おすすめ度 ★★★★★☆☆☆☆☆
軽めのSF設定ながらも、しっかりと物語を盛り上げる描写や、見せ場となるアクションも冴え、主演のチャン・イートンの好演も光る娯楽要素高めのレディースアクション!!
作品紹介
日本劇場未公開
今回ご紹介する作品は、アクションとSFがしっかりと描かれたレディースアクションです。
それでは、まずはあらすじから、
2065年、中国のその地区を牛耳る【知能集団】は、遺伝子操作で、人間の潜在能力を引き出し兵士へと利用する実験を進めていた。
そんな中、研究者のフオ・ランは実験の危険性を訴えるが、聞き入れてはもらえず、被験者である二人の子供と共に施設を脱出する。
しかし、追手に追い込まれ、男の子は捕まり、女の子はフオ・ランが自らの命と引き換えになんとか脱出させるのだった。
そして数年後、成長した少女は、祖母とひっそりと追手から隠れながら暮らしていたが、そこへ施設から脱走してきた新しい被験者が現れる事で、事態は一変する!?
武侠ものやアニマルパニックものが中心の近年の中国作品の中では珍しいSFアクション作品です。
主人公を演じるのは、テレビドラマ(那就爱上你)等が人気のフレッシュな若手、チャン・イートン、
主人公と一緒に施設から逃げ出そうとしながらも生き別れとなる男子役で、歌手として絶大な人気を誇り、
映像作品では、テレビドラマ(上头姐妹)等でも活躍しているルー・スーホンが寡黙で影のあるキャラクターを好演しています。
さらに、主人公を助けてくれる、となりの青年役で、(法医宋慈)等の武侠作品に出演しているフー・ハオハンが登場し、
優しいながらも、どこか危なっかしいキャラクターを好演しています。
で、出番は少な目ですが、主人公の母親役で、(ドラッグウォー毒戦)や(アクシデント意外)(詳しくはこちら)(ドリームホーム)、(殺人犯)、(スナイパー)等、
多くの香港映画で活躍しているミシェル・イェが登場し、作品の世界観を広めています。
で、陽気な落語家のような風貌ながらも、組織のボスで、一応ラスボス役として、歌手として絶大な人気を誇り、
映像作品としてはルイス・クー主演の武侠コメディ(神奇侠侣)等に出演しているリャン・ロンが登場し、
独特の雰囲気で悪役を演じています。
内容的には、完全に(ブレードランナー)のようなSFの世界観をベースとしたアクションで、ちらほらと本作のようなSF作品も日本に入ってくるようになりましたので、もしかすると本作のような内容の作品が、
次のメインストリームになっていくのかもしれません。
ただつい最近も、実際にジャッキー作品等で実力も発揮している動ける美女、ムチミア主演の(ゴースト強化能力者)(詳しくはこちら)等、
同ジャンルのレディースアクション作品がリリースされましたが、根底に存在する(X-メン)等のマーベル作品への憧れと、
CG制作会社との兼ね合いがあるのか、CG表現と強すぎて動きが見えない(ザ・フラッシュのもっと極端版)という描写の多投で、
魅せるアクションができるキャストが演じていながら、その動きの素晴らしさが堪能できない、というジレンマの残る作品となっていました。
で、同じようなジャンルの本作ですが、本作は、軽めのSF設定ながらも、その設定を活かしながら、しっかりと感情移入のできるキャラクターも描かれ、
しかも、中盤以降はアクションも今どきの香港映画風(ドニー・イェン作品のような)のしっかりしたアクションが連続する、
という一歩進化を遂げたような作品となっています。
アクションの良さに関しては、主演のチャン・イートンと体型の似ている女性スタントマンの活躍が大きく、
難易度の高いアクションを華麗にこなし、さらに、そのアクションを引き立たせるような監督(か撮影監督かアクション監督)の絶妙なカット割り、
そして、何より主演のチャン・イートンの自身の顔が映るアクションカットでの好演も加わる、という感じで、アクションシーンを作り上げるスタッフ・キャストが
上手く嚙み合って素晴らしいアクションシーンが誕生していると思われます。
正直、これをムチミアのような本当に動けるキャストの出演作品で観たかった、というのもありますが、そうはならないのが今の中国映画界という感じでしょうか。
ただ、主人公の力が覚醒しきってしまうと、念力や身体能力が強すぎて、動きが加速し、例によって瞬間移動のように姿が消えるアクションも入ってきてしまうのが少し残念ですが、、。
そんなアクションの見所の多い本作の物語は、冒頭で、幼い主人公の女の子が、同年代の男子と一緒にある実験施設から母親と共に逃げようとしている所から始まります。
しかし、その際、男の子の方は、手に持っていたある物を落としてしまったために、一人で引き返してしまいます。
でも、追手はすぐそこまで迫っていて、しかも脱出口の扉が閉まってしまう、というどうしようもない状態で、
母親はやむを得ず女の子だけを連れて、男子は残して去ってしまいます。
その後母親も刺客に襲われてしまいますが、なんとか自分の命と引き換えに母親(女の子からは見ると祖母)に預けます。
で、そこから月日は流れて、ティーンエイジャーとなった女の子は、病気のために車椅子生活を強いられていますが、
祖母とひっそりとしながらも、近所の青年とも仲良く、なんとか平和に暮らしています。
そんな時、母親を襲った組織(つまり主人公の女の子が実験されていた実験施設の組織)から逃げてきた大男に出会う事で、事態は進展していきます。
女の子はその実験施設で、人間の潜在能力を高める遺伝子チップを埋め込まれて実験されていたのですが、
10年以上経過した現在でも、まだその実験は続けられながらも効果が安定せず、一番成功していたのが、主人公の女の子だった、という事がわかります。
で、自身のルーツ、そして母親の死の謎と、その命を奪った犯人を求めて少女の旅が始まる、、、
というのが本編の流れとなっていきます。
割とシンプルと言えばシンプルですが、物語を盛り上げるための要素がしっかりと存在し、危険な目からは絶対に孫を遠ざけようとするおばあちゃんや、
とにかく優しく、主人公をサポートし、しかも、危険な格闘技大会に出場し、その賞金で主人公とそのおばあちゃんに富裕層地区への移住権をあげようとする青年、
そして、生き別れになり、悪の組織に墜ちるしか選択肢の無かった男子との激突等、作品の世界観を盛り上げる要素が上手く挿入されていきます。
ただ、後半は勿論、主人公の力が覚醒していく展開になるのですが