カンフー映画としてのおすすめ度 ★★★★★★★☆☆☆
(ドランクモンキー酔拳)のユエン・シャオティエンとサモ・ハン作品でお馴染みのリョン・カーヤン共演による、眠れば眠る程強くなるユニークカンフー作品!!
作品紹介
日本劇場未公開
今回ご紹介するのは、髭のカンフースター、リョン・カーヤンが、ユエン・シャオティエンと共演したカンフーアクション作品です。
それでは、まずはあらすじから、
政府の役人チン・ターバー(リョン・カーヤン)は、悪党であるツァオ・パーティエン(エディ・コー)の悪事の証拠を握り、それを報告するために都を目指していた。
その道中、追手の攻撃にあい負傷したところを、活発な少年、ラ・チュウチャイに助けられる。
その後傷を癒すためにカンフーの達人の老人に世話になりながら、カンフーの修行の日々を送るが、やがて追手の魔の手は、すぐそこまで迫ってくるのだった!?
多くのサモ・ハン作品等でお馴染みのリョン・カーヤンと(ドランクモンキー酔拳)の師匠役ユエン・シャオティエンが共演したカンフーアクション作品です。
原題も邦題も勿論ジャッキー・チェンの(ドランクモンキー酔拳)を意識したようなカンフー技が炸裂する内容で、
酔えば酔うほど強くなる、に対抗して眠れば眠る程強くなる、といった感じに、眠そうなポーズをキメながら激闘を繰り広げていきます。
ジャッキーの(笑拳)もあったぐらいですので、酔う、笑う、泣く、怒る、そして、、、眠る、という感じで人間の特徴的な状態をそのまま技に取り入れる、
という強引ですが、なかなか面白い発想のカンフー技となっています。
ただ、酔っている状態ですと、感覚が鈍くなるので、ダメージを感じにくい(その時は、ですが)ので、
それを利用した防御と攻撃方法といううのは分かりますが、
眠い、、、というのは、流石に無防備になる、という弱くなる要素はあっても、強くなる要素は全くないような気がしますが、、、
そういう事を言っているとカンフー映画はほとんどが成り立ちませんので、そこはスルーして、実際の内容ですが、
これが、意外と物語自体はジャッキー作品にあやかることなく、それなりにオリジナリティのある内容となっています。
物語の始まりは、まずはホワン・イルン演じるストリート・キッズ、ラ・チュウチャイが元気にその辺の商店から食べ物を奪い、
元気いっぱいに逃げ回るシーンから始まります。
で、そのラ・チュウチャイが訪れた食堂で、リョン・カーヤン演じる政府の役人チン・ターバーと出会います。
チン・ターバーは、捜査していた悪党の正体を掴んだため、その報告をするために政府機関に向かうものの、
その道中で、悪漢たちの追手に阻まれ、腹部を負傷している状態で、格闘になだれ込み、急場ながらも二人のコンビネーションで悪漢を虐待、
そして二人は意気投合し、兄弟分となります。
で、その後、また、悪党と格闘になっている所をユエン・シャオティエンと出会い、助けてもらって二人共弟子入りし、
その後、伝授された睡拳を使って悪党を倒す、という展開になっていきます。
という流れですので、放蕩息子が厳しい修行を経て、立派な大人に成長していく、という(ドランクモンキー酔拳)とはかなり違う内容となっています。
で、勿論主人公はリョン・カーヤンで大活躍しますし、睡拳も体得して悪党を倒す、という基本のラインはあるのですが、
本作一番の特徴、と言っても良いぐらいの要素は、主人公が出会って兄弟分となるラ・チュウチャイ役のホワン・イルンの存在です。
本作のリョン・カーヤンは初登場時から既にかなりのカンフーの使い手で、ラスボスはさておき、その辺の悪党が束になってかかっても歯が立たないぐらいの腕前のキャラクターです。
その後、さらに睡拳を体得していくわけですが、既に強い、というところから始まっているので、強敵に惨敗して悔しい思いをしたり、
