修行度 🔥🔥🔥●●●●●●●
気が付いたら手を後ろ手に縛られ、目隠しされ、閉じ込められた状態のエレベーターの中、脱出しようとするとエレベーターが急下降を繰り返すシチュエーションスリラー、、、と思ったら、というジャンルを越えるサスペンス作品!!
作品紹介
2021年1月21日公開
今回ご紹介するのは、目覚めたら高層ビルのエレベーター、繰り返される急降下、というシチュエーションサスペンス作品です。
それでは、まずはあらすじから、
突然目隠しをされた状態で目覚めたアリアは、自身が手を後ろ手に縛られていることと、今いる場所がどこかの高層ビルのエレベーターである事のみを把握する。
なんとか目隠しを取り外したのもつかの間、エレベーターは急降下していき、一定の場所で静止、そしてまた元の場所に戻るのだった!?
目覚めたら手を後ろ手に縛られ、目隠しされた状態のエレベーターの中、戸惑っているとエレベーターは急降下、
しばらく落ちると停止し、また同じぐらいの高さまで上がっていき、さらにしばらくするとまた急降下、
という謎の状況から始まるシチュエーションサスペンス作品です。
なかなか緊迫感のある導入です。
で、なんとか身動きはできるようになってもエレベーターの上下動は繰り返されます。
その落ち方もかなりの速度のようで、落ちる度に無重力状態のようになって身体が浮き上がったあげくに床にたたきつけられる、という状態を繰り返しますので、
一見画面では身体的なダメージがそんなにないように見えますが、きついようです。
主人公も、錯乱しだして、もうかんべんしてくれ!!みたいになっていきます。
身体的なダメージがほとんど見受けられないので、あんまりその緊張感は伝わりにくいですが、、
という感じで基本はこのエレベーターの中で展開する(CUBE)や(SAW)のようなソリッドシチュエーションサスペンスとなっています。
こういったタイプの作品は、謎の解明を伴った物語展開が、そのまま作品の面白さに直結するジャンルですので、
この先の展開を説明してしまうと作品の楽しみを削いでしまう事になりますので、そこを避けて説明するのが困難なのですが、
展開に触れないと、本作がいかに修行覚悟のいる作品であるかの説明を全くできそうにありませんので、今回は一歩踏み込んで説明させていただきます。
ですので、ここから先は、物語展開に触れていますので、十分ご注意下さい。
で、徐々に明らかになるのですが、主人公にはどうも直近の部分的な記憶がないようで、自分自身についてある程度は知っているけれども、
大事な事は記憶から消えてしまっている、という事が分かります。
ただ、この記憶喪失設定、どこまでの記憶を無くしているのかははっきり分かりませんので、この状況に陥っている直前の状況も
主人公がどこまで覚えているかもはっきりと分かりません。
という感じですので、まずは主人公が正体不明過ぎて、何が起きて、どれほどのピンチに陥っているのかが、はっきりと分からないままの状態が続きます。
この説明無く物語の目的とピンチの度合いがはっきりしない状態が非常に長いので、
他のソリッドシチュエーション作品のように危険な状況に突然落とし込まれた主人公たちのように観ている側がいきなり危機感を体感する、
という感情移入がなかなかしにくい設定となっています。
これがもし、タイムリミットがあったり、エレベーターの部品が壊れかかっていてあと数回の上下動で完全に墜落してしまう、
等のはっきりしたピンチなどがあれば、それを乗り越えるための手段と目的もはっきりしてくるのですが、
本作には、とにかくそういうはっきりした目的がありませんので、ただただ、しっかりとした頑丈そうなエレベーターの上下動を繰り返す安全なアトラクションで、
オーバーオールのマリオのような服装をしたばっちりメイクの女子が感情をあらわにしながら浮遊感を味わうアトラクションサスペンスが続く作品となっています。
さらに、このエレベーター、中盤以降は、事故で上下動を繰り返しているのではなく、外部からの何者かの操作によってそうなっている事がわかります。
で、そうこうしているうちに、エレベーターの壁面部分が実は大きなモニターになっている事が明らかになります。
で、突然移りだしたモニターに映っているのは、まさかの何者かに拷問を受けている自分の父親!!
で、拷問を加えている人物は、父親にしきりにエンジニアの居所を吐け!!と言っています。
さらに拷問を加え続けて、それを見せられながら絶叫をあげる娘。
要するに、どこかの悪者組織が、何か重要な存在であるエンジニアの居所を知っている主人公の父親に、その場所を聞き出すために
拷問を加えつつ、その拷問方法の一つとして娘である主人公にエレベーターでの上下動という変わった一種の拷問を見せて(エレベーター内にもカメラが付いてます)、
父親からエンジニアの居所を聞き出そうとしている、というとんでもなく回りくどい手法を使う悪者組織とそれと戦う主人公の父親の物語だという事が分かります。
そんな父親の拷問中継を見せられながら、合間に主人公の回想シーンが挿入されます。
少女時代の回想で、どうも主人公には双子の姉がいたようで、両親からは愛されて育ってはいますが、何か他の少女とは違う力を持っていたようです。
ここからが、本作の真骨頂なのですが、この双子の姉が、まさかの(X-men)級の能力者で、自分の体をあっという間に塵のようにしてみたり、何もない所から花を創り出したりするという、
(X-men)で登場したらメインキャラクター間違いなし、ぐらいの凄まじい能力を持っているようです。
勿論双子ですので、主人公にも何かの力がありそうですが、とりあえずそこまで語られることはなく、父親の拷問と主人公の回想が繰り返されていきます。
という事で、中盤以降一挙に雲行きが怪しくなっていきますが、
要するに本作はソリッドシチュエーション作品と見せかけて、実は超自然的な内容のSF作品だった、というびっくり展開が売りの作品という事が分かります。
で、しかもその双子の姉は人類を崩壊させるぐらいの超能力を持っていて、自然を破壊する危険がある、という物凄く地球規模のSF物語になっていきます。
もう、そうなってくるとリアル感も何も一切どうでも良くなってきますので、作品を根底から覆してしまう事になりますが、
はっきりとSF映画という説明をする事なく、出だしは謎シチュエーションの謎映画としてゆっくり展開してきた作品なので、
急に広げてしまった風呂敷をしっかりとしまえるはずもなく、
急速に双子の姉の破壊行動を止めようとする妹が自身の能力に覚醒する物語へと路線変更していきます。
主人子も目は光るは、体が宙に浮くは、体は粒子みたいになるは、で、まるで別の映画のように何でもありになっていきます。
今まで散々物語の目的をはっきりと知らされる事無く、ゆっくりゆっくりと主人公の上下動と回想、父親の拷問を繰り返し見せられて、
やっとどういう物語かがはっきりしてきたら、SF超能力ものだった、というある意味ショッキングな展開の作品となってます。
ジャンルを飛び越える事を売りにしたい作品だとは思われますが、そこに行きつくまでの上下動と回想と拷問の繰り返しが、
父親がされている拷問のように長く、しかもはっきりと目的の分かる後半は、前半の設定を全て台無しにしてしまうような展開となっていますので、
個人的には最後までびっくりもスッキリも気持ちよく騙された、とも思えず、記憶に残るのは濃いメンの主人公の感情が高ぶった表情と、
マリオのようなオーバーオール、のみ、という全編修行覚悟で挑むような作品でした。
さらに、完全に物語が完結しているわけでもありまでんので、機会があれば双子の姉の登場する続編なども製作されそうですが、どうでしょうか、、。
という事で、もしリアル系のシチュエーションサスペンスで始まる作品が、壮大なSF映画に展開していったら?
という一発ネタのような作品ですが、前半はそれなりに緊迫感もありますので、もし鑑賞する機会がおありでしたら、トライしてみて下さい。
あと、日本版ポスターは完全にイメージですね。オーバーオール着てませんので。
作品情報
2021年製作 オーストラリア製作 SFサスペンス
監督・脚本 アンティーン・ファーロング
出演 シャーロット・ベスト、ジョニー・パスヴォルスキー、アンドリュー・ジャック、スーザン・プライヤー
その他のシチュエーションサスペンス作品
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