カンフー映画としてのお薦め度 ★★★★★★★★☆☆
イップマンの師匠と大師匠の修行の日々を描いたサモ・ハンキンポー監督・出演、詠春拳映画第1弾!!
作品情報
1978年製作 香港製作 カンフーアクション
監督・出演・武術指導 サモ・ハンキンポー 製作 レイモンド・チョウ 撮影 リッキー・ラウ
音楽 フランキー・チャン
出演 カサノヴァ・ウォン、レオン・カーヤン、フォン・ハックオン、タイガー・ヤン、リー・ホイサン、ラウ・カーウィン、ディーン・セキ、ラム・チェンイン
スタッフ・キャスト
監督・出演のサモ・ハンキンポーは多くのアクション作品でスタントマンとして経験を積み、1977年製作(少林寺怒りの鉄拳)で監督・主演デビューする。その後多くのカンフー映画の主演作、出演作、監督作を発表する。1982年製作の監督・主演作(ピックポケット!)以降は時代劇カンフー作品よりも現代劇アクション作品を精力的に発表していく。1983年製作の(五福星)以降はジャッキー・チェン、ユン・ピョウと共にゴールデントリオとして人気を博した。その後は(霊幻道士)シリーズのプロデュースなどでキョンシーブームを作ったり、1998年には米テレビシリーズ(LA大捜査線マーシャルロー)でハリウッドでも広く活躍する。
主演のカサノヴァ・ウォンは韓国出身のテコンドーファイターでサモ・ハンに見いだされ1977年製作(必殺!少林寺武芸帳)で香港映画デビュー。その後、サモ・ハン監督・主演(少林寺怒りの鉄拳)の端役を経て、本作で主演デビューを果たす。その後は多くのカンフー作品で主演・出演作品を連発していく。
師匠リョン・チャン役のレオン・カーヤンは香港映画界の映画製作会社最大手ショウブラザース社の作品でスタントマン、端役として活躍した後、サモ・ハンキンポー監督・主演(燃えよデブゴン)の悪役で強い印象を残す。その後、本作、やユン・ピョウ主演(モンキーフィスト猿拳)、1979年製作(燃えよデブゴン豚だカップル拳)、1980年製作(燃えよデブゴン地獄の危機一髪)と連続してサモ・ハン作品に出演する。80年代からはチャウシンチー作品の監督・出演など俳優業以外も精力的にこなしていった。
あらすじ
両替屋で働くワー(カサノヴァ・ウォン)はある日、取引先の街の有力者が町長暗殺を企てている事実を知る。
これを通報しようとしたのだが、逆に一味に命を狙われる。
暗殺者一味に襲われたワーは命からがら逃げだし、親友デブ春(サモ・ハンキンポー)に救われる。
デブ春はワーを匿うために、カンフーの師匠であり高名な医者でもあるリョン・チャンのところに身を寄せる。
ワーを匿った事で自身も一味に命を狙われることになったチャンだったが、ワーのひた向きさに心を打たれ、弟子入りを認め、必殺の詠春拳を伝授するのだった。
感想
サモ・ハンキンポーのイップマンにつながる詠春拳映画第1弾です。
因みに第2弾は3年後に製作される(ユン・ピョウinドラ息子カンフー)でそちらは、本作で登場する師匠リョン・チャンの若き日々を、同じく若さあふれるユン・ピョウが元気に演じている傑作です。
本作の主人公ガウ・チン・ワー(両替屋ワー)が後にイップマンの師匠となりますので、時代順としては(ドラ息子カンフー)→(友情拳)→(イップマン)シリーズと繋がっていくということになります。
視野を広くすると、(イップマン)シリーズも1作目と2作目はサモ・ハンがアクション指導していますので、詠春拳を描くエキスパート、サモ・ハンが全て絡んでいる壮大な一つのシリーズととらえる事もできます。
そんな深く描きがいのある詠春拳ですが、基本的には女性でも学べる動きの小さな武術で、見栄えのカッコいい大きな構えをとったり、打点の高い蹴りを繰り出したり、など映画向きとされる派手な要素は本来はあまりありません。
ドニーが(イップマン)シリーズで見せたアクションも、他のドニー主演作品で見られるようなダイナミックな構えをするアクションはほとんどなく、常に最小の動きで最大限の効果を引き出すような控えめで瞬発力のあるアクション中心でした。
それが詠春拳の基本なのでそういった描き方になるのは当然なのですが、その点でいうと本作では少し異色の詠春拳の表現となっています。
本作は主人公を演じるカサノヴァ・ウォンが、テコンドーの達人でその技の魅力によって抜擢されているので、持ち味を作品に生かすためにはテコンドーの売りである打点の高い蹴り技は、おそらく良さを表現するのにたとえ手技を中心とした詠春拳であっても避けて通れなかったのではないかと思います。
それをクリアする方法として、これはあくまで個人的な推測ですが、詠春拳を習う前に主人公ワーは既にある程度足技を多く使う他の流派のカンフーを習得している、という設定にしたのではないかと思います。
他の作品でもそういった流れの作品はありますが、それを踏まえても本作の前半で見せるワーの技はすでに結構悪党一味と互角に渡り合うぐらいのレベルに達しているように見えます。
正直、一人で頑張って修行してもなんとかなるのでは?