ちょっと習ったぐらいで天狗になって、他人に喧嘩を吹っ掛けたり、等の成長前や成長中の姿は描かれません。
睡拳も体得しますが、全体的に武術の腕が上がった、というより技のバリエーションが増えた、というぐらいの成長の仕方です。
そこで、その武術の上達ぶりを見せる役割をホワン・イルンが全部担っていく事になります。
初めは、ほとんど真面目に修行に励まず、ちょっと習った程度で、悪党に戦いを挑み、こっぴどく返り討ちに合っていましまいます。
散々悔しい思いをして、心を入れ替え、修行に励み、武術の腕を確実に上げていく、という通常は主人公が経験する事をホワン・イルンが代わりに体現していきます。
よく考えると、物語の出だしもホワン・イルンの登場の方が早く、リョン・カーヤンは主人公のはずなのに負傷するシーンさえなく、
ホワン・イルンの物語に合流してくるように登場しますので、実際の主役はホワン・イルンと言えるかもしれません。
このホワン・イルンの動きがまた素晴らしく、恐らくどこかの雑技団に属しているのか、体の柔らかさが尋常ではなく、
戦いの合間に見せる軟体カンフーが、睡拳どころではないぐらいに目立っています。
しかも、ほぼ主役並みに活躍の場が何度もありますので、正直印象的にはリョン・カーヤンの存在感を圧倒するぐらいに魅力を放っています。
このホワン・イルンの素晴らしい技とリョン・カーヤンの繰り出す睡拳、そしてユエン・シャオティエンの他の作品以上の活躍(酔拳、蛇拳以外で)、
という要素が融合して、他のカンフー作品には無い魅力を放つ作品となっています。
惜しいのは、(妖怪道士)(詳しくはこちら)や(ミラクルファイター)(詳しくはこちら)等のエディ・コーがラスボスとして登場しますが、
主人公達3人が魅力的すぎて、いまいち目立たない、というか悪党ぶりが発揮出ずに、やられ役のような登場の仕方になっている点だけが少し残念な点となっています。
もう少し、ラストバトルまでに適度な極悪非道ぶり等があれば、もっとクライマックスが盛り上がったと思うのですが、どうでしょうか。
因みに、同じ監督・製作・主演のリョン・カーヤン、ホワン・イルン、エディ・コーで同時期に(thundering mantis)という作品が製作されていますが、
こちらは、内容が凄まじく、本作と同じような関係のリョン・カーヤン(蟷螂拳の使い手)とホワン・イルンが、前半は本作と同じようにコメディ系の楽しいカンフーアクションを展開しているものの、
後半、悪党であるエディ・コーに捕まり、二人とも拷問にかけられ、ホワン・イルンの方が度重なる拷問の果てに絶命し、
それを目にしたリョン・カーヤンが怒り狂いながらも、拷問は続き、頭部に何度もダメージを加えられた末に、
ついに発狂してしまい、そのままの状態で暴走、エデイ・コーを狂蟷螂拳で圧倒し、圧倒しながらそれでも攻撃を加え、
噛みつき、最終的には絶命したエディ・コーを獲物を捕らえたカマキリのように暗がりに引きづっていく、、、、
という今の時代では到底商品化できないと思われるような凄まじい内容のカンフー作品となっています。
本作と(thundering mantis)の内容の差が激しいので、どういう意図で白と黒ぐらいに違う内容の2作品を連作したのかは謎ですが、
本作は、気楽に楽しめる娯楽カンフー作品となっていますので、香港映画好きの方や、カンフー映画好きの方等、
機会がありましたら是非ご鑑賞ください。
作品情報
1979年製作 香港製作 カンフーアクション
監督 イップ・ウィンチョー
出演 リョン・カーヤン、ユエン・シャオティエン、ホワン・イルン、エディ・コー
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