ファナティック ハリウッドの狂愛者(THE FANATIC)88分

投稿者: | 2020年9月6日

お薦め度 ★★★★★★★☆☆☆

ジョン・トラボルタ渾身の新作は、ハリウッドネタを多数含むストーカーサスペンス!!

作品紹介

2020年9月4日公開

今回ご紹介するのは、ハリウッドに住むちょっと危ない映画オタクジョン・トラボルタが演じるストーカーサスペンスです。

それでは、まずはあらすじから、

ハリウッドの大通りで警官のコスプレで観光客相手に日銭を稼ぐムース(ジョン・トラボルタ)は、大の映画オタクだった。

ある日、愛してやまないアクション俳優ハンター・ダンバー(デヴォン・サワ)のサイン会に行くが、自分の順番の直前で席をはずすダンバーにサインをするように強く要求する。

これを拒絶したダンバーに対し、ムースのそれまでの憧れの気持ちは壊れていき、やがて狂気の領域へと暴走していく、、。

スターの自宅を突き止めるムース

まず初めに感じた事は、単純によく、この役柄をトラボルタが演じたものだという事でした。

なかなかのリスキーな役です。

ストーカースリラーは今までも傑作が多く、また名優が演じる事で非常に印象に残っている作品も多いです。

有名なところでは、スティーヴン・キング原作で、作家であるジェームズカーンが生み出したシリーズを完結させようとするのを、狂気のファンが力づくで止めようとする、主演のキャシー・ベイツがアカデミー賞まで獲得した(ミザリー)。

絶好調で活躍中だったウェズリー・スナイプス演じるプロ野球選手が、しつこく付きまとうロバート・デ・ニーロ演じるファンと対決する、そのものな(ザ・ファン)。

クリント・イーストウッド初監督作品でラジオのDJがファンと気軽に一夜を共にしたら、実は狂信的なストーカーだった、というストーカーものの元祖(恐怖のメロディ)。

写真屋の店員が現像に来た一家の写真を勝手に焼き増しして、自宅に飾って妄想にふけるロビン・ウィリアムズ主演の(ストーカー)。

など、秀作であるストーカーものには必ずといっていいほど、名優の説得力あるすばらしい演技が光っています。(恐怖のメロディのイーストウッドは被害者側ですが)

そこで、本作のジョン・トラボルタですが、

最近の主演作品をあげてみると

マフィアのボスとして登場。主人公達に金の返済を強く迫る大物悪役的な役柄の(クリミナルミッション

イーサン・ホーク共演の何故か街の住民がほとんど出てこない(理由は語られない)殺風景な西部劇の街を牛耳る悪徳保安官役として登場の(バレー・オブ・バイオレンス

(バレー・オブ・バイオレンス)についてはこちら

妻を殺された一般家庭の男が、犯人に復讐するために次々と殺人を犯すリベンジアクション(リベンジリスト

モーガン・フリーマン、ファムケ・ヤンセン豪華共演のハードボイルド探偵ミステリー(ポイズン・ローズ

実在したマフィア、カール・ゴッチの半生を思い入れたっぷりで演じておおむね低評価で迎えられたオブではないインな(ギャング・イン・ニューヨーク

ダートトラックレースというマイナーなカーレース世界で活躍する伝説の元レーサーとその息子のドラマ(ワイルドレース

パワーボート界のゴッドファーザーと呼ばれた実在の男の半生を、マフィアとのつながりを軸に、ボートレースシーンなど盛り上がるはずのシーンをほとんど描かずに表現したドラマ(スピードキルズ

といった感じで、正直なところ、お世辞にも良い作品と言えるものは少なく、個人的な意向だけで製作しているのでは?と思ってしまうような作品が多かったように思います。

傾向として、規模の小さい作品で作品の規模以上に大物を演じているような作品が多かったような気がします。

そこで、本作です。

本作は、これまでのイメージを覆すような、大物ではない役柄です。

しかも、精神的に非常に不安定な役です。

近年の流れではかなり異質のリスクを伴う役柄でもあります。

監督のインタビューでは当初トラボルタには、ストーカーされる側の役柄でオファーをしたそうですが、

トラボルタ本人からストーカー側の役をやりたい、と返事が帰ってきた、という事で自ら製作にも参加して並々ならぬ意欲で製作にあたったようです。

もう、鑑賞すれば明らかにその意欲が観てとれます

思っていた以上に役にハマっています。

というより、役にハメる実力がいかんなく発揮されている、といった方が正しいかもしれません。

近年のとってつけたような大物役(失礼ながら)ではなく、とってつけたような小者役でもなく、

どこかにいそうな、ちょっと危なめの人、を違和感なく演じています。

ですので、本作でトラボルタが演じているムースは、他の名優たちのストーカーサスペンスとはちょっと違い、

基本的にはその辺で偶然出くわしそうなちょっと危ない人、といった感じのキャラクターで、デニーロのような見るからに狂気が宿っているような感じではありません。

映画オタクでハリウッドで警官コスプレをしながら日銭を稼せぎ、映画ショップでサイン入りグッズなどを買う事を至上の歓びにしていて、精神的にはちょっと自分世界に入ってしまうようなところがあり、どちらかというと優しく接するべき存在です。

周りの人間にもいじめられたりしますが、ちゃんと助けてくれる仲間もいて、日々自分なりに一生懸命生きています

スター自宅前で写真を撮るムース。そこでやめておけば良かった、、。

そんなムースが愛してやまないハリウッドスターのサイン会で、無下にされた事により、少しづつおかしくなっていきます。

ただ、本作においては、あくまでムースは弱者側であり、ハリウッドスターは結構酷い対応をしますので、観ている側はどちらかというとムース側に感情移入するようになっています。

この基本的な流れが他の名優たちが演じてきたストーカー作品とは違っていて、デ・ニーロのような狙われたらもう無理、なファンや、キャシーベイツのような動けない主人公の足をいきなり叩き折るような強者ではありません。

その対応の仕方をしていると、その気の弱そうなストーカーも追い詰められて危ない感じになっていくよ、というような流れに自然になっていきます。

この微妙な匙加減が非常に素晴らしく丁寧に描写されています。

ラストは勿論暴走してく事になるのですが、終わり方もとってつけたような、モンスター化したムースと対決して、やっつけて終わり、

ではなく、危ない面もあるけれど、やはりムースは基本的には悪人というわけではない、というような終わり方となっています。

あと、舞台がハリウッド近辺で映画オタクの物語なので、ハリウッドネタや映画ネタも随所に挿入され、映画ファンにはそれだけでも結構楽しめるようになっています。

という事で、本作はトラボルタ作品の中でも異質な作品ですが、非常に魅力的な鑑賞する価値のある作品となっていますので、機会がありましたらご鑑賞ください。

スター宅に侵入するムース、、。

作品情報

2019年製作 アメリカ製作 サスペンス

監督・脚本・原案・製作 フレッド・ダースト 製作 ジョン・トラボルタ

出演 ジョン・トラボルタ、デヴォン・サワ、アナ・ゴーリャ、ジェームズ・パクストン、ジェイコブ・ブロドニック、

ムースは追い詰められると暴走する!

その他のストーカーサスペンス作品

古典の物語を被害者側から描いた(透明人間)はこちら

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