カンフー映画としてのおすすめ度 ★★★☆☆☆☆☆☆☆
数シーンを撮影したのみで撮影離脱してしまったジャッキーの未完成フィルムを他作品のNGフィルムとそっくりさんの追加撮影で強引に完成させたいわくつき作品!!
作品紹介
1986年3月1日公開
ビデオ題 新クレージーモンキー大笑拳
今回ご紹介するのは、ジャッキー・チェンが数シーン撮影して離脱してしまったために、そっくりさんで追加撮影したいわくつき作品です。
それでは、まずはあらすじから、
末世流の極悪党首天鬼と地鬼のコンビは、六合八卦拳一派を根絶やしにするために師範チン兄弟抹殺を計るが、
チン兄弟はなんとかそれぞれの幼い息子を連れて逃げ延びる事に成功する。
時は流れ、青年へと成長した二人の息子だったが、毎日ギャンブルに明け暮れてカンフーの修行を怠っていた。
そんな中、チン兄弟の消息を掴んだ末世流は、二人を抹殺するために自ら乗り出して行く!?
ジャッキー・チェン出演のいわくつき作品です。
ジャッキー・チェンが出演していた初期の(蛇鶴八拳)や(龍拳)、(成龍拳)等のシリアス路線カンフー作品は、
本国では残念ながら大ヒットには恵まれず、ジャッキーは製作者のロー・ウェイと10本契約は結んでいたものの、なかなか思うように売れない状況が続いていました。
そういう状況が続く中、ジャッキー・チェン売り出しを諦めかけていたロー・ウェイは専属契約を結んでいたジャッキーを他の製作者に貸し出す形で、2本の作品の制作を許可しました。
それが、ジャッキーを一躍大スターに押し上げた(スネーキーモンキー蛇拳)と(ドランクモンキー酔拳)でした。
その限定的に貸し出されて製作された2作で一挙にジャッキーを取り巻く状況は一変し、主演作は軒並み大ヒットとなっていくのですが、
当然下積み時代からジャッキーを見出し、主演俳優として売り出したロー・ウェイが、ジャッキーを黙って手放すはずもなく、
(蛇拳)、(酔拳)でスターになった後も本作の主演俳優としてジャッキーをキャスティングしましたが、
ジャッキー自身は、その頃既に大スターだったブルース・リーなども在籍するゴールデンハーベスト社への移籍も決まっていましたので、
契約問題でこじれてしまい、本作の数シーンを撮影した段階で渡米し、アメリカ進出第1弾となる(バトルクリークブロー)や、
監督主演の大ヒット作(ヤングマスター師弟出馬)の撮影へと飛び出してしまう、という状況になりました。
これに憤慨したロー・ウェイは、裏社会の人間を雇ってジャッキーに追い込みをかける、という物騒な事件に発展してしまい、
まるで黒社会もののドラマのような一触即発な状況に、命さえ危ぶまれるようなどうにも収拾のつかない事態となってしまいました。
で、そんな一触触発の状況の中、ある男気のある男が登場します。
(片腕ドラゴン)、や(ドラゴン修行房)(セブン・ウォリアーズ戦神灘)(詳しくはこちら)などの主演作で知られる、裏社会に明るいジミー・ウォングでした。
ジミーさんの取り計らいで、なんとか双方の言い分を聞き、事態を収拾して事なきを得る、という形で事件はやっと収束する事ができました。
すごいですね、ジミーさん。
ただ、事件は無事収束しましたが、この時の見返りで、ちゃっかりと自身が製作する作品にジャッキーに有無を言わせずに出演させる、
という契約まで結んでいた(ドラゴン特攻隊と炎の大捜査線)のは流石に商売上手な香港映画界、という感じですね。
正直、両作品共にジャッキー本来の良さの出ている作品とは言い難いですが、大スターとしてよりも、どちらかというと一人の出演者として扱われる異質な世界観が、
それはそれで、独特の味となっていたりもしますので、本来とは違う楽しみ方のできる作品となっています。
ただ、このジャッキー二重契約事件自体はジミーさんの登場で、収束しましたが、骨の髄までむしゃぶり尽くしたいロー・ウェイは、途中まで撮影していた未完成のフィルムを、
そっくりさんによる追加撮影とジャッキーの他の作品のNGシーンなどを切り貼りして、
強引に1本の作品として製作し直し、ジャッキーに無断で劇場公開してしまうという暴挙にでます。
