カンフー映画としてのおすすめ度 ★★★★☆☆☆☆☆☆
グ・シャンウェイによるしっかりとした武術アクションが楽しめる少林英雄ホン・シークワンを描いた武術カンフーアクション!!ちゃんとしたカンフー映画です!!
作品紹介
日本劇場未公開
今回ご紹介するのは、しっかりとした武術アクションが魅力のグ・シャンウェイ主演のカンフーアクション作品です。
それでは、まずはあらすじから、
1669年、ホン・シークワンが少林寺に帰還すると、師匠や弟子たちは裏切り者によって殺害され、かろうじて生き残ったフォン・サイヨ以外は壊滅状態となっていた。
そこでホン・シークワンは、師匠の志を継ぐために、埋蔵金のありかを記した地図を革命派の本部まで届けるために、
フォン・サイヨと共に旅に出るのだった!?
(ムーラン最後の戦い)(詳しくはこちら)や、(超西遊記)(詳しくはこちら)、(少林寺 十八の羅漢)(詳しくはこちら)等、
しっかりとした武術アクションで、作品を脇役として引き立たせてきたグ・シャンウェイの珍しい主演作品です。
一応、カンボジア製作の(クリミナルターゲット)では主演を演じていますが、本格的武術アクションではありませんでしたので、
本作のような武術をメインで魅せる役柄の主演というのも貴重なのではないでしょうか。
ボクシング全国大会で五年連続優勝、全国武術大会で二度優勝を経て、カンフー映画スター発掘番組で優勝してデビューを飾った、という実力派のカンフースターですので、
本作をきっかけにもっと武術カンフー映画での活躍を期待したいですね。
今のカンフー映画とは言い難いカンフー映画っぽい作品が横行する中国映画界で、本当に動けるアクションスターは、本当に貴重な存在だと思われます。
そんな本格派、グ・シャンウェイが今回演じるのは、実在した少林英雄ホン・シークワン(こうきかん、ハン・カーロ)です。
少林寺を題材にした物語には、頻繁に登場する洪拳の創始者で、朝廷による少林寺焼き討ちに関する物語には、
大抵、方世玉と共に少林寺復興に努める少林寺弟子として激闘を繰り広げたりします。
その英雄的な行いから、常に人気のキャラクターで、これまでにもショウブラザース製作作品(嵐を呼ぶドラゴン)や、(少林虎鶴拳)でチェン・カンタイが演じ、
テレビシリーズでは(クンフーマスター洪熙官)で、ブレイク前のドニー・イェンが演じ、
(新・少林寺伝説)では、監督バリー・ウォン、武術指導コーリー・ユエンの下、ジェット・リーが凛々しく演じたホン・シークワンを演じています。
また、日本未公開ではありますが、(少林英雄 方世玉洪熙官)では、チン・カーロがフォン・サイヨを演じ、
なんと(霊幻道士)のラム・チェンインがホン・シークワンを演じています。
そんな大人気の英雄ホン・シークワンを、いよいよ本格派のグ・シャンウェイが演じる事になります。
これまでの作品の中では、比較的ジェット・リー版の影響を受けているのか、槍を使用したアクションがメインの武術シーンとなっています。
この槍術アクションを描く、という事が本作の重要なポイントになっているようで、どんな場面にもグ・シャンウェイはゴツイ自前の槍を持ち歩き、
相手が素手だろうと、女子と分かっていようと、お構いなしにゴツイ槍で戦い挑みます。
ホン・シークワン、容赦無し。
そこまで槍にこだわるなら、このゴツ槍に関しての何かエピソードがあってもよさそうですが、そこは掘り下げられる事はなく、
ただただ槍をメインにしたアクションが繰り広げられます。
ただ、この槍、自己主張が強く、あまりに魅力的に描きたいばかりに、アクション中の効果音が、ほとんど槍を振り回す轟音でかき消される、
という、ちょっと音量の調節を見誤ったような仕様となっていて、振り回す音が、煩さすぎてアクションを観るのに集中できない、
という不具合がでそうなぐらいに存在感を主張しています。
やっているアクション自体は素晴らしいのですが、気が散ってしょうがない、という感じでしょうか。
で、アクションシーン自体は多少カット割りが多めという事を除けば、グ・シャンウェイや他のキャストのスタントマンの動きも素晴らしく、
グ・シャンウェイだけが超絶アクションで、独り相撲をしているようなアクションではなく、非アクション系のキャスト(ヒロインやヒロインの母親)も、
できる限り自身でも動き、スタントマンとのバトンタッチもできるだけ違和感の無いように工夫していますので、
ちゃんと動けないキャストもそれなりに動いているように見えるアクションシーンとなっています。
