お薦め度 ★★★★★★★☆☆☆
ユエン・ウーピン監督が作り出した世界観を描き直したツイ・ハークの物語を、原題のVFX満載で最映像化した法術師と妖怪たちのファンタジーバトル!!
作品紹介
日本劇場未公開
今回ご紹介するのは、ユエン・ウーピン監督が1982年に製作したファンタジーアクション(ミラクルファイター)のリメイク作品です。
それでは、まずはあらすじから、
街の治安を守る長官、ジョウ・ションイー(エディ・コー)と息子ジョウ・トン(ハー・ポン)は、盗賊リウを捕らえようと、捜査をしていたが、
リウは邪悪な妖怪に操られ、ジョウ・ションイーを罠にかけて、犯罪者として逆に逮捕させたのだった。
父の容疑を晴らすために苦闘するジョウ・トンは、霧隠派の師匠と偶然出会い、奥義(奇門遁甲)のエネルギーの源となる【甲】を伝授する事になる!?
1982年製作、ユエン・ウーピン監督による傑作ファンタジーアクション(ミラクルファイター)(詳しくはこちら)のリメイク作品です。
リメイクが製作されるのは今回で2回目で、2017年にはユエン・ウーピン監督自身の手でセルフリメイク作品が製作され、製作と脚本・編集をツイ・ハークが担当し、日本では一般劇場未公開ながらも、
中国映画祭で特集上映されました。
で、その2017年版で書かれた脚本を元に、さらに新しいキャストとスタッフでリメイクしたのが本作となります。
ですので、前作からの製作スパンは短いですが、2度目のリメイク作品となります。
ここへきて、ついにユエン・ウーピンの手から離れてしまいました。
ですが、本作はオリジナル作品を完全に無視して製作したようなリメイクではなく、しっかりとオリジナルへのリスペクトも見せつつ、
今現在の最新技術と新しい感性でファンタジックなシーンを見せていく、というしっかりとした製作体制で製作された、作り手の志の伝わってくる内容となっています。
オリジナルは手作り特撮と、超絶カンフーアクションの融合が楽しい作品でしたが、
本作では現代風にアレンジされているので、リアルなカンフーアクションは控えめではありますが、
その分豪華なVFXと適度な武術アクションで、オリジナルとは少し角度を変えた形で魅力的な法術合戦が描かれています。
こういったファンタジックなタイプの武侠アクション作品の中では、今現在の映像表現の一つの到達点と言っても良いかもしれません。
そんな魅力的なアクションが展開される本作の物語は、オリジナルでも濡れ衣を着せられて、反逆者となった将軍を演じていたエディ・コーが、
本作でも濡れ衣を着せられて、主人公である息子にその意志を託していくシーンから展開していきます。
冒頭から、オリジナルへのリスペクトが伝わってきますが、途中で展開される妖怪との戦いも、オリジナルでブランディ・ユエンが演じていた白塗り壺人間を、アレンジして登場させるなど、
オリジナルファンがニヤリとするようなシーンでも十分にリスペクトが伝わってきます。
で、本作では主人公が悲劇的な事件に巻き込まれた後に、偶然知り合った法術師の師匠から、免許皆伝に必要な力の源【甲】を伝授される事で物語は急速に展開していきます。
その力は、法術師の名門、霧隠派の法術【奇門遁甲】の奥義を操るのに必要不可欠な力で、その力を求めて争いが起きるほどの貴重で、強大な力だったのです。
で、その力を得た主人公は、目的を果たすために、法術師の名門霧隠派の4人の門人に弟子入りする事になります。
その4人の師匠にはそれぞれ、得意な技があり、それぞれの師匠たちと修行する事で、様々なタイプの法術を身に着けていくことになります。
しかし、どうしても自身の敵を恨む心を抑えきれない主人公は、先走ってしまい、その結果取り返しのつかない事態に発展してしまいます。
果たして、取り返しのつかない失態を犯してしまった主人公は、もう一度立ち上がり、自身の使命に目覚めて、前に進んで行くことができるのか?
