おすすめ度 ★★★★★★★☆☆☆
20年前に発生した謎に満ちた良家での殺人事件を調べる記者が、当時の事情を知る証言者の二転三転する会話を基に真実を導き出す、道士ものでもキョンシーホラーでもない、しかし完成度の高い良質な怪談ホラーサスペンス!!



作品紹介
日本劇場未公開
今回ご紹介する作品は、キョンシーホラー的な要素は微塵もない怪談ホラーサスペンス作品です。
それでは、あまずはあらすじから、
20年前に発生した、ある街の権力者の殺人事件を調べるため、記者のルー・シャオシェンは、事件に関わった紙人形師の弟子ナン・ションのもとを訪れた。
その証言は、ルーが既に調べていた事件記事の資料とほぼ一致していたが、実は、記事になっていない事実が存在し、
証言を繰り返し聞いて行くうちに、事件の真相が徐々に明らかになっていくのだった。

監督は、(霍元甲之精武天下)や(シン・ジョーズ最強生物の誕生)(詳しくはこちら)等のチェン・シューで、
見ごたえのある怪談物語を、しっかりと演出しています。


一応主人公となる、事件を探る記者役で、(西遊記リローデッド)や(白蛇伝説)等のハン・ドンが登場し、事件の真相に迫ります。



で、記者に事件について話す紙人形屋の店主役で、(女ドラゴンと怒りの未亡人軍団)や(ジュラシックアース)(詳しくはこちら)等の
チェン・ズーハンが登場し、意外な真実を語り始めます。



で、記者を事件のあった屋敷に導く男役で、(少林サッカー)や(イップマン完結)(詳しくはこちら)等の、
ダニー・チャン(チャン・クォックワン)が登場し、出演シーンは少ないですが存在感たっぷりに作品世界を掘り下げていきます。



で、事件に巻き込まれる紙人形屋役で、アンディ・ラウ主演の新作(危机航线)や(ジュラシックアース)、(フラッシュオーバー)等の
レイ・ツォンが登場し、物語を引っ張っていきます。



で、同じく事件に遭遇する青年役で、(ビッグショット)(詳しくはこちら)や、(シンアナコンダ)(メガパイソン)(ジュラシックアース)に続くシリーズ第四弾(大蛇4:迷失世界)等の
チャン・ハオランが登場し、怪奇色を強めていきます。



そんなスタッフ・キャストが製作した本作の物語は、ある寂れた屋敷で20年前に発生した事件を調べるため、
そこを管理している初老の男性(ダニー・チャン)に連れられて、新聞記者ルー・シャオシェン(ハン・ドン)がやってくるシーンから始まります。



その事件は、かつて、その屋敷では裕福なチャオ家の一家が暮らしていたが、ある夜紙人形師が作ったチャオ家の娘ユアンユアンに似の紙人形に、
禁忌とされている赤い目を入れた事で、人形に魂が宿り、一家全員の命を奪ってしまったという、大変忌まわしい事件で、
それ以来、その屋敷に近づく者は、呪われるという噂が広まって、今現在は廃屋になってしまったという誰も触れたがらない伝説となっている事が、初老の男性によって語られます。


で、若き記者シャオシェンは、そんな事件に興味を持ち、資料を集めて現地で真相を究明しようとやってきたのでした。

で、廃屋を訪れるや否や、何者かの気配を感じ、速攻で霊か幻を見てしまったシャオシェンは、そのまま気絶してしまいますが、
管理人のおじさんに救われて、事件を詳しく知りたいなら、噂の紙人形を作った紙人形師リウ・サン(レイ・ツォン)の弟子が経営している紙人形店を訪れた方が良い、
という助言に従い、廃屋近隣の街にある紙人形店を訪れます。



で、その店主であるナン・ション(チェン・ズーハン)は、突然の記者の来訪に迷惑がりながらも、かつて自身が幼少期に発生し、
師匠から聞かされていたチャオ家の事件の真相について語り始めます。



で、その師匠の証言によると、紙人形師である師匠は、ある日、その街の有力者であるチャオ家の者から、
チャオの娘であるユアンユアンに似せた紙人形を作る事を依頼されます。


実は、紙人形の世界では、生者に似せて紙人形を作る事と、紙人形に目(瞳)を書く事は禁忌とされていて、
ルールを破りたくない師匠は、頑なに依頼を断りますが、高額の報酬と命を狙うと脅された師匠は、嫌々この依頼を受けてしまいます。

で、3日後、紙人形が完成し、屋敷に届けた師匠は、そこで何かの儀式の準備をしている祭壇を見てしまいまいます。


納品を終えたあと、どうしても気になった師匠は、こっそりと屋敷の物陰に潜み、儀式を覗いてみると、
そこでは、身体の自由を奪った娘を囲んだ忌まわしげな儀式が執り行われ、その後ユアンユアンは亡くなったことが分かります。


後日、納棺に参列するように言いつけられた師匠は、ユアンユアンの棺と共に行列に参加しますが、そこに突然、
心神喪失状態気味の男、チェン・ゴシェン(チャン・ハオラン)が参列を邪魔するように現れ、棺桶の蓋を開けて中を確認後、チャオ家の者達に暴行を加えられる現場を目撃します。



