おすすめ度 ★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
(第9地区)(チャッピー)のニール・プロムカンプ監督の6年ぶりの最新作は、悪魔付きホラーに仮想空間設定を融合させたサスペンスホラー!!
作品紹介
2022年2月4日公開
今回ご紹介するのは、(第9地区)で人気を博した人気監督の久しぶりの最新作です。
それでは、まずはあらすじから、
かつて大事件を起こした絶縁中の母に会うために医療施設を訪れたカーリーは、深層心理を探るために仮想現実空間から母親と再会し欲しいと頼まれる。
そこで、仮想現実空間に入ったカーリーは、母と再会し、母の身に起っていた重大な事実を知ることになる!?
ニール・プロムカンプ監督の(チャッピー)以来6年ぶりとなる監督作品です。
随分と長い期間空きましたので、久々の監督作品に期待も高まりますが、、、
実際の内容は、ちょっと変化球でありながらも基本的にはオカルトホラー作品、という割とこじんまりとした作品となっています。
かつては壮大な宇宙人との戦いや、意思を持つロボットの活躍を映画いていた勢いのある監督とは思えないほどのこじんまり感です。
これが、低予算でもメジャースタジオの枠組みに捕らわれないような尖った内容でファンは唸るけれどもちょっと一般的ではない、
というような変わり方だったら、自分の居場所を見つけた、という感じで良いのですが、なんとなく製作と脚本も担当しているのに勢いがない、
というか盛り上がりに欠けるオカルトホラーとなっています。
一応、通常のホラーの型を破りたい、という思いがあったのか、いくつかの点で通常のオカルトホラー作品の流れにあえて乗らないような展開になっていきます。
まず、物語の大筋ですが、主人公の母親がかつて自身が入院している施設で放火事件を起こして、その際に多くの死傷者を出しているので、
犯罪者として収監されている、という過去があり、それを理由に母親とは疎遠になっている、という状況から物語は始まります。
で、それとは別に夫とは既に離婚していて、その理由も夫が悪霊の存在を信じて、妄想に捕らわれている、という事で、
到底主人公には受け入れられない事ばかりを言い出すので、別れる事になった、という状況です。
という事で、二つの大きな要因によって心に傷を負った主人公が、ついに故郷に帰って来る事になります。
で、母親が入所している施設(研究施設)から連絡があり、母親が全身麻痺の状態になり、かつての忌まわしい事件を引き起こした行動理由を探りたいので、
仮想現実から母親の心に潜入し、その深層心理を探って欲しい、と依頼されます。
で、仮想現実世界で母親と再会してみると、母親が『ここに来てはいけない!早く帰りなさい!』と警告してきます。
どうも、なにかの存在が見え隠れする、、、というのが前半の流れとなっています。
前半の展開は、殺人犯の精神世界にダイブして真実をさぐる傑作サスペンス(セル)の捜査方法を仮想現実に変えただけ、
という感じですが、その展開をオカルトにつなげていく、というのはちょっとしたアイデアマン的なニール・プロムカンプ作品っぽいところです。
その仮想現実表現もあえて少しだけ古めのアドベンチャーゲームのようなCG表現になっていて、非現実と現実の合間のような空間を創り出していています。
ただ、この悪魔や霊などが登場するオカルトものの展開ですと、そのほとんどが主人公が霊の存在を確信して、周りの人々にそれが現実に存在する事を訴えても、
だいたいほとんどの人が信じてくれず、危機はそこまで迫っているのに、身近な家族や恋人でさえ信じてくれない、という展開になり、
ついに主人公の精神状態さえ危ぶまれる、という緊迫感のある状況に追い込まれていく流れが、超自然的なオカルトホラー作品には多いですが、
本作の主人公は、周りの人がどれだけ心配して忠告してくれても、絶対にそれを信じない、というか絶対に受け入れません。
とにかく、人の言う事を全く聞きません。
要するに周りの全てのキャラクターが正しい事を言っているのに主人公だけは、それを信じない、という流れで物語が進行していきますので、
ほとんどが自業自得のような展開になり、感情移入のしようがない、という状況がずっと続きます。
作品タイトルは(デモニックDEMONIC)なのに、です。
通常のオカルトホラーにしたくない、というのは伝わりますが、主人公に感情移入できなければ、当然サスペンスが盛り上がりませんので、
ただただ、他人の言う事を聞かない主人公の周りのキャラクターが犠牲になっていくのが気の毒、という感情ばかりが沸き起こってしまいます。
それと、中盤以降、それまでの設定に少し変化が加えられて、もしかするとアクションホラーに変わるのか?という意外な展開があります。
流れ的には、かつてのニール・プロムカンプ作品のようなバトル展開を融合させたオカルトバトルホラーへ突入しそうな勢いですが、
そこも、通常の予測に捕らわれたくなかったのか、期待通りにはならずに、盛り上がりそうなシーンをわざと描かずに、
その後だけを描く、という奇をてらったような描き方がされています。
で、結局こじんまりとしたオカルトホラーで終わってしまう、という枠に捕らわれないようにしようとした結果、最初から最後までこじんまりとした薄味なオカルトホラーで終わってしまっています。
という事で、一時期完全にハリウッドの売れっ子監督となっていた監督の久々の監督作品ではありますが、
ニール・プロムカンプ監督作品と言われないと分からないような雰囲気の作品ですので、ホラー好きの方等ご鑑賞されてみてはいかがでしょうか。
他の題材でまた楽しい作品が観たいですね。
作品情報
2021年製作 カナダ製作 ホラー
監督・脚本・製作 ニール・プロムカンプ
出演 カーリー・ポープ、クリス・ウィリアム・マーティン、マイケル・J・ロジャース
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