お薦め度 ★★★★★★★☆☆☆
レスリー・チャン主演の1987年製作SF武侠ファンタジーを、リペクトたっぷりにリメイクしたファン納得の完成度!!こういうリメイクが観たかった!!
作品紹介
日本劇場未公開
今回ご紹介するのは、1987年に製作された伝説の(チャイニーズ・ゴースト・ストーリー)のリメイク作品です。
それでは、まずはあらすじから、
書生ニン・ツァイサン(チェン・シンシュー)は、科挙の試験を受けるために旅を続けていた。
旅の途中で立ち寄った古寺で、怪しげな美女ニエ・ツァオチェン(エレノア・リー)に出会う。
お互いに惹かれ合う、二人だったが、ニエは、実は人ならざるものだった、、。
ニエには主人である叔母、ロウロウの存在があり、自由を拘束されていたため、ニンの命を奪うように命じられていたが、
愛の大切さを知ったニエは、ニンと共に行くことを決意する、、!?
1987年製作、チン・シユウトンが監督し、ツイ・ハークが製作、レスリー・チャンとジョイ・ウォンが主演し、続編2本が製作された伝説的名作ファンタジーのリメイク作品です。
2011年にルイス・クー主演、ハリウッド作(ムーラン)が不発に終わった主演女優リウ・イーフェイ主演で一度リメイクされていますが、
脇役であるはずのイン道士が幽霊スー・シンに恋してしまう、というオリジナルを無視した内容に、
観客からの不満が続出して、結果大コケに終わってしまったようで、日本では劇場公開どころか、DVDさえ発売されませんでした。
なんとなく、リウ・イーフェイ主演の有名作品原作の大作リメイクは災難が多いですね。
それはさておき、オリジナルは大ヒットし、主演のジョイ・ウォンを一躍スターダムに押し上げ、日本でも人気が高まりCDまで発売するぐらいになりました。
映画作品としても類似作を多く生み出し、武侠ファンタジーブームを作り出した伝説の作品となっています。
オリジナル製作のツイ・ハークは、とにかくブームを作り出すのが上手く、80年代は、(男たちの挽歌)で香港ノワールブームを、(チャイニーズゴーストストーリー)で武侠ファンタジーブームを作り出し、
90年代に入っても(ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ)シリーズで古装片カンフーブームの復活を、(スウォーズマン)で古装片武侠映画の復活ブームを作り出しました。
作品を製作するたびにジャンルごとブームを作り出す名手であることから、香港のスピルバーグなどとよく形容されていました。
そんなツイ・ハークが製作した伝説の作品のリメイク作品です。
近年では不況の波もあり、本作のような武侠作品は、香港と中国の合作になる場合が多く、
作品によっては、ほぼ中国側で製作されるパターンも多いです。
で、中国側のみで製作された作品は、やはり香港のみや、香港側のスタッフ・キャストが多く存在している作品に比べて
正直、エンターテイメント性が薄く感じられ、生粋の香港映画に比べると弾けた感じが少なくなってしまったりします。
中国側の検閲があるので、そういった内容になるのはしょうがない事ですが、かつての香港映画の勢いがなくなるのはやはり残念です。
そういった流れもありますので、かつての生粋の大ヒット香港映画の続編やリメイクが、ほとんど中国側だけで製作される事も多くなっていて、
その場合でも例にもれず、いまいち乗り切れないリメイク・続編となってしまう事が多いです。
例を挙げますと、ツイ・ハークが製作、ジョン・ウーが監督、チョウ・ユンファが主演した伝説的傑作(男たちの挽歌)は(男たちの挽歌REBORN)として蘇りましたが、
かつての熱さはあまり感じませんでした。
日本では大阪アジアン映画祭で上映されたものの、その後一般の劇場公開さえされない始末です。
その他には、これもツイ・ハークが監督した(ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ)シリーズの最新作(ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ南北英雄)とその続編(ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ英雄復活)も、
4と5で主演していたチウ・マンチェクが主役に復帰したのは良いのですが、なんとなく勢いのない、痛快さにかける内容となっていました。
という流れの中、本作(チャイニーズゴーストストーリー)のリメイクですが、監督が(ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ南北英雄)のリン・ツェンザオ監督という事もあり、
これは、またオリジナルの雰囲無視のあっさりリメイクだと思って鑑賞しました。
しかし!本作始まって早々、まず、耳に残って忘れる事のない、(チャイニーズゴーストストーリー)オリジナル版で流れていたレスリーチャンが歌っていた主題歌が流れてくるではありませんか!