というのが本作の見どころとなっています。
中国製作の香港映画のリメイク作は、最近増えてきましたが、正直なところ、香港勢を除いた中国側だけで製作された作品は、非常にあっさりした薄味の場合が多く、アクションも直立不動のキャストをワイヤーで横に動かしているだけ、
のような大味なアクションが多い作品が多数存在したりします。
物語内容はさておき、アクションだけはもう少しなんとかならないのか、と思う作品も少なくありません。
で、本作も、2回目のリメイクという事で、ほとんど香港風味のスタッフ・キャストは抜けてしまい、
製作側はツイ・ハークの原作(原著とクレジットされているので前作のリメイク版に関する何か出版物が存在するのかもしれませんし、前作の脚本の事を指しているのか分かりませんが)と、
1999年の(パープルストーム)(詳しくはこちら)での金馬奨(中華圏全体の映画賞)受賞を皮切りに、多くの映画祭で受賞歴の多数ある香港映画界の名作曲家ピーター・カム、
出演者では、近年は(PTU)や、(ザ・ミッション非情の街)などのジョニー・トー作品に出演し、オリジナルの(ミラクルファイター)にも出演していたエディ・コーぐらいしか見当たりませんでしたので、
正直、本作もあまり期待はしていませんでした。
ところが、開幕早々にオリジナルに登場したような白塗り壺人間風の妖怪がちゃんと登場した上に、その妖怪を倒すのに登場した法術師の繰り出す数々の技のカッコ良すぎる映像表現に、
まさに、『見たかった法術合戦は、これ!』と一瞬で、胸躍ってしまいました。
登場する法術師たちも個性豊で、それぞれの得意技を駆使して妖怪を倒していきます。
この霧隠派の門人たちの個性がしっかりと描かれているのも本作の魅力の一つとなっています。
最近の中国産のファンタジックな武侠作品は、個性的なキャラクターが多数登場するわりには、見ている側の期待感をよそに、特に活躍する事なく、他の歩兵キャラと同じレベルにしか目立たない展開が多かったりします。
ですが、本作では、それぞれのキャラクターの初登場時はそれほど目立たないものの、後半主人公との接点が増えてくるにしたがって、それぞれの個性が物凄く際立っていきます。
物語が進むうちに、それぞれの人となりもしっかり分かるように描かれていて、主人公が同門一門と認められるころには、しっかり仲間としての親近感が沸いてくるようになっています。
誰一人として、モブのようなキャラクターは存在しません。
ちゃんと、要所でしっかりとした台詞と行動で、主人公に何かを与えていきます。
それによって、主人公も成長し、自身の使命に目覚めていきます。
武術映画のお約束的な、未熟な若者が目的を持って、己を鍛えて技を磨いていく、という王道の展開を描きつつ、その過程で師匠たちとの信頼関係もしっかりと描かれていきます。
この辺の訓練シーンは、それまでの悲劇的な展開を一旦お休みして、師匠たちとの厳しいながらも、後で振り返ると厳しい中にも楽しい訓練の日々だったと思えるような、
微笑ましいトーンのシーンとなっています。オリジナルの(ミラクルファイター)や、他の香港製カンフー映画などでもお馴染みの展開ですね。
そんな修行の結果、主人公は法術の腕を急速に上げると共に、自身の腕を過信してしまい、単独で敵地に乗り込んでしまいます。
その結果とんでもなく、取り返しのつかない事になってしまいます。
この辺からの急展開は、なかなかに涙腺の緩んでしまうような展開で、それまでに少し匂わせていた伏線との相乗効果もあり、非常に切ないドラマチックな展開となっていきます。
ここに至って、主人公は悔やんでも悔やみきれないどん底まで落ちていき、自身の過ちにようやく気付き出します。
心の奥深くに刻まれていた父親や、自身に力を授けてくれた師匠の言葉の重みに今更ながらに気づきます。
『意志ある所に道は開ける』
『その道は、孤独で、暗く、険しいだろう』
『だが、正しい道を進めば、』
『いつか、必ず、たどり着く』
いよいよ、【奇門遁甲】の奥義皆伝です。
ラストバトルは、4人の師匠それぞれと妖怪とのバトルから始まり、そのピンチに駆けつけた奥義を得た主人公と妖怪とのバトルへと展開していきます。
このラストバトルはそれまでのドラマがしっかりと感情移入できるように描かれていますので、興奮度もマックスな状態で展開されていきます。
その戦いの果てに、主人公は自身の本当の使命に目覚めて、新しい道を進んでいくことになります。
完全に娯楽作品でありながらも、物語の発端から、挫折を味わい、そこから成長して、自身の使命に目覚めるまでを、しっかりとしたドラマと豪華なVFXアクションの融合で、
しかもそれを83分という極めてコンパクトな上映時間に収める、という非常に良くまとまった作品となっています。
続編も製作されそうな終わり方になっていますので、是非とも、同じスタッフ・キャストで同じコンセプトで続編製作を期待したいですね。
という事で、オリジナルへのリスペクトを残しつつも、最新の技術で蘇った、武侠アクションの決定版と言っても過言ではないぐらいの作品ですので、
機会がありましたら是非ご鑑賞をお薦めします。
個人的にはルオ師匠役のユエ・シンが、90年代の武侠作品で大活躍していたブリジット・リンにそっくりで、そのカッコ良さにやられてしまいました、、。
作品情報
2020年製作 中国製作 ファンタジーアクション
監督・製作 シアン・チウリアン 原作 ツイ・ハーク 音楽 ピーター・カム
出演 ハー・ポン、リン・イェンジョウ、エディ・コー、ユエ・シン、ワン・ホンチェン
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