それが、本作(ジャッキー・チェンの醒拳)です。
そんな経緯で香港で公開された本作は、ジャッキー人気の高ぶる日本でも劇場公開されます。
86年の日本劇場公開当時は、まさかの吹き替え版のみの劇場公開で、同時上映にそれまでのジャッキー作品の総集編を併映する、
という変則的な公開形態でのロードショーとなりました。
しかもビデオ発売時にはタイトルが(新クレージーモンキー大笑拳)という物凄いタイトルでリリースされる、
という扱いもなかなか異質な作品となっています。
これは、結構な割合で(クレージーモンキー笑拳)のNGシーンが使われているので、後半ほぼ笑拳の総集編みたいになるのと、
英語題名の(FEARLES HYENA2)からイメージして付けられたタイトルかと思われます。
勿論まったく続編ではない、無関係の作品ですが、、、。
ただ、(醒拳)自体が、(クレージーモンキー笑拳)に続くジャッキーが自身で製作側も担当する第2弾的な扱いだったようで、
出演者もジェームス・ティエン等同じキャストが登場するので、完成してたら、結構同じ雰囲気を持った作品になっていたのかもしれません。
ジャッキー本人には初めから完成させるつもりはなかったのかもしれませんが、、。
そんな本作ですが、一応、継ぎはぎ作品ではあるものの、ストーリーはちゃんとあります。
末世流というカンフーの流派の極悪党首天鬼と地鬼のコンビは、六合八卦拳一派を根絶やしにするために師範チン兄弟抹殺を計るが、
なんとか幼い息子を連れて逃げ延る事に成功、そのまま人里離れた山奥で隠れるように暮らします。
そこから10年以上の年月が経ち、二人の息子たちは健康に育つもカンフーの修行を怠けて喧嘩に明け暮れる毎日を送っている中、
いよいよ末世流の魔の手が伸びる、という大筋になっています。
簡単に言ってしまうと物語的にには(少林寺への道)と大体同じ流れで、要するに二人の親が悪漢に抹殺されてしまい、
その息子達が仇を撃つ、というカンフー映画の王道展開となる作品です。
実際ジャッキーが出演しているシーンは多くはありませんので、そのほとんどがそっくりさんと、コンビを組むことになるワイ・ティンチー、
コメディリリーフで登場するお調子者、ハン・クオッツォイが活躍するのですが、やはりその継ぎはぎ感が半端なく、
やたらと衣装の変わる統一感のないジャッキーなども含めて、かなりひいき目に見ても総集編にしか見えないような出来栄えとなっています。
ただ、ワイ・ティンチーとそっくりさんの動き自体は結構機敏ですので、最近のワイヤーで動かされているだけの中国武侠作品などよりは数段楽しめるのではないでしょうか。
勿論アクション面だけの話ですが、、、。
個人的には如何わしくて、どうしようもない作品ではあるものの、その異質な雰囲気とアクション自体は楽しめますので、
数年ごとになんとなく観てしまう、嫌いになれない独特の魅力のある作品になっています。
という事で、邦題タイトルにジャッキーの名前がいつの間にか入っていて、入れてしまっても良いのかどうかも怪しい作品ではありますが、
本作でしか見れないジャッキー映像でもありますので、カンフー映画好きの方や、香港映画好きの方等ご鑑賞されてみてはいかがでしょうか。
世の中には色んな作品が存在しますね、、。
因みに原題がサモ・ハンキンポー、ルイス・ファン主演の(ファイターズレガシー)と同名タイトルですが、勿論本作とは全く無関係です。
作品情報
1983年製作 香港製作 カンフーアクション
監督 チェン・ツァン 製作総指揮 ロー・ウェイ 製作 スー・リーホア
出演 ジャッキー・チェン、ワイ・ティンチー、ハン・クォツチョイ、ジャームス・ティエン、ヤム・サイクン、ディーン・セキ、クァン・ユン・ムン
その他のジャッキー・チェン出演作品
前半ファミリーコメディ、後半号泣展開な武侠ファンタジックストーリー(ナイト・オブ・シャドー魔法拳)はこちら
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