カンフー映画としてのおすすめ度 ★★★★☆☆☆☆☆☆
かつて、人民と武術を愛したカンフーエンペラーと呼ばれた皇帝が存在した!!実話を基に自由な発想で描く、(男たちの挽歌)のティ・ロン主演のカンフーアクション!!
作品紹介
日本劇場未公開
今回ご紹介するのは、ティ・ロン主演の実話を基にしたカンフーアクション作品です。
それでは、まずはらすじから、
中国清朝時代、次期皇帝の継承者を巡って兄弟間で激しい争いが触発していた。
そんな時第4皇子は、争いを好まない性格であったが、人民の平和を願うなら、まず強力な力を得なければならない、という導きに従い、
皇帝の座を得るために、まずその皇位継承者が書かれている遺言書を得ようと策略を練り始めるのだった!?
(男たちの挽歌)で有名なティ・ロン主演のカンフーアクション作品です。
一応、歴史的な事実を基に製作された物語で、ティ・ロンが演じるのは、清の第5第皇帝、雍正帝が主人公となっています。
雍正帝といえば、ジョセフ・クォ監督、カーター・ワン主演の人気シリーズの続編(少林寺への道 十八銅人の逆襲)(詳しくはこちら)や、
同じスタッフ・キャストによる雍正帝が行った少林寺焼き討ちをメインにした(少林寺炎上)(詳しくはこちら)、
リュー・チャーフィー主演で、本作と内容的にも共通点のある(少林寺皇帝拳)など、
カンフー映画の打倒すべき巨悪、として描かれる事が多く、(少林寺への道 十八銅人の逆襲)等は主人公ではありましたが、
完全に悪人として描かれていて、悪人なのに主人公、というカンフー映画においては、かなり異色な設定の物語となっていました。
そんな悪人として描かれれることの多い雍正帝を、本作ではまさかの完全な善人として描く、というある意味、異色の内容となっています。
物語の基本としては、他の作品のように先代の皇帝が病に倒れて、次の皇位を巡って、後継者争いが勃発する、
という展開で、結局第4皇子である雍正が皇位を継ぐことになる、という大筋となっています。
そこまでは実際に起きた出来事のようですので、史実通りかと思われますが、本作はそこに自由な発想でカンフー要素を加えていった、という感じになっています。
実際に法制を改正して独裁政権を進めていったようですので、恐れられる部分はあったようですが、官製を改革して、
官職の権限をはく奪していき、部下の粛清などを進めた事で、恐れられてはいるけれども、実際はそれを理由に政治の腐敗なども減り、
次の時代の基盤を築いていった事実もあるようですので、一概に完全な悪人、というわけでは無さそうです。
ですので、恐らく何か強烈な印象を与えた映像作品か、書物があって、その影響で大悪人イメージが(映像作品では)ついていったのではないでしょうか。
という流れの中で、登場した本作は、皇位争いの大筋はそのままに、主人公の雍正帝を完全な善人として描く、という他の作品とは違った見せ方の作品となっています。
ただ、醜い皇位争いの果てに皇位を継いだ主人公、という部分は曲げずに描かれていますので、なんとも物凄く善人設定ではあるものの、
実際にやっている事は、結構汚い、という感情移入を躊躇するようなちょっと得意な善人となっています。
まず、冒頭で既に病に伏せっている現役の皇帝が、次期の皇位継承者を記した遺言書の隠し場所である部屋にティ・ロン演ずる第4皇子が師匠と共に黒装束で侵入し、
護衛達に見つかり、激しいバトルになった後に、結局遺言書をゲットすることはできずに腕に傷を負った状態で逃げ出す、というシーンから始まります。
で、部屋に戻ったティ・ロン皇子は、師匠と『なんとか、あの遺言書をゲットしなければならない』という会話から物語は始まっていきます。
その際ティ・ロンは兄弟で争う事の虚しさなどをしきり訴えますので、このティ・ロン版の雍正帝が善人設定である事が説明されます。
