おすすめ度 ★★★☆☆☆☆☆☆☆
身体が透明になっていく病に犯された主人公が辿る孤独な運命を描いた、SF風味の(透明人間)サスペンスヒューマンドラマ!!
作品紹介
2017年8月1日公開
今回ご紹介するのは、透明人間、という題材をSFサスペンスドラマ風に描いた作品です。
それでは、まずはあらすじから、
数年前に家族の前から忽然と姿を消したボブ(エイデン・ヤング)は、離れて暮らす一人娘エバ(ジュリア・サラ・ストーン)と家族の絆を取り戻そうと故郷に帰ってくる。
しかしエバが行方不明になっていることを知ったボブは、自身の身を蝕みつつある病による苦痛に耐えながら捜索を開始するのだった!?
カナダで製作された、ちょっと変わった味わいの(透明人間)映画です。
古くは当時としては特撮が素晴らしかったユニバーサル製作の古典ホラー(透明人間)や、
ポール・バーホーべン監督で、主演のケビン・ベーコンが狂暴化し、やりたい放題暴れだすバイオレンスホラー(インビジブル)、
近年では逆に透明人間に襲われる側を主人公とし、大ヒットも記録したリー・ワネル監督のブラムハウス社製作作品(透明人間)(詳しくはこちら)等、
ホラー・サスペンスジャンルの中の一つの人気の題材となっていますが、そのほとんどが自ら望んで透明化し、
透明化した事で逆に内面の凶悪さが露呈していく、という主人公像が、王道となっていました。
そこで本作ですが、本作はDVDジャケットからは他の(透明人間)もの作品のようにホラーサスペンス的な内容をイメージしますが、
実際の内容はホラーというよりも、サスペンス系のヒューマンドラマ、といった感じで、透明化していく原因不明の奇病にかかった主人公が、
孤独と苦痛に耐えながら、それでも離れて暮らす娘のために命を懸けていく、という人間ドラマがメインの物語となっています。
ですので、恐怖描写等の盛り上がりはほとんどなく、あるのは透明化のビジュアルのインパクトぐらいとなっています。
簡単に言ってしまうと透明化に関しては、特別な病、という感じの捉え方なので、基本的には透明化して何か行動したり、等の
透明化自体が物語展開に活かされている事はほとんどなく、後半になって少し展開がある、というぐらいの扱いになっています。
透明化の部分も普段は衣類で隠しているのでほとんど映ることはありませんので、インパクトのあるビジュアルはここぞという時に解禁となります。
物語は、この透明化進行中の主人公が、離れて暮らす妻子の元に久しぶりに帰宅し、その後、娘が突然行方不明になったことで、
決死の捜索を開始する、という流れで、危なそうな精神科病院や、漢方薬店など、ちょっとアンダーグラウンドっぽい所を娘を求めて奔走する父親が描かれていきます。
ただ、その間も透明化は進行中なので、かなり苦痛と戦いながら捜索を進めていきます。
で、いよいよ娘と再会という流れになっていくのですが、その際に主人公も驚愕の事実が判明していく、という流れになりますので、
前半の展開がかなりゆっくりペースですので、後半は割とドラマチックな展開へと突入していきます。
なかなかのサスペンスフルな展開ではありますが、本作は基本をヒューマンドラマ的なサスペンスに置いていますので、
この犯罪サスペンスアクションっぽい物語を娯楽的な描写で描いていくのではなく、あくまで、じっくりゆっくりと落ち着いたテンポで描いていきます。
このテンポが独特ですので、透明人間というかなりファンタジックな内容ですが、重い難病と闘いながら必死で娘を探す父親の人間ドラマのような雰囲気に満ちています。
ホラー映画やヒーローもののような恐怖や、派手なアクションなどはなく、ただただ主人公の苦悩にスポットをあてて描写されていきます。
途中全てを理解している元妻とのやり取りや、娘との衝突なども詳細に描かれながら、なんとかギリギリ前に向いている、
という感じで重厚な人間ドラマが描かれていきます。
ただ、やはり透明人間というファンタジックな設定と重厚な人間ドラマという事で、少々不具合もあり、そもそも何故そのような病気にかかっているのか?
格闘になった時に透明化している部分は攻撃されてもスカスカ、という表現がありながらも、主人公側が攻撃する時は、透明化している体で攻撃できていたので、
その辺の設定があいまいであったり、そもそも主人公がずっと痛そうにしているけれども、どこがどのように痛むのか?が描かれないのでよくわからない、
等少々説明不足が部分が多い作品となっています。
恐らく、本作はアーノルド・シュワツェネッガー主演の娘がゾンビになってしまうゾンビドラマ(マギー)のように、
透明化そのものを完全に架空の病として描く人間ドラマ、という趣旨の作品だと思われますので、
細かい設定を納得のいくような説明を加えていくのではなく、あくまで架空の難病に苦しめられながら、
それでもなんとか家族のためにギリギリ前に向かっていく主人公を描かくという部分に注力しているのではないかと思われます。
とは言いつつ、ちょっと無目的に物語が進行しますので、飽きてしまう方もいるのではないでしょうか。
でも飽きに襲われそうな後半に、いよいよ主人公が全身をさらしますので、その辺になるとSFXマンが本業のジェフ・リドナップ監督の真骨頂という感じで、
割と見所満載となっていますので、最後までなんとか離脱せずにご鑑賞をお勧めします。
B級作品にはあまり見かけないぐらいのなかなかのインパクトなので必見です。
ただ、後半身体の3割ぐらいが透明化している状態で、娘を救出するために姿を晒すのですが、透明化しかかっている状態では、相手がびっくりする以外に効力がないので、
何故、今、脱いだ?という感じですが、それに続くクライマックスは、なかなかのヒーローもののような味のある終幕へと繋がっていきますので、
そちらも見どころとなっています。
という事で、ドB級作品かと思いきや結構重厚な人間ドラマとなっていますので、機会がありましたらご鑑賞ください。
あと、一度見たら二度と忘れない外見の主人公の娘役、ジュリア・サラ・ストーンは何とも言えない独特の魅力を放っていますので、これからも大活躍が期待できそうです。
作品情報
2016年製作 カナダ製作 SFドラマ
監督・製作・脚本 ジェフ・リドナップ
出演 エイデン・ヤング、ジュリア・サラ・ストーン、カミール・サリヴァン
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