私は確信する(UNE INTIME CONVICTION)110分

投稿者: | 2021年2月16日

お薦め度 ★★★★★★☆☆☆☆

フランスで実際に起こった女性失踪未解決事件を、膨大な証拠テープを丹念に調べて無罪を勝ち取った弁護士と助手の尊厳を懸けた戦いを描いた法廷劇!!

作品紹介

2021年2月12日公開

今回ご紹介するのは、2000年にフランスで実際に起きた未解決事件の映画化作品です。

それでは、まずはあらすじから、

2000年2月27日、フランスのトゥールーズで不可解な事件が発生した。38歳の女性スザンヌ・ヴィギエが3人の子供を残して忽然と姿を消したのだった。

警察は、夫のジャックに殺人容疑を懸けたが、結局スザンヌの遺体は見つからず、証拠不十分で釈放されるが、

2009年に裁判が開かれ、無罪を獲得するが、検察側が不服としたため、翌年第二審が開かれる。

ジャックの娘に息子の家庭教師をしてもらっているシングルマザーのノラ(マリーナ・フォイス)は、ジャックの無実を信じ、

高名な弁護士エリック(オリヴィエ・グルメ)を訪ねる。

被告人のジャックは事件後精神を患ってしまう

2000年に実際に起きた事件とその後の裁判を事実に忠実に描いた法廷サスペンス作品です。

実際に起きた事件と裁判に関する部分は事実に沿っていますが、主人公であるノラのキャラクターに関する分は割と創作のようです。

物語は、すでに事件が起きて、10年もたってから、やっと裁判が行われて、一審は無罪を獲得したものの、

検察側がその結果を不服として控訴した、という状況から始まります。

まず、ある事件の裁判を10年もたってやっと始まる、という事に驚きますが、日本などより事件が多く、

重大事件などでは予審なども行われるフランスでは、10年という月日は普通のようです。

証言しているジャックの娘は子供のときの記憶なので、はっきり覚えていないと証言していますが、

そりゃそうだろうと思います。

というより、いくら重大事件がおきたとはいえ、10年前の事をはっきり細かく覚えている人もなかなかいないのではないでしょうか。

フランス文化に詳しくなく、映画もそれほど多く鑑賞していなかったので、そういう事実があるとは全く知りませんでした。

10年もの間、容疑を懸けられた者は、無実だと声を上げても信じてもらえず、周りの人からはずっと後ろ指をさされ続けるわけです。

本作のテーマはまさにその部分を強く訴えたかったのではないでしょうか。

ハリウッド作品でもハリソン・フォード主演作のタイトルにもなっていました(推定無罪)です。

はっきりとした証拠がないかぎり、疑わしいというだけでは罪にならない、という推定無罪です。

息子との関係もギリギリになりながらも事件の事を調べるノラ

物語の後半で、弁護士の最終弁論で、その製作者が訴えたかったであろう、メッセージが、弁護士役のオリヴィエ・グルメの熱い名演技とともに稲妻のように突き刺さります。

ギヴィエさんは10年も犠牲を払って無罪になったというのにまるで犯人扱いだ!誰も推定無罪を尊重しようとしない!

今の世の中では、SNSの中傷などで、正義感の強い人ほど犯人捜しを追求する場合が多いようです。

そんな盛り上がってしまう正義感が、物的証拠が何もない中での容疑者探しを加熱し、

メディアやを煽り、警察側にどうしても犯人を見つけ出さないといけない風潮を作ってしまい、

杜撰な捜査の末に、無実の夫にやってもいない罪の自白を強要し、精神的に追い詰めた、という現代を象徴する事件だったようです。

裁判で嘘をついていた妻の愛人がいるのにもかかわらず、です。

正直、映画作品としては事件の発端から描かれているわけではありませんので、ある程度この事件を知っている事が前提となっているような作りとなっていて、

事実関係を把握するのにかなり時間がかかりますし、事件を調べる主人公が、事件とは無関係に近い人物なので、

裁判の事件以外の主人公の親子ドラマなどの物語と、裁判でやり取りしている事件とがリンクしない(個人的に見れば他人の家族の事件なので)ので、感情移入もしにくく、他人事のような目線での鑑賞になってしまいますが、

あえて、裁判を傍で傍観する人物として、観客側の目線を意識した設定にしたのではないかと思われます。

それでも、後半の弁護士の最終弁論シーンは、それまでの他人事感が吹き飛ぶくらいの名演技になっています。

オリヴィエ・グルメのこのシーンのためだけにでも観る価値はある作品となっていますので、法廷サスペンス好きの方などご鑑賞されてみてはいかがでしょうか。

結構胸に響きますよ。

因みに宣伝文句に【ヒッチコック狂の完全犯罪】が、どうと書かれていますが、そういう作品では全くありません。

恐らく、裁判長が裁判冒頭で、そういう例を挙げたので、当時のメディアで面白おかしく盛り上げられた、という事ではないでしょうか。

敏腕弁護士は証言と事実の食い違いを追求する

作品情報

2018年製作 フランス製作 法廷サスペンス

監督 アントワーヌ・ランボー

出演 マリーナ・フォイス、オリヴィエ・グルメ、ローラン・リュカ、フィリップ・ウシャン

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