おすすめ度 ★★★★★★★★☆☆
ジャッロ映画、デヴィッド・クローネンバーグ作品など往年のホラー映画へのリスペクトを見せつつ、ジェームズ・ワン監督独自のひねり技の効いた娯楽ホラー作品!!
作品紹介
2021年11月12日公開
今回ご紹介するのは、(ソウ)シリーズ(死霊館)シリーズを創り出したジェームズ・ワン監督のオリジナルホラー作品です。
それでは、まずはあらすじから、
夫のDVに悩むマディソン(アナベル・ウォーリス)は、妊娠中だったが、ある日夫の暴力によって頭を強く打ちつけられ、そのまま気絶してしまう。
その出来事以降、マディソンは、ある殺人犯の犯行現場を疑似体験する、という特殊な能力を身に着けてしまう。
目撃したことを警察に通報すると今度はマディソン自身が容疑者として疑われる事になり、自身の嫌疑を晴らすために事件の犯人を追跡する事になるが、
その犯人はマディソンの今後の運命を左右する重大な秘密を握っていた!?
(ソウ)シリーズや(死霊館)シリーズのジェームズ・ワン監督によるオリジナルのホラー作品です。
ジェームズ・ワンといえば近年は(アクアマン)や(ワイルドスピードSKY MISSION)で一挙にメジャー作品の人気監督となりましたが、
本作はそんな上り調子のワン監督の原点回帰的なシリーズ作品ではない、オリジナルのホラー作品となっています。
内容的には往年のダリオ・アルジェント監督やマリオ・バーバ監督などのジャッロ映画への偏愛も見せつつ、デビッド・クローネンバーグ監督作品のような
変体(変態ではありません)的な要素も取り込み、それを自己流の世界観で表現する、というホラーファン必見の内容となっています。
内容的に絶対ネタバレ禁止的な物語となっていますので、核心に迫る部分を書いてしまうと楽しめなくなるため、
問題の無い部分のみ書かかせて頂きます。
まず、主人公マディソンはDV夫に悩ませられながら生活している妊婦で、これまでにも3回流産を経験しています。
で、今回も不安に慄きながらも、やっぱりDV夫は暴力を加えてきますので、荒っぽく突き飛ばされたりして、後頭部を強めに壁に打ち付けてしまいます。
この衝撃が原因でマディソンは意識を失ってしまいますが、その意識を失っている間に何かが現れ、夫に襲い掛かります。
で、その出来事以降、マディソンには不思議な力が宿り、突然体の自由が利かなくなり、硬直して意識のある状態で、正体不明の殺人鬼の事件現場を疑似体験する、
という超能力のような力を身に着けてしまいます。
ただ、リアルにその現場を見てはいますが、自分が何かに触れて、犠牲になる寸前の被害者を助けたりなどはできず、ただただ、その場にワープしたように存在しているだけ、
という体験の仕方です。
で、殺人事件の現場をもろに目撃していますので、最愛の妹シドニーと共に警察に通報しに行きます。
担当は超自然的な存在に極めて懐疑的な女性刑事と、イケメンアジア系の若手刑事。
ホラー作品的にはなかなか良いコンビで、若手は結構優しくて、それなりに話は聞いてくれますが、女性の方はそれを完全に打ち消します。
で、当然の展開としてマディソンが殺人事件現場を遠方から目撃した、という証言なんかは全く聞き入れてくれません。
でも、やっぱり証言通りに事件は起こっていて、マディソン自身にも嫌疑が及びます。
段々とピンチになっていくマディソンですが、さらにこの殺人者は、何かの目的で連続殺人を計画しているようで、次の犠牲者も出てしまいます。
その殺害現場もマディソンは目撃してしまう事になり、いよいよこの連続殺人事件の犯人とマディソンの間に何か因果関係が?という展開になっていきます。
犯人のビジュアルは黒いレザーっぽいロングコートに身を包み、超人的な力と俊敏な動きで、尋常ではない存在となっています。
で、この殺人鬼とマディソンとの因果関係が、そのまま後半のひねりの効いた物語展開へと直結していきます。
ここから先は、まさかの展開で、マディソンの殺害現場を疑似体験する、という超自然的な特殊能力の設定を、物凄い力業でねじ伏せます。
かなりの力業ですので、予測を軽く越えてきますが、それまでの伏線と絡めると、結構納得できる内容となっていて、ジェームス・ワン監督の創造力に圧倒されます。
また、本作は様々なジャッロ映画への偏愛も見せつつ、殺人鬼との対決ではそれまで、日和っている草食系イケメン刑事とだけ思っていた若手刑事が、
意外に刑事魂を発揮し、超人的な動きを見せる殺人鬼をどこまでも追い詰めていきます。
対する殺人鬼も正体不明の存在ながらも、ワンカットで多くの警察官が常駐する警察署から超人的な体術のみで格闘し、全員殺害しながら脱出する、
というおよそこういうタイプのホラー映画では見たことがないような大格闘シーンを超絶的なカメラワークで演出し、予想外の見せ場を作っています。
意外なシーンでしたが、はっきり言って、近年の気のない中国武侠作品よりはるかに優れたアクションシーンとなっていました。
という事で、往年のホラー作品へのリスペクトや名アクションシーンを盛り込みつつ、殺害現場疑似体験シーンではワンカットで徐々に周りの景色が変わっていく、
という(サイレントヒル)の名シーンをさらに深堀していったようなビジュアルエフェクトも登場する見所いっぱいの作品となっています。
ホラー作品で有名になり、メジャー一般作でさらにその世界観を広めた今現在のジェームズ・ワン監督だからこそ実現できた、
衝撃の一作となっていますので、ホラー映画ファンの方は是非ご鑑賞いただきたいと思います。
あの作品の雰囲気に似ている、などの例も挙げられないのがもどかしいですが、昔からのホラー映画ファンの方でしたら、絶対思い当たると思いますよ。
作品情報
2021年製作 アメリカ製作 ホラー
監督・製作・原案 ジェームズ・ワン
出演 アナベル・ウォーリス、マディー・ハッソン、ジョージ・ヤング、三コレ・ブリアナ・ホワイト、ジャクリーン・マッケンジー
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