しかも、早速レスリー・チャンが演じていたニン・ツァイサンがイメージそのままで登場し、
続いてウー・マが演じていたイン道士も登場、しかも演じているのは、古くからカンフー映画で活躍する(サイクロンZ)、(カンフーハッスル)などのカンフースター、ユン・ワーです。
さらに、(チャイニーズゴーストストーリー2)で、ジャッキー・チュンが演じていた若い道士も、スティーヴン・チャンが演じていて妖怪とのバトルを盛り上げます。
この怒涛の展開に気分は一気にオリジナルを鑑賞していたころに逆戻りです。
しかも、そこで繰り広げるアクションも、ユン・ワーなどが出演している事もあり、本格的な香港アクションで、
中国系の武侠ものにありがちな、ワイヤーで吊られているだけで、ほとんどCGで胡麻化したようなアクションではなく、
オリジナル版のように体術を駆使しながら、『ハンニャハラミー!』、『マーリーマーリーホン!』
と呪文を唱えて念動波が飛び出すような(霊幻道士)的な香港アクションになっています。
ついでに、その大事な場面で流れるBGMもオリジナルで流れていたようなカッコ良い音楽になっていて、テンションを上げてくれます。
そうこうしている内にスー・シン(本作ではニエ・ツァオチェン)の登場となります。
ニエ登場シーンもオリジナルのシーンが再現されていて、妖艶な雰囲気が魅力的です。
その他にも、妹との大人なシーンや、ニン・ツァイサンに倒れこむシーンなど
オリジナルを思い起こさせるシーンが満載となっていて、かなりリスペクトした作品になっています。
オリジナルに登場した妖怪ロウロウも、昔からカンフー映画で活躍するツイ・シウキョンが演じていて、強烈な印象を残しています。
という感じで、良い所ばかりが目立つリメイク版なのですが、個人的には一つだけオリジナルのイメージとはちょっと違った部分がありました。
非常に重要なところでもあるのですが、主役の幽霊役のエレノア・リーです。
オリジナルのジョイ・ウォンの透き通るようでいて怪しく、どこか切ないイメージに対して、本作のエレノア・リーのイメージが、
わりと現代風な普通のカワイイ女子、といった感じで、なんとなく都会のおしゃれなカフェでスイーツの画像をインスタグラムにあげていそうな
雰囲気を感じてしまい、どうしても切なさがいまいち入ってきませんでした。
もう、これは個人の感じ方にもよるので、気にならない人は全く気にならないかもしれませんが、、。
で、物語は進み、後半にはオリジナルと同じように地獄の暗鬼にニエが嫁ぐことになり、ニンが地獄に助けに行く、
という流れになり、果たして、地獄から連れ戻すことができるのか?という展開になります。
この辺のダークアドベンチャー的なシーンにもオリジナルを踏襲しながらも、最新のVFXと、
伝統的な特殊効果撮影をブレンドした良いバランスのシーンになっていて、オリジナルへのリスペクトを忘れていませんでした。
その後に続くラストは、オリジナルとは少し変化を加えていましたが、これはこれでアリな切ないラストなっていました。
あと、その後スタッフロール後にも後日譚的なシーンがあり、絶妙なタイミングで暗転となります。
これが、やりたかったのか、といった感じのおまけ的なワンカットではありますが、
個人的にはこの、ラストに想像力を掻き立てて、同時に余韻を残すこのカットは凄く好きな終わり方でした。
という事で、オリジナルがお気に入りだった方や、香港映画好きの方でしたら、間違いなく楽しめる作品となっていますので、
是非ご鑑賞ください。
絶対、もう一度、オリジナル版が観たくなる出来栄えです。
それにしても、(ワンチャイ)リメイクの監督と同じ監督作品とは思えないですね。
そちらは、主演のチウ・マンチェクのご機嫌取りに忙しくて思い通りにいかなかった、といった事にしときましょうか。
作品情報
2020年製作 中国製作 SFアクション
監督 リン・ツェン・ザオ
出演 チェン・シン・シュー、エレノア・リー、ユン・ワー、チョイ・シウ・キョン、スティーヴン・チャン、キャロル・ガオ、クロリア・チャン
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