その善人ティ・ロンを諭すように師匠(どういう立場の師匠なのか説明がないので良く分かりませんが、カンフーの師匠でもあるし、精神的な部分でも、政治的な部分でも、かなりの影響力のあるメンター的な人物かと思われます)は、
『平和な争いのない国を作るには力を手に入れなければならない。』
『そのためには、皇位が必要で、どんな手段を使ってでも皇位を手に入れる必要がある』
『勝てば官軍』
と、僧侶っぽい扮装とはまるで不似合いな勝気な軍師のようなアドバイスでティ・ロン雍正を導いて(洗脳?)していきます。
で、戸惑いながらも、人民の平和のために兄弟たちと戦っていく事になります。
一応、物語上は善人設定ですので、倒すべき悪も必要になってきますので、その倒すべき悪を叔父に設定し、
兄弟たちを一人づつ暗殺して、自分に有利に事を進めようとしている、という全ての黒幕的な悪人が登場します。
で、流れ的にはそんな叔父の攻撃をかわし、宮外に出て、人民に紛れて仲間を増やしつつ、なんとか隠してある遺言書をゲットせよ!という展開になっていきます。
この物語上の悪の黒幕を演じているのが(怒れるドラゴン不死身の四天王)や(新Mr.BOOアヒルの警備保障)(詳しくはこちら)等の香港のブロンソンことチン・シンで、
物凄い肉付きの良い上半身から繰り出す、重そうなパンチでティ・ロンに襲いかかります。
で、ティ・ロンが街で出会い、遺言書ゲット大作戦時にも協力してくれる拳士役で、(空飛ぶ十字剣)やジョン・ウーが監督し、ジャッキー・チェンが準主役で出演していた(飛竜拳少林門)等で知られる
ハイキッカー、タン・トゥリャンが出演しています。
クライマックスではこの3人が同じ場所で火花を散らす展開になっていきますので、独立系の製作会社の作品ではありますが、
非常に豪華なメンバーが揃った作品となっています。
※ここから物語のラストに触れていますのでご注意ください※
勿論、最終的にこのどうしてもゲットしたかった遺言書は無事ゲットできますが、その遺言書には残念ながら第14皇子を即位させる旨が記載されていて、
一同残念、、、となるのですが、、、、
そんな時でも謎の師匠は『問題ない、大丈夫だ』と言い出し、、、
まさかの遺言書の文字に少し加筆を加えて第14皇子を第4皇子に書き換える、
という身もふたもないやり方で、強引にティ・ロンに皇位を継承させる方向に持っていきます。
で、そのまま遺言発表、という晴れの舞台で、勿論既に第4皇子が即位するように書き換えられているのですが、
その意外な発表(てっきり第14皇子が即位すると思っていたので)に不服を申し立てた叔父であるチン・シンが、
『そんな事があるか!』とキレ出して、全員捉えて皆殺しにせよ!とこれまた強引すぎる暴君ぶりを発揮していきます。
で、比較的温和な皇子の一人が言います。
皇子『何故、そんなに争うのですか?誰が即位しても良いではないですか?』
チン・シン『お前に何が分かる!勝てば官軍!』
もう、作品の真のタイトルは【勝てば官軍】か、【カンフーエンペラー勝てば官軍拳】ぐらいがしっくりくるぐらいにその言葉が発せられます。
ただ、この子供騙しのような加筆トリックは(少林寺への道 十八銅人の逆襲)でも描かれていましたので、そこからの頂き、か他の作品でも描かれているような有名なトリックなのかもしれません。
それにしても、、、。そんな事で皇位を決めても良いのでしょうか、、。
とはいえカンフーアクションに関してはスターが豪華に共演しているだけあって、なかなか見ごたえありますので、
カンフー映画好きの方や香港映画好きの方等、ご鑑賞されてみてはいかがでしょうか。
作品情報
1981年製作 香港製作 カンフーアクション
監督 パオ・シュエ・リー 製作 フィリップ・コー 脚本 ニー・クワン
出演 ティ・ロン、タン・トウリャン、チン・シン、シー・ズー、
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