そんな出来事がありながらも、山奥の荒れた墓地へとやってきた行列は、そこで納棺を済ませます。

で、既に紙人形の悪霊とも幻とも判断できない存在を目撃していた師匠は、ユアンユアンの霊の導きによって、
書けば魂が宿ると言われる紙人形の瞳を血で書いてしまった事で、紙人形は魂を得て復活し、


仕上げの儀式を行うために術を開始しようとした道士達は突然不穏な空気を感じ、周りに何者かの存在を感じた時には既に時遅く、
道士達も瞬く間に何者かに命を奪われ、チャン家の関係者一同全滅してしまう事になり、師匠は、弟子のナン・ションを連れて街を離れて行った、
という、新聞記事には掲載されていなかった事の真相を、記者は聞く事に成功します。



確かに、記者が用意してきた資料と大体の事は証言と一致しているけれども、その証言には、参列を妨害した男チェン・ゴシェンに関する需要な真実が抜けている。

あのチャオ家に嫁ぎ、長女ユアンユアンとその弟トンを生んだ、シャオリャンとかつては恋仲で、10年従軍して帰還後、
愛する者もチャオ家に略奪され、心神喪失状態となって、シャオリャンに似せた紙人形と結婚し、村人から蔑まれたチェン・ゴシェンに関する視点が抜けている、
と指摘されたナン・ションは、今度はチェン・ゴシェンを中心に、その事件に関する真実を話し始めると、
師匠を中心にした目線では明らかにならなかった新たな真実が明らかになる、、、、、、というのが大体の大筋となっています。



日本版のジャケットや邦題、宣伝文句等から、当然(霊幻道士)や(幽幻道士)のようなキョンシーホラーアクションを連想しますが、
実際は、そういう要素はほぼ0で、アクション性もコメディホラー要素も極めて薄めの、怪談ホラーサスペンスとなっています。

それなりに合った邦題を考えるとすると、(霊幻怪談)(VHS時代にありましたが、、)か、(幽幻怪談)、もしくは(呪幻怪談)ぐらいでしょうか。
道士的な要素が極めて少なく、一般的なイメージのキョンシーも登場しませんので、(〇〇道士)という邦題も、
宣伝文句に【新生キョンシーホラー】と謳ってしまうのも、流石に無理があり過ぎるように思います。

これが、それほど完成度の高くない内容なら、正直タイトルや盛りまくりの宣伝文句も、ある程度しょうがないような気もするのですが、
本作に関しては、そんなダマシ的な要素に頼らなくても、十分作品内容で引っ張れるような良質な内容となっていますので、
つくづく、さっき考えたみたいなぺラい邦題と、日本オリジナルと思われる嘘くさいジャケットデザインが悔やまれます。

で、その肝心の内容ですが、これが、カイ・チーホン監督の名作(邪ゴーストオーメン)(詳しくはこちら)を彷彿とさせるような、

事件の登場人物の視点が変わる度に新事実が明らかになり、虚実入り乱れながら、新事実の断片を組み合わせて行くうちに、最後の最後に本当の真実が明らかになる、
という黒澤明監督の(羅生門)から始まり、(JSA)や(HERO英雄)等に大きく影響を与えた、いわゆる羅生門形式で物語が語られ、
各登場人物の細かいエピソード等の伏線等も、わりと回収されていきますので、最初から最後まで非常に興味深く鑑賞する事ができるような、しっかりとした内容となっています。



大きく分けると、事件に巻き込まれる紙人形師リウ・サン師匠目線、チャオ家に全てを奪われるチェン・ゴシェン目線、
事件の被害者となるユエンユエン目線、そして、最後の最後の決定打となるもう一人の目線、という感じで、

4つの目線で物語が語られる事で、チャオの横暴による犠牲者の悲しい事実が語られていく、という怪談ホラーでありながらも、
非常にドラマ性やミステリー要素も重要な魅力となっている良質な作品となっています。

ただ、内容的に残念なのは、95分という短い上映時間なために、それぞれのエピソードが必要最低限程度の表現になっていて駆け足気味で、
物語展開についていけずに少々混乱してしまう事が何度となくありますので、これがあと20分ほど余裕をもって描かれていれば、もっとしっかりとした傑作になっていたのではないでしょうか。

簡単に言ってしまうと、最初に描かれる3つの視点のエピソードは、当然ながら同じ出来事を違う視点から描いていますので、
同じシーンが3回登場するのですが、展開が速すぎて、前回の視点と2回目、3回目の視点の違いが分からない(記憶できない)という、
違いがあるからこそ面白みが存在する部分に、その大事な違いに気付きにくい、という駆け足による不具合が発生してしまいます。


ただ、全てを理解してから2回目を鑑賞すると、違いはちゃんと分かりますし、ついでに気付いていなかったちょっとした伏線等も、理解できるようになっていますので、
イマイチ理解できなかった方は、二回のご鑑賞もお勧めします。
とは言え、虚実混ざっている物語なので、全てがスッキリする事はないのですが、、。

という事で、キョンシーホラーやキョンシーアクションを観たい、という方は恐らくがっかりするとは思いますが、
ストーリー性のある怪談ホラーを鑑賞したい、といった方にはピッタリな作品となっていますので、興味のある方は、是非ご鑑賞してみてください。
因みに、そんなに怖くはないですよ。







作品情報
2023年製作 中国製作 怪談ホラー
監督 チェン・シュー
出演 ハン・ドン、チェン・ズーハン、ダニー・チャン(チャン・クォックワン)、レイ・ツォン、チャン・ハオラン


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