そんなヒロインを演じるのは、(王牌宫女)等が人気のヤン・ユンランで、主演作品は少なそうですが、物語を引き立たせる存在感を他の作品でも発揮しているようです。
と、ここまでは、槍の音が煩い以外は、文句なく楽しめるポイントばかりなのですが、本作でホン・シークワンの弟弟子、というより直接の弟子ぐらいの位置でずっとそばにいる
少林英雄フォン・サイヨの存在があまりに微妙過ぎるために、一挙に作品のトーンを下げる結果となっています。
演じるのは、本国のデータベースにも他の出演作品が見当たらない、おそらくデビュー間もない若手、【赵文卓】なる表記のキャストです。
日本では、一応ツ(チに濁点)ァオ・ウェンツ(チに濁点)ァオという難しいカタカナ表記になっていますが、中国語名が【赵文卓】、
まさかの(ワン・チャイ)シリーズをジェット・リーから引き継いでその後カンフースターとなったチウ・マンチェクの中国語名の表記と同姓同名、
という、どういうつもりか良く分からない芸名(か本名かは分かりませんが)の若手キャストが演じています。
しかも、本家チウ・マンチェクも、テレビリーズ(新方世玉)で、実際にフォン・サイヨを演じていますので、
同姓同名人物が、同じ役柄を演じている事になります。
実にややこしいですが、このカンフーの達人であるフォン・サイヨもこれまで多くのカンフースターが演じていますが、
本作における偽チウ・マンチェク(便宜上、そう呼称します)が演じるフォン・サイヨ、これがフォン・サイヨ史上最弱というか、
最性悪というか、最嫌味キャラというか、なんとも感情移入しにくいキャラクターとなっていて、演じる偽チウ・マンチェクの佇まいも相まって、
いつ、裏切ってドロドロ展開に変わってもおかしくないような、怪しい雰囲気を醸し出すキャラクターとなっています。
演じている役柄がフォン・サイヨなので、裏切りのドロドロ展開はありえないのは分かっていますが、一本気なホン・シークワンに対して、
あまりに嘘くさい雰囲気が充満していますので、素直に少林英雄二人の物語を楽しめない、油断できない雰囲気が立ち込める事になっています。
勿論、カンフースター、チウ・マンチェクではないので、超絶アクションを繰り出せるわけでもなく、ヒロインとヒロインの母キャストがカンフーの達人っぽくアクションを頑張っても、
絶体にその二人より強いはずのフォン・サイヨが、終始ナヨナヨなので、武術家が活躍する物語に、一人だけ武術ができない人物が混ざってしまっている、
という他の作品で言うところの、か弱いヒロイン的な守られるべきキャラクターとなっています。
これは流石に、誰が見てもフォン・サイヨには見えないようなキャスティングとなっています。
本当にフォン・サイヨが登場するカンフー作品史上最弱ではないでしょうか。
ただ、大勢での格闘中に、ちょくちょく挿入される乱闘では、一応、なんとなく撃退している、という描写なので、もしかするとそれなりに強さもある、という表現なのかもしれませんが、
そういう意図はほとんど伝わりません。
あと、もう一点、せっかくの素晴らしい武術アクションが展開される物語ですが、肝心の物語の本筋が、
少林寺の師匠が、ある弟子の裏切りによって殺害されてしまい、その師匠の志を継ぐために、革命派の天地会に、活動の資金源となる宝の地図を届ける、
というワクワクするような出だしで始まるものの、地図のやり取りよりも、途中で出会う女性2人に、ホン・シークワンがモテモテ状態になり、
ほとんど感情を表さない(フォン・サイヨも笑った兄弟子を見た事がない、というぐらいのキャラクター)ホン・シークワン相手に、
恋のアタック作戦とやきもちを繰り返す、という、かなり軽めのストーリーがメインになってしまうのも、少し残念な点となっています。
中国を代表するような英雄の物語が、結局恋のシーソーゲーム物語がメインになってしまう、という、なんとも燃えずに萌えるようなストーリーが、
せっかくの素晴らしいアクションの魅力を残念ながら薄めてしまっています。
というように、全てが素晴らしい、という感じではありませんが、グ・シャンウェイの素晴らしいアクションはしっかりと堪能できる作品となっていますので、
カンフーアクション好きの方や、香港映画好きの方等、ご鑑賞されてみてはいかがでしょうか。
今の中国映画で、ちゃんとしたカンフーアクションが見れる、と言う事だけでも、観る価値はありますよ。
作品情報
2021年製作 中国製作 カンフーアクション
監督 ジャン・ディツァイ
出演 グ・シャンウェイ、ツァオ・ウェンツァオ、ヤン・ユンラン
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