カンフー映画としてのお薦め度 ★★★☆☆☆☆☆☆☆
香港映画としてのお薦め度 ★★★★★★☆☆☆☆
禅の教えを広めた達磨大師とその一番弟子慧可の物語をカンフーアクションを織り交ぜながら描く、ユエンブラザーズ、ブランディ・ユエン監督による少林寺祖師達磨の伝奇物語!!
作品紹介
日本劇場未公開
今回ご紹介するのは、インドより禅の教えを広めるために中国に渡った達磨大師の伝奇物語です。
それでは、まずはあらすじから、
南インドの第三王子として生まれた達磨(イー・トンシン)は、王位継承候補として期待されたが、継承者争いの醜さに嫌気がさし、真理を求め、高僧に弟子入りする。
その後67年が経過し、自身も真理を極めた達磨は、師の教えに従い、中国へと禅宗を広めるために一人旅立つ、、。
インドから中国に渡り少林寺へと行き着き、禅の教えを広めていった達磨大師の伝記映画です。
禅の教えから派生して、少林武術の教えの祖ともなっていますので、武術映画の起源を描いた作品ではありますが、達磨のひととなりと、禅の教えを中心とした作品ですので、
カンフーアクションは少な目の作品となっています。
そのため、アクション作品を期待して鑑賞すると、大分イメージとは異なりますので、戸惑うとは思われますが、
それでも、本作に登場するエピソードは、伝えられている伝承を元に製作されていますので、
非常に興味深い内容となっていて、偉人の伝記映画としては、予想外に良くできた秀作となっています。
まず物語前半はインドが舞台となっています。
そこでインドの第三王子として生まれた達磨が継承者争いに巻き込まれ、兄弟たちに命を狙われます。
その争いに巻き込まれ、人間の醜さに嫌気がさした達磨は、たまたま出会った高僧の説法に感銘を受けて速攻で出家し、
鉄の意志で弟子入りの条件をクリアし、晴れて弟子となり、そこで初めて達磨の法名を襲名します。
達磨大師の誕生です。
さらにそこから修行を重ねて67年の年月が経ち、生前の師匠の教え通りに禅宗を広めるために中国へと渡ります。
本来この前半だけで、おそらく1本分ぐらいのありがたいエピソードもあると思われますが、そこはユエンブラザーズ製作の香港映画なので、全体で90分の上映時間なので30分弱でサクッと語られます。
そして、その中国への旅へ向かった辺りからが本作の物語のメインとなり、色々な場所で出会った人々に禅の教えを広めていきます。
この達磨大師の説法というか、禅宗の教え(伝承に基づいたしっかりしたエピソード)は、その後鎌倉時代に日本にも伝承され広く浸透していったので、今現在の日本でも文化の根底に根付いています。
ですので、見ていて普通に心に染みるエピソードが多く、合間で時々挿入されるルイス・ファンの超絶カンフーアクションの魅力とも相まって、非常に高ぶる展開の連続となっています。
中でも、後に達磨の一番弟子となるルイス・ファン演じる慧可(えか)の片腕を自身で切り落として、世俗のこだわりを解き放って、真理に至る有名なエピソードや、
少林寺の洞窟に9年間座禅を組んで、その後復活したエピソード、
盗賊団との争いであえて自身の命を犠牲にし、その後まさかの復活をするというエピソード、
その時期の皇帝武帝との縁に纏わるエピソードなど、見てみて、なるほど!と思えるようなエピソードが多く語られます。
個人的に印象的だったのは、仏教に造詣の深い武帝が達磨を招き、自身の熱心な仏教への信心を前面に押し出したところ、
それでは意味がないと、諫められた達磨に対して逆に厳しい態度で追い払った(自分で招いておきながら)後、
後年になって再び再会しようとしたところ、その時師事していた高僧に、それが縁というものであり、
その時は誤解によって快を分かつ事になったとはいえ、そこで快を分かつ事が縁であり、
今現在誤解が解けたとしても、無理して会おうしない、事がまた縁であり、もし、会うべき時期がくれば、
その時こそ会うのが縁というものだ、という精神的に未熟者では、すぐには思い至らないような深い考え方を説いたエピソードが非常に印象的でした。
