お薦め度 ★★★★★☆☆☆☆☆
ライドシェア(相乗り)システムの運転手がSNSのフォロワー数を上げるために、次々に殺人を繰り返す、SNSの恐怖と不条理を描いたサイコスリラー!!
作品紹介
2021年4月23公開
今回ご紹介するのは、うだつの上がらないSNS動画配信者が、フォロわー数を上げるために殺人動画を投稿するPOVによるサイコサスペンスです。
それでは、まずはあらすじから、
うだつのあがらないライドシェアドライバー、カート(ジョー・キーリー)は、自身で行っているSNS動画配信のフォロワー数の少なさに悩んでいた。
ある日、フォロワー数増加の一発逆転を狙い、(レッスン)と題した動画を投稿し始める。
それは、自身の運営するライドシェアの乗客を手にかけ、その模様を生動画配信する、というものだった。
決行の日、手あたりしだいに殺人を繰り返すカートだったが、視聴者からは偽装を疑われ、フォロワー数は思ったように伸びなかった。
それでも、カートの強行はエスカレートし、ついにフォロワー数を多数抱えるコメディアン、ジェシー(サシーア・ザメイタ)の殺害を実行に移す!?
日本にはあまり馴染みのないシェアライド(相乗り)ドライバーが自身のSNS動画のフォロワー数を上げるために、車内で殺人を犯す映像を生配信していく、というサイコサスペンス作品です。
勿論、撮影方法はPOV形式で、実際にスマホやgoproなどを使用して撮影が行われたようです。
通常のPOV作品ですと、その欠点として、リアル感を出すために、前半はカメラを回している人々の周りの人物紹介や普段の生活を紹介されるような、起伏のない展開が続く作品が多いため、
後半に盛り上がるまでの時間が非常に長く感じてしまいます。
しかし、本作の場合は、主人公はすでにサイコな状態で登場し、しかも基本的には自撮りなので、誰かと一緒に恐怖動画を撮影している、という状況とは異なります。
ですので、なんかヤバそうな奴が、撮影している動画をずっと見続けている、という見てはいけないものを見てしまっているという背徳感と興味本位を非常に掻き立てられるようになっています。
しかも主人公自身の外見が一見普通の青年のような雰囲気を持っていますので、見るからにサイコな感じで嫌悪感を抱かせるような雰囲気は全くありません。
この辺のキャスティングとキャラクター設定が絶妙のバランスになっています。
この絶妙なバランス感のために、サイコな殺人鬼なのに、いつの間にかギリギリ感情移入してしまうようになっているために、見れば見るほど、興味が沸いてくるようになっています。
その絶妙なバランスの主人公を演じるのは、大ヒットテレビシリーズ(ストレンジャーシングス未知の世界)のスティーブ役でお馴染みのジョー・キーリーで、
一見普通の青年に見えながらも、だんだんとサイコが暴走していく過程を細かく表現していて、サイコなのに、なんとなく感情移入させてしまう、という絶妙な名演技を披露しています。
お父さん役には(スクリーム)シリーズや(スパイダーパニック)などホラー系の作品でも人気のデヴィッド・アークェットが演じ、
犠牲になるパーティピープルの内の一人を(シンクセンス)、テレビシリーズ(the OC)や、近年のホラー作品では(マーダードライブ)(詳しくはこちら)などに出演していた、ミーシャ・バートンなど、
キャスト面でも他のPOV作品ではあえて避けている有名スターを意図的にキャスティングしています。
監督のインタビュー曰く、POV黎明期の作品は、その映像が演出で撮影されたものではなく、本当の恐怖映像かもしれない、という部分に作品の売りがあったので、無名キャストが多かったが、
POV作品が一般的に一つのジャンルになった今の時代では、もうその映像は、作り物だと分かっているので、有名キャストが出演しても全く問題ない、との判断で有名スターをキャスティングしているそうです。
ただ、それでもリアル感を出すために、物語開始当初は無名キャストから始まって、殺人がエスカレートしていくのに比例して、キャスティングも豪華になっていっていく、という感じに
盛り上がって、高度な表現力が必要になってくると、それに見合った表現力を持った実力派が登場する、という事のようで、非常に合理的なキャスティングとなっています。
で、さらに、監督曰く、本作は日本のある作品の影響を大きく受けている、との事です。
その作品は、、
沢田研二主演(太陽を盗んだ男)です。
そういえば、手製の原爆を作成した教師が、政府を脅迫した理由が、テレビのナイター中継を途中で終了せずに、試合の最後まで放送しろ、
というサイコな要求をしていましたので、確かに、本作の主人公カートにどことなく通ずるものがありますね。
そんな感じで、カートの暴走は留まる事なく、しかも視聴者はその殺人がフェイクだと思い込んで、警察に通報されることもなく、
どんどんと凶行はエスカレートしていきますが、ラストは、なかなかにパンチの効いたラストなっています。
続編はおそらくなさそうな、終わり方ではありますが、こういったホラー作品では、結構強引に実はこうだった、という後出しジャンケン的な続編も多数存在しますので、
できれば、また続編を期待したいですね。
それほど、本作のカートというキャラクターを1作のみで終わらせるのは、もったいないぐらいに絶妙なサイコキャラクターでした。
ということで、POV作品の中では、結構異色なサイコな主人公側目線の作品となっていますので、
ホラー好き、POV作品好きの方などご鑑賞されてみてはいかがでしょうか。
主人公の予測不能の行動に興味が尽きないですよ。
作品情報
2020年製作 アメリカ製作 POVサスペンス
監督 ユージーン・コトリャレンコ
出演 ジョー・キーリー、サシーア・ザメイタ、デヴィッド・アーククェット、カイル・ムーニー。ミーシャ・バートン
その他のPOV作品
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