と、思えるぐらいビシッと決まっているアクションでした。
既にある程度強い、という流れにしてしまうと修行前と修行後で強くなったという変化が薄まってしまい、その結果、敵を倒した時の達成感も薄れてしまうので諸刃の剣、といった感じの設定ではあります。
しかし、カサノヴァ・ウォンの良さを最大限発揮するにはあの素晴らしい蹴り技は必要不可欠ですので、そこはやむを得ないことだったのかもしれません。
現に詠春拳映画でありながら手技だけでなく足技も多く繰り出す、という設定を選択している事で、物語後半、悪党一味の蹴り技の名手、タイガー・ヤンとのハイキックを連発する足技合戦など多くの見どころが生まれました。
というわけで詠春拳アクションとしては少々異色で自由度の高いアクションではありますが、アクション自体は流石にカンフースター総出演ぐらいに実力者が揃っているので見ていて飽きる事がありません。
前半の悪党一味(タイガー・ヤン、リー・ホイサン)とカサノヴァ・ウォンとのバトル、
中盤のゲストとして急に登場して猿拳を披露して目立ちまくって惜しくも散っていくラウ・カーウィンの一瞬の大活躍、
中盤の詠春拳を細かく説明した奇抜で見どころ満載の修行シーン、
その後展開される師匠リョン・チャンと悪党一味との大立ち回り、
後半に迎える3対3で敵の技の特徴を研究して準備したにも関わらず、いざ戦いに挑むと、挑む相手をそれぞれ間違えていた、という謎の展開が逆に楽しい変則トリプルタッグマッチのような展開になる異色の混合バトル、
後半突然説明なく乱入してくる二刀流大刀使いの二人組高齢者との高速バトル、
そしてラスボス、フォン・ハックオンが繰り出す尋常じゃなく怪しすぎる蟷螂拳との大バトル(バトル中ずっと流れている不安感を煽るBGMが気になってしょうがないです。)、
と、カンフーアクションシーンはどれもサモ・ハンらしい名シーンばかり多数あります。
そんな本作ですが、全体的にはちょっと暗めのストーリーでサモ・ハンとディーン・セキが登場するパートのみが妙に浮き上がっていたり、
楽しく一緒に修行していた兄弟子の末路やラストバトルに挑んだ姉弟子の扱いなど、
まだまだサモ・ハン作品として色々模索中の時期だったように感じますが、後の傑作群に繋がる重要な作品であることは間違いありません。
(イップマン)シリーズで詠春拳アクションや、カンフーアクションに興味を持たれた方は必見の作品となっていますので是非(ユン・ピョウinドラ息子カンフー)と合わせてご戯鑑賞ください。
因みに、邦題タイトルが(燃えよデブゴン10友情拳)となっていますが、それは1978年製作の主演作(燃えよデブゴン)が日本劇場公開とテレビ放映時に大ヒットしたため、それにあやかって、以降に紹介される作品のほとんどのタイトルに【燃えよデブゴン】とシリーズ作品のようにつけられたのが原因で、実際は全くの無関係なので本作までに9作見ないといけないわけではありません。
スティーヴン・セガールで言うところの【沈黙】シリーズのような扱いです。
一応、【燃えよデブゴン】とタイトルにつけられた作品群を製作年代順に見ていくと、
1978年製作(燃えよデブゴン)
1978年製作(燃えよデブゴン3)ビデオ題(燃えよデブゴン カエル拳対カニ拳)
1978年製作(燃えよデブゴン出世拳)ビデオ題(デブゴンの太閤記)
1978年製作(燃えよデブゴン10友情拳)
1979年製作(燃えよデブゴン9)ビデオ題(サモ・ハンキンポーのプロジェクトD)
1979年製作(燃えよデブゴン6)ビデオ題(燃えよデブゴン豚だカップル拳)
1979年製作(燃えよデブゴン7鉄の復讐拳)ビデオ題(燃えよデブゴン7)
1979年製作(燃えよデブゴン 地獄の危機一髪)ビデオ題(斗え!デブゴン)
1979年製作(燃えよデブゴン2)ビデオ題(燃えよデブゴン正義への招待拳)
1979年製作(燃えよ!デブゴンお助け拳)
1979年製作(燃えよデブゴン8クンフー・ゴースト・バスターズ)ビデオ題(妖術秘伝鬼打鬼)
1979年製作(燃えよデブゴン5)劇場公開題(モンキーフィスト猿拳)
1982年製作(燃えよデブゴン4ピックポケット!)劇場公開題(ピックポケット!)
となっております。
そしてなんと、(燃えよデブゴン)オリジナルのリメイク作がドニー・イェン主演で公開されますので、(イップマン)からの流れとして今のうちにサモ・ハン主演作のおさらい鑑賞などしてみるのはいかがでしょうか。
本作で登場する師匠リョン・チャンの若き日々を描いた(ユン・ピョウinドラ息子カンフー)はこちら
本作の主人公ワーの弟子イップマンが活躍する(イップマン)シリーズはこちら
本作の主人公ワーの弟子イップマンが活躍する(イップマン)シリーズ最新作(イップマン完結)はこちら
本作の師匠リョン・チャンの孫弟子チョン・ティン・チーが活躍する(イップマン外伝マスターZ)はこちら
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