おすすめ度 ★★★★★★★★☆☆
アガサ・クリスティ原作の(ねずみとり)を舞台化し、さらに映画化しようとしている状況の1950年のロンドンを舞台に、そこで巻き起こる殺人事件を捜査する凸凹コンビの活躍を、サム・ロックウェルとシアーシャ・ローナン主演で描いた、クスッと笑える小粋な良質サスペンスコメディ!!
作品紹介
日本劇場未公開
今回ご紹介するのは、アガサ・クリスティの原作を独特の角度で映画化した秀作サスペンスコメディです。
それでは、まずはあらすじから、
1950年代のロンドン、アガサ・クリスティの舞台版(ねずみとり)が上演され、人気を博す中、映画化を進めていた監督が殺された。
事件を担当したストッパード警部と新人警察官ストーカー巡査は、舞台の関係者を捜査していくが、やがて事件は連続性を帯びていくのだった!?
ミステリーの女王、アガサ・クリスティの原作(ねずみとり)を独特の視点で映像化したサスペンスコメディ作品です。
(オリエント急行殺人事件)や(ナイル殺人事件)等、アガサ・クリスティ原作のリメイク作品が続いていますが、
本作は原作(ねずみとり)を、そのまま映画化するのではなく、映画世界内で、(ねずみとり)を舞台化している1950年代のロンドンで巻き起こる連続殺人事件を描いたメタフィクション的な作品となっています。
ですので、(ねずみとり)の物語がそのまま映像化されているわけではありませんが、脚本家や監督が、その物語について何度も会話でやり取りしたり、
実際に上映されているシーンも何度も登場しますので、(ねずみとり)の大体の流れは分かるようになっています。
斬新な設定です。
しかも、よくありがちなアガサ・クリスティをモチーフにした別人が登場するのではなく、アガサ・クリスティその人を演じたアガサ・クリスティ役の登場人物もちゃんと登場します。
ですので、正確に言うと(ねずみとり)の映画化というよりも、(ねずみとり)という小説とその著者や関係者を題材にした映像作品、
という、物凄く捻った映像化となっています。
設定の奇抜さもさることながら、主演のアル中直前のうらぶれた熟練刑事役のサム・ロックウェルと、生真面目で映画、演劇好きな新人女性警察官役シアーシャ・ローナンが凸凹コンビを組んで、
絶妙なズレから生まれる、絶妙な笑いを生み出して、ミステリーに笑いを添えていきます。
とにかく、この二人のテンポの良い笑いが上質で、何気ないやり取りにも、ちょっとした隙間に『クスッ』と笑ってしまうような笑いが挿入され、
その笑いを積み重ねていくうちに、主演二人のキャラクターも際立っていくようになっています。
この辺のキャラクター説明と、それを活かした物語展開が非常に上手く、しかも、サラっと伏線も貼りつつ、
連続殺人が描かれていき、話が進めば進むほどに、さらに犯人が分からなくなっていく、という笑いだけではなく、
ミステリー要素としても、非常に上手く盛り上がるようになっています。
笑いの部分も、大げさすぎるリアクションや、誰かをばかにしたようなゲスい笑い等の勢い重視の笑いが中心ではなく、
あくまで『クスっ』と思わず笑ってしまうような笑いを中心に、連続殺人事件という血なまぐさい物語を良質なミステリーとして、
絶妙なバランスで、しかも全編おしゃれ感が漂う心地よい世界観で統一して描いています。
ミステリー作品の物語展開を説明してしまうと、完全にネタバレとなってしまいますので、詳細は割愛させていただきますが、
犯人探し映画の定石をなぞりながらも、その定番を使いつつ、さらに展開させる(文字での表現が拙くてすいません)という、
捻りの効いたクライマックスも見所となっています。
それにしても、本作のような良質な、劇場で公開されるべき作品が、ウォルト・ディズニー傘下の20世紀フォックスが製作しているがために、
DVDスルーどころか、配信スルー、というほとんどの人が存在自体をスルーしてしまいそうな不遇な扱いで消費してしまう、
ウォルト・ディズニーのディズニーチャンネル至上主義にはびっくりしますが、作品自体は、見逃すのは勿体ないぐらいの秀作となっています。
ミステリー好き、特にアガサ・クリスティファンの方は必見な作品となっていますので、配信しか鑑賞する方法がありませんが、
視聴できる環境のある方は、是非ご鑑賞をお勧めします。
同じコンビで続編が観たくなるぐらいに面白いですよ。
作品情報
2022年製作 アメリカ製作 サスペンスコメディ
監督 トム・ジョージ
出演 サム・ロックウェル、シアーシャ・ローナン、エイドリアン・ブロディ、ルース・ウィルソン
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