたアレックス・マンで、
本作では物語のキーとなる怪しい夫役を好演しています。
さらに、ジョイ・ウォンの親友役でありながらも、後半どんどん怪しくなっていく役柄に、レオン・カーファイと共演した(黒豹天下ブラックパンサー)(詳しくはこちら)、
(ランアウェイ香港脱出)(詳しくはここちら)でもアレックス・マンと共演しているン・ガーライが扮し、緊迫感を盛り上げています。
さらに、眼鏡をかけてパッと見判断しにくいですが、ジョイ・ウォンに想いを寄せて、だんだんと怪しい一面も垣間見せる地味な医師役で、
本作以降に大ブレイクしていく事になる(孫文の義士団)(バレット・オブ・ラブ)等の香港四天王の一人レオン・ライが、
かなりのフレッシュな魅力で、ジョイ・ウォンに迫ります。
で、そんな勢いのあるスタッフ・キャストが結集した作品の物語は、ある金持ち夫婦(お手伝いさん多数)の夫が、さんざんDVを繰り返した挙句に、ある日突然失踪するシーンから始まります。
で、困り果てた妻は警察に捜索願を出し、何かの事件に巻き込まれたのか?という事で大騒ぎになりますが、
数日後に休暇を取っていた、と普通に帰宅、警察も当然捜索を打ち切りますが、何故か妻は、帰ってきた夫は別人である、と訴える、
というヒッチコック風の謎が謎を呼ぶサスペンスがメインの展開となっていきます。
勿論、本作の魅力は人気絶頂期のジョイ・ウォンが事件の怪しい影に翻弄され、DVから始まって、夫とは思えないその男との緊迫感のあるやり取りや、
追い込まれている様が見所の作品で、多少DV表現等で香港映画らしい行き過ぎもありますが、
そんなリスキーな(バイオレンスな)シーンにも怯まずに演じている点が、本作の一番の魅力となっています。
対する怪しい夫を演じるアレックス・マンも他の作品のような悪役寄りの役柄ではありますが、前半の怪しさ満点の状態から、
後半は、ガラッと変わった(作品全体の流れごと変わりますが、、)キャラクターも両方演じ、演技の幅を見せつけるような名演を見せています。
そこに、ジョイ・ウォンの親友役(何故かずっとジョイ・ウォンと一緒に豪邸に住んでいるようなので、実際どういう位置のキャラクターなのかいまいちわかりませんでした)のン・ガーライが、
前半は親身になって助けてくれる世話好きな役柄から、実は、、、という感じで、こちらもアレックス・マン同様に前半と後半でガラリとイメージの変わる役柄で物語を展開させていきます。
物語展開そのものが、本作の重要なな見所ですので、中盤以降の展開に関しては割愛させていただきますが、
一つだけ言えるのは、誰がどう見ても、
物語展開の整合性が無く、結末から逆算して考えても、何度も何度も袋小路に迷い込んでしまうような意外過ぎる物語、
言い換えると、
本当の意味で先読み不能の物語となっています。
しかも、最終的に(サスペンス好きなら予想が付きそうですが)何故、そんなに頑なにジョイ・ウォンが夫が別人である、と主張するのか?の理由を告白する衝撃的な展開になりますが、
そんな衝撃の直後に、それをさらに打ち消す衝撃が訪れる、という
整合性の無い物語と大どんでん返しを繰り返すうちに、なんとなく全体的にコントみたいに見えてしまう
ぐらいに、意外のつるべ打ちとなっています。
ただ、全く話の筋は通らないし、無茶苦茶なストーリーだけれども、キャストの熱演も伴って、意外過ぎる故に、
逆に意外に楽しめてしまいますので、後半まで飽きることなくしっかりと鑑賞はできる作品とはなっています。
そこは、おそらく娯楽要素の高い作品を多く手掛けているイップ・ティンハン監督の、とにかく面白そうな要素を詰め込んで楽しんでもらおう、という気持ちが前面で出ているからだと思われます。
ただ、どう考えても、詰め込み過ぎですが、、。
という事で、この時期の香港映画には珍しくガンアクション要素も、カンフーアクション要素も、ホラー要素も無い生粋のサスペンス作品となっていますので、
香港映画好きの方や、ジョイ・ウォンファンの方等ご鑑賞されてみてはいかがでしょうか。
あと、今の倫理観では絶対に描くべきではないような表現も出てきますが、そこは当時の香港を感じる、という意味でスルーをお勧めします。
作品情報
1989年製作 香港製作 サスペンス
監督・脚本 イップ・ティンハン
出演 ジョイ・ウォン、アレックス・マン、ン・ガーライ、レオン・ライ、フォン・ゴン
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