お薦め度 ★★★☆☆☆☆☆☆☆
(シンクロナイズドモンスター)のナチョ・ビガロンド監督がスペイン時代に製作した短い期間を繰り返しタイムスリップする男の奮闘を描いたSFサスペンス!!
作品紹介
2009年4月3日公開
今回ご紹介するのは、(シンクロナイズドモンスター)など奇抜な設定の作品が特徴的なナチョ・ビガロンド監督のスペイン時代の作品です。
それでは、まずはあらすじから、
人里離れた土地に引っ越してきたエクトルは、引っ越し作業中に、近所の森で全裸状態で気を失っている女性を発見する。
恐る恐る近づくエクトルだったが、その時突然、何者かによって脇腹を刺されてしまう。
傷を負った状態で近所にある、何かの研究施設に逃げ込んだエクトルは、その研究施設で研究されている驚愕の実験現場に居合わせてしまう!?
アン・ハサウェイ主演のハリウッド作(シンクロナイズドモンスター)が有名なスペイン出身監督ナチョ・ビガロンドがハリウッド進出前に製作したSFサスペンス作品です。
この後、(エンド・オブ・ザ・ワールド地球最後の日、恋に落ちる)詳しくはこちらなど毎回奇抜な設定の風変わりな作品を製作している監督で、
本作では科学者役で出演もしています。
本作は、そのナチョ・ビガロンド監督の長編第一回作品で、ヨーロッパの色々な映画祭で評価され、多くの章を受章しています。
物語の基本はタイムスリップものですので、ネタバレ無しに大筋を説明しにくいのですが、DVDジャケットに記載されている程度の問題のなさそうな部分だけ説明すると、
タイムスリップによって60分前に戻ることになってしまったメタボリックな普通の中年おじさんが、タイムスリップを繰り返すうちに、
重大な事件を起こしてしまい、その事件を取り消すためにどんどん深みにハマっていく、というSFサスペンスとなっています。
要するにタイムスリップする物語である事は、タイトルが示す通り既に分かっている事ですので、メインの魅せどころは、
そのタイムスリップの時間経過がどのように繋がっていくのか?という、ある意味パズル映画的な側面を持った作品となっています。
思い出されるのは同じタイムスリップものの、傑作(バタフライエフェクト)ですが、こういった作品の常として、パズルのピースを完成させていくカタルシスは得られるものの、
そもそも、そのループの始まりと終わりが繋がる事自体が、ニワトリが先か?卵が先か?的な考え出すと納得のいく説明はつきそうもない事が多く、
その辺をどうやって上手く説明(多少強引な設定でも)するか、というところが、結構重要になる事があります。
本作もその例にもれることなく、最後まで見通して観ると、やはり、『あれ?』とはなってしまいます。
ですが、本作は、タイムスリップという壮大な規模の物語を、あえて(予算の都合もあるとは思いますが)主人公の自宅とその近隣、という非常に狭い、限定された空間を舞台に、
奥さんがちょっと出かけたすきに、近隣の様子をのぞき見感覚で、双眼鏡を使ってのぞいていた中年おじさんが、日常の生活の中で突然事件に巻き込まれる、
というヒッチコック作品の(裏窓)のような巻き込まれ型のサスペンスを使って表現する事で、他のSF的な要素を前面に押し出した作品とは一風変わった切り口のタイムスリップものとしての魅力を放つ作品となっています。
ですので、CGなどの表現は一切なく、設定こそSF設定ではあるものの、むしろ突然、事件に巻き込まれ、自身も事件を起こす当事者となってしまった不運な男のサスペンス物語、
といった趣の強い作品となっていますので、納得のいくような細かいSF設定を説明する事は、それほど重要ではなく、
ひたすらテンポ良く、中年おじさんの奮闘とその顛末を見守る、という事に重きを置いている物語となっています。
ナチョ・ビガロンド監督の、その独特の切り口は、その後のハリウッド進出も納得の有無を言わせぬ説得感があります。
中盤、設定に慣れてくると、大体の事は分かってしまいますので、やや停滞しますが、後半にはある事件が起こってしまい、今度はその事件を回避するためにはどのようにしていくのか?
がサスペンスのメインとなり、その結果、その手があったか、といラストへと向かってきます。
ただ、このラストはピタっとパズルのピース的には収まるものの、結構主人公目線過ぎる自分勝手な結末とも言えますので、
どう考えても、賛否意見の分かれてしまうラストとなっています。
個人的には、さんざん引っかき回しときながら人の生き死にを自分勝手に改ざんする身勝手なメタボなおっさん、という印象しか残らなかったので、ちょっと共感はできませんでした。
ただ、全編通して、パズルのピースを埋めていく気持ちよさは結構感じられる作品ですので、タイムスリップものがお好きな方など、ご鑑賞されてみてはいかがでしょうか。
気軽なSFといった感じで、結構観やすいですよ。
それにしても、DVDジャケットには(007)シリーズのユナイテッドアーティスツ社がリメイク権を買取り、デヴィッド・クローネンバーグ監督でハリウッドリメイク決定!!と大きく書かれていますが、
20009年に公開された作品ですが、2021年になっても、そんな作品はまだ製作されていないですね、、。
作品情報
2008年製作 スペイン製作 SFサスペンス
監督・脚本 ナチョ・ビガロンド
出演 カラ・エレハルデ、カンデラ・フェルナンデス、ナチョ・ビガロンド、バルバラ・ゴエナガ
その他のタイムスリップ作品
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