おすすめ度 ★★★★★★☆☆☆☆
サイモン・ヤム、リーチー・ガイ、フルーツ・チャンという豪華メンバーが監督した(世にも奇妙な物語)風のオムニバスホラー!!ケリー・チャンやレオン・カーファイ等キャストも豪華!!
作品紹介
インターネット配信専用作品
今回ご紹介させていただくのは、ビッグなスター俳優とスター監督がそれぞれ恐怖物語を監督した香港製作のホラーオムニバス作品です。
日本では配信専用でしか視聴できない作品ですが、香港では大ヒットした作品で、好評につきシリーズ化もされました。
それぞれが30分から40分ほどの短い物語ではありますが、各物語を担当している監督とキャストが物凄く豪華で、
良くこれだけのメンツが揃ったものだ、というぐらいに凄いメンバーが揃っています。
第一話 盗品《赃物》(STOLEN GOODS)
第一話目の監督はまさかのサイモン・ヤムが初監督と主演を兼任した作品で、かなり精神的におかしくなっている主人公を自ら体当たりで演じています。
どこに勤務しても揉め事ばかりで、長続きしない労働者が、職を転々とした果てに行き着いた、というか思いついたのは、
墓場に安置されている遺骨を盗んで、人質に取って、家族に脅迫電話を掛ける、というあまりに罰当たりで、
まさに外道のような稼ぎ方、という結構内容自体が物凄く挑戦的な物語となっています。
他人の墓を暴いて、遺骨を持ち帰るだけでも相当ですが、脅迫電話を掛けて上手くいかない時は、さっさと処分する、
という罰当たりな上に、処分の方法もトンデモない方法ですので、ちょっと観ていていやーな気分になってしまうかもしれません。
勿論、そこまでやってしまう主人公なので、後半その罰は倍返しに受けることになるのですが、登場する霊が、
一様に白塗り(文化の違いですね。白っぽい霊という感じではなく、恐らく霊とは顔面を白く塗っているもの、という認識の違いかと思われます)で、
その中の一人がジョニー・トー作品でお馴染みのラム・シュー(しかも、ずっと何かを食べ続ける、という食べ過ぎで死んだっぽい霊)だったりするので、
作品自体は罰当たりな映像を観てしまっているという怖さはありますが、肝心なところで、なんとなく現実に戻ってしまう、という作品となっています。
ただ、この内容の作品を監督・主演したサイモン・ヤムのチャレンジ精神は凄いのではないでしょうか。
信心深い香港で、この内容はちょっとNGを出してしまう製作者も結構いるのではないでしょうか。
サイモン・ヤム、ラム・シュー以外にも(PTU)等のマギー・シュウや(カンフーハッスル)(詳しくはこちら)のユン・チウ等が重要な役柄で登場しますので、ジョニー・トー作品の常連キャストが3人も登場するのも見どころとなっています。
あと、物語が進むにつれて、中盤のシーンと繋がる展開も終わりまで観て初めて分かる事実などがあり、最後まで飽きさせない内容となっています。
第二話 握った手《放手》(A WOLD IN THE PALM)
二話目の監督と脚本を担当したのはまさかのリー・チーガイ監督です。
リー・チーガイ監督といえば、トニー・レオン、アニタ・ユン、レオン・カーファイが共演し大ヒットした(月夜の願い)や、
金城武、ケリー・チャンが共演し大ヒットした(世界の涯てに)、
日本の大ベストセラーが原作で、日本と香港合作で製作され金城武が主演した(不夜城)、
等、日本でも香港でも大ヒットした作品を世に送り出しているヒットメーカーです。
そんなリー・チーガイ監督が、レオン・カーファイとケリー・チャンという自身の監督作品で起用したキャストと再び組んで製作したのが本作になります。
小さな占い店を経営するレオン・カーファイは、実は霊の存在を見る事ができる能力があり、その事を理由に妻子と上手くいかなくなって別居している、
という状況で、自身は霊が見えてしまう事に嫌気がさしていて、できれば見たくない、という日常を送っています。
ただ、占い師ですので、霊的な事柄を否定しているわけではなく、その力を相談者の悩みなどを聞いて、できるだけ良い方向に向かっていけるようにアドバイスする、
という形で、占い師として占い店を経営しています。
ただ、そんなお店も、もう閉店してしまって、霊的な事柄とは無関係の高校教師の職へと転職を決意している、という状況です。
そんな閉店間際の占い店にある若い夫婦が相談にやってくるところから本題に入っていきます。
夫婦を占ってみると、どうも良くないものが見え、何故か謎の女子高生も登場する、という先行き不安な相談になっています。
で、どうも営業最終日なのに、当日だけでは依頼を解決することができない、という事で、同じ建物に入っている別の占い店を経営するケリー・チャンのお店に引き継ぎをお願いする、
という感じで、この夫婦が遭遇している奇怪な事件を占い師コンビが解決していく、という展開になっていきます。
霊に関する物語に関してはレスリー・チャン主演の(カルマ)や、Jホラー作品のように悲しい女子高生の悲恋話、という割とオーソドックスな物語ですが、
このビッグスター二人のやんわりとしたコミカルなキャラクターが凄く心地よく、多くの大ヒット作品で多くの役柄を演じてきた二人が、
信頼のおける監督と組んだからこそ醸し出せる絶妙な雰囲気となっていて、作品世界の魅力を高めています。
さらに、悲劇の高校生役で(ラン・アェウイ香港脱出)(詳しくはこちら)等のチェリー・ナガンが、フレッシュな魅力を振りまいているのも魅力となっています。
第三話 啓蟄けいちつ《惊蛰》(JING ZHE)
三話目の物語は脚本・監督を(メイド・イン・ホンコン)や、(無敵のドラゴン)等のフルーツ・チャンが監督しています。
主演を演じるのは70年代から活躍し続けている伝説の女優スーザン・ショウです。
日本では若い時代の作品は未公開の作品がほとんどですが、近年になって(燃えよじじいドラゴン)でのテディ・ロビンの想い人役や、
(霊幻道士 こちらキョンシー退治局)でのおばあちゃん役等、年齢を重ねてからもさらに活躍の幅を広げ続けています。
そんなスーザン・ショウが、本作で演じるのは打小人(ダーシウヤン)の排神婆(ハイサンポー)、日本で言うと悪さをする小悪魔を払う、厄払い師(のおばちゃん)といった感じでしょうか。
この打小人は毎年3月5日の時期に合わせて行われている厄払いの儀式で、その時期には全国から打小人の聖地とされるオーゲン橋地区に多くの排神婆が集まってくるそうです。
で、その時期には様々な悩みを持つ人々もその地区に集まってきて、厄払いをお願いしていく、という状態になります。
本作は、そんないろんな悩みを持つ依頼者が現れます。
で、この打小人、その実際の儀式の方法は、小人(小悪魔)と見立てたイラストを描いた紙を用意して、独特のリズムで文言を発しながら、使い古しの靴を用いて、
リズム良くこの用紙をパン、パンと叩いていく、というもので、これによって悪さをしようとしてる小人をやっつけて厄払いをするという儀式になっています。
ただ、本来は勿論、厄払いが目的ではありますが、この自分の周りで悪さをする小悪魔という存在を、そのまま実生活の自分にとっての邪魔者に見立てて厄払いをする、
といういわば、邪魔者を追い払うためにその人物に呪いをかける、という取り方もできるような、儀式の意味合いもあるようです。
ですので、他人の依頼はあまり知りたくないし、依頼している側もあまたり他人に知られたくないようなちょっと秘密めいた儀式という一面も現在ではあるようです。
(ちょっとサモ・ハン監督の鬼打鬼とかを思い出してしまいますね、、、)
という事ですので、他人に恨みを持つ色んな依頼者が登場します。
短い作品なので、依頼者の人となりの詳細は描かれませんが、夫の愛人に恨みを持ち、その愛人の写真を持ち込んで写真を直接、もっと強い力で叩いてくれ、
と強く要求してくる主婦や、仲間内の揉め事で目障りなライバルをどうにかしたい裏社会のボス、
そしてどう見ても顔色が悪く、何か問題事を抱えてそうな若い女性、という感じで細かい作品なので、細かい詳細までは描かれませんが、
それぞれが何か問題を抱えた状態で依頼にやってきます。
で、この顔色の悪い女性が依頼にやってきた理由が、スーザン・ショウの家族にまつわる事になっていて、実は、、、、
という感じでクライマックスに向けてドラマが展開していく構成になっています。
なかなか涙腺の緩む物語です。
その顔色の悪い女性を演じているのはセクシーな魅力で大人気を獲得した後、ルイス・クー主演の(Sの嵐)等でイメージを一新して新たな魅力を獲得しているダダ・チャンで、
本作の幸薄系のヒロインは、切ない世界観を寄り深めていっています。
また、(花火降る夏)等でフルーツ・チャン作品ではお馴染みのトニー・ホーも警察官役で出演しているのもファンには嬉しい所となっています。
という感じで、三つの物語がどれも魅力を放つ、見逃せない秀作ホラーオムニバスとなっていますので、香港映画好きの方等、機会がありましたら是非ご鑑賞ください。
特に三話目の打小人についての物語は、ここまで詳しく打小人について描かれている香港映画は他にはありませんので、貴重な作品ではないでしょうか。
それぞれが、違うタイプの怖さと面白さがあって、どれも長編で観たくなるような秀作となっていますよ。
作品情報
2013年製作 香港製作 オムニバスホラー
監督 サイモン・ヤム、リーチー・ガイ、フルーツ・チャン 原作 リリアン・リー
出演 サイモン・ヤム、マギー・シュウ、ユン・チウ、ラム・シュー、ケリー・チャン、レオン・カーファイ、チェリー・ナガン
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