民間伝承による部分も多いので、多少ファンタジックであったり、一応カンフーアクションも取り入れている作品ですので、
ワイヤーワークなどの表現で、ジャンプというより、フワッと物理法則を無視して浮いているようにしか見えないシーンも出てきたりしますが、
そんな超人的なシーンも合わせて本作の魅力の一部となっています。
本作を監督するのは、(酔拳)やハリウッド作(マトリックス)シリーズで世界的な名声を得たユエン・ウーピンの兄弟で、自身も俳優としても活躍している(中華道士)などのブランデイ・ユエン。
そしてその長年の映画界での実績を証明するような豪華なメンバーが揃っています。
まず、主役の達磨を演じるのは、ショウブラザース社で主にアクション作品のスターとして多くの作品に出演した後に(忘れえぬ思い)や、(ワンナイト・イン・モンコック)、ジャッキー・チェンの(新宿インシデント)など商業性と作家性と話題性が毎回絶妙な売れっ子監督として秀才ぶりを発揮する事になるイー・トンシン。
一番弟子になる慧可役に、日本のバイオレンスコミックの日本・香港合作アクション(力王)や、近年では(イップマン)シリーズの荒くれ拳士役や、(カンフージャングル)などで一躍メジャーなアクションスターになったルイス・ファン。
そして、慧可を導き、見聞を広めるために旅に出るように勧める師匠役に(チャイニーズ・ゴースト・ストーリー)のイン道士の他、監督としても有名なウー・マ。
インドの王様で達磨の父親役で登場の、ユエンブラザース作品の常連俳優で、ジョニー・トー監督の(ザ・ミッション非情の街)や(PTU)などにも出演していたエディ・コー。
そして、武帝の側近的な位置にいて、色々と縁についての説法をしてくれる高僧にユエン・ウーピン監督作(燃えよデブゴン7鉄の復讐拳)や、ジャッキー・チェン主演の(ヤングマスター師弟出馬)などのファン・ムイサン。
ファン・ムイサンは慧可役のルイス・ファンのお父さんなので、同じシーンでの共演はないものの、本作で一応親子そろって同じ作品への出演は実現しています。
という感じで、出演者の豪華さが、製作者のブランディ・ユエンの本作にかける本気度を物語っていますが、
ユエンブラザース製作作品ですので、そこは数少ないアクションシーンも手抜きのない超絶アクションが展開される内容となっています。
そのアクションのほとんどは、ルイス・ファンが担っていますが、仏門に入る前の回想シーンとして見事なアクションシーンが登場します。
アクション自体は、ユエンブラザースの素晴らしさが前面にでている感じですが、少林寺に繋がる物語ではあるのの、
どちらかというと型をバシっバシっと決めていくリアル系の少林カンフー対決ではなく、当時流行っていた(グリーンデスティニー)のような、
その内功的な強さを表現した武侠片的な表現のアクションとなっていて、アクションの合間にフワッと飛び上がるような技も取り入れたバトルとなっています。
少林寺の起源を描いた作品ではありますが、作品内容が民間伝承的な多少ファンタジックな面もありますので、そういったアクションを選択したのではないでしょうか。
という事で、少林寺カンフーアクション作品としては、かなりアクション少な目の作品ですが、禅宗を広めた祖師、達磨大師の有名エピソードが多数散りばめられている良作伝奇映画となっていますので、
機会がありましたら、一度ご鑑賞してみてください。
観ている内に、むしろカンフーアクションよりも、もっと禅問答のやり取りが観たくなる、という不思議な魅力を持った作品ですよ。
カンフー映画として作品を鑑賞して、少ないカンフーシーンがもっと少なくても良いのではないか?と思ったのは初めてでした。
作品情報
1994年製作 香港製作 カンフードラマ
監督・武術指導 ブランディ・ユエン
出演 イー・トンシン、ルイス・ファン、ブランディ・ユエン、エディ・コー、ウー・マ、チェン・ソンヨン
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