カンフー映画としてのお薦め度 ★★★☆☆☆☆☆☆☆
子役出身カンフースター、シェー・ミャオ主演、実力派グ・シャンウェイ共演の正統少林寺カンフーアクション！！
作品紹介
日本劇場未公開
今回ご紹介するのは、子役出身カンフースター、シェー・ミャオ主演による正統派の少林寺カンフーアクション作品です。
それでは、まずはあらすじから、
中国に攻め入り、各地で暴虐の限りを尽くしていた倭寇を食い止めるため、朝廷より、各地の砦を守る兵士の武力向上のために、
武術の指導者としての任務に就くように、少林寺に通達が入った。
その使命のために選抜されたのはいずれも武術の腕に秀でた十八人の僧侶で、各地の民を救うために、砦の要所に向けて出発するのだった！？
ジェット・リー主演の（D＆D完全黙秘）や、（新少林寺伝説）で親子カンフーを披露していたシェー・ミャオ君が青年カンフースターとなって帰ってきました。
近年は（西遊記孫悟空VS7人の蜘蛛女）（詳しくはこちら）や、（少林寺阿羅漢VS鬼神羅刹）（詳しくはこちら）などで、イケメンカンフースターとして人気急上昇中ですが、
本作では、武僧兵でありながらも、殺生は決して行わない、という信念の元、仏に仕える信仰心と、暴虐の限りを尽くす侵略者への怒りとの間で揺れ動く僧侶を、繊細に演じています。
兵士の武力を向上させるための指導者として組織された少林拳のエリート部隊の18人、という設定ですので、非暴力というのはちょっと無理がありますが、
それでも殺生だけはなんとか避けたい、という微妙な心情を、殺生する気満々な同僚と対比させることで、
寄り、揺れ動く心情を浮き彫りにしていきます。
その血気盛んな武僧を演じるのは、（クリミナルターゲット）、（ムーラン最後の戦い）、など近年の中国アクション作品で大活躍中のアクションスター、グ・シャンウェイです。
基本的に非暴力主義のシェー・ミャオと事あるごとに真っ向から意見が対立する、武闘派寄りの僧侶役です。
過去に家族を殺されて、そもそも復讐のために少林寺に入門し、そんな自分自身を常に罪深い存在だと認識している、ある意味目的を持って武術を習得した筋の通った存在です。
個人的には、このグ・シャンウェイのキャラクターが直線的で感情移入し易く、アクションも寄り魅力的に映りました。
それでも、復讐物語として、復讐街道を突っ走ってしまうと、僧侶が主役の物語の意味がなくなってしまうので、あくまでグ・シャンウェイは、
仏の道を描くための、シェー・ミャオとの対比のキャラクターとしての登場で、基本的には慈悲の心を描いた作品となっています。
そうは言っても、カンフー映画ですので、最終的には、大バトルへと発展していきますが、、。
で、少林寺十八羅漢が戦いを挑むのが、海賊行為を繰り返していた倭寇、つまり日本人です。
本作では倭寇という海賊よりも、奇妙で野蛮な日本人武士たち、というイメージですが、やはり非道の限りを尽くす悪党として描かれています。
一応、作品上は、史実の映画化で、この少林寺僧たちの戦いをきっかけにして、各地で抵抗勢力が立ち上がり、日本人を撃退していった、
というナレーションが入りますが、どこまでが史実に忠実なのかは、はっきりしません。
一見すると物凄く、小さい規模の戦いに見える（少林寺側18人に対して倭寇側は100人足らずぐらい）ので、あくまで細かいリアル感は排除して、
少林寺僧の英雄的な活躍を描く事だけに主眼を置いた作品、といえるのではないでしょうか。
そんなちょっとこじんまりとした戦いですが、本作では、（少林寺 阿羅漢VS鬼神羅刹）や（西遊記 孫悟空VS7人の蜘蛛女）では、あまり堪能できなかったシェー・ミャオの少林寺アクションが堪能できる作品となっています。
キレがあり、柔軟なアクションが満載ではありますが、それでも最近の中国作品にありがちな、カット割を繰り返すアクション演出が多いため、
せっかくの超絶アクションが、ブツ切りになってしまいます。
アクションのできないキャストがアクションができているようにカットを割るのは分かりますが、実際に動けるキャストでそれをやってしまうと、
ただただ素晴らしいアクションのリズムが崩れてしまって、観たい角度でアクションがしっかり観れない、という逆効果になってしまいますので、
結果的にあまり動きが良いとは言えない他のキャストのアクションとイメージ的にそれほど違いはない、という残念な印象が残ってしまいます。
この辺は、今後こう言った系列の作品では改善して欲しいところですが、どうでしょうか。
カットを複雑にした方が、カッコ良く映るときもあるので、難しいところですが、、。
それでも、本作は、最近の中国系の作品で良くあるあまり動けないイケメンキャストが出演しているような作品ではなく、
本当に動ける実力派が出演している、ということもあり、他の作品に比べれば、かなりアクションを堪能できる作品にはなっています。
そのアクション自体は、役柄上、比較的精神的に迷っていたり、抑えていたりするシーンの多いシェー・ミャオよりも、
直情的な感情が、アクションにそのまま表れているグ・シャンウェイの方が、寄りアクションも印象に残っていたように感じましたが、それでもやはりカット割りの繰り返しが多かったようには感じました。
というような感じで、アクション自体は昔の香港カンフー映画に比べると、流石に迫力は劣りますが、それでも、十分に少林寺カンフー映画として見せ所のある作品となっています。
今回の敵は倭寇、という事で、例によって、トンデモ日本人が多数登場し、非道の限りを尽くしますが、流石に、村人の、ドロッとした血がかかったリンゴを、美味そうに口にするようなシーンは、やり過ぎではないでしょうか。
あと、少林寺修行僧ものの、お約束として、個性的な修行仲間（太っちょ、年少、復讐心丸出しのグ・シャンウェイ）が、登場しますが、
それぞれのエピソードが、イマイチ薄く、それほど物語上で活躍できていないのも、ちょっと勿体ないところです。
皮肉屋の兵士の生き残りと、後半一緒に戦う事になりますが、正直、その兵士のエピソードを丸ごと外してでも、少林僧たちのエピソードがもっと入っていれば、
少林寺映画としての魅力も高まり、ラストの壮絶な戦いも、寄り感情移入できたと思うのですが、どうでしょうか。
という事で、ちょっとこじんまりとした印象の作品ではありますが、シェー・ミャオとグ・シャンウェイの超絶アクションは堪能できる作品となっていますので、
カンフー映画好きの方、香港映画好きの方などご鑑賞されてみてはいかがでしょうか。
少林寺映画も製作本数が少なくなってしまったので、貴重な作品ですよ。
作品情報
2019年製作 中国製作 カンフーアクション
監督 ジャン・ジュアリン、リー・シージェ
出演 シェー・ミャオ、グ・シャンウェイ
その他の少林寺カンフー作品
少林寺焼き討ち事件を真っ向から描いたカーター・ワン主演作（少林寺炎上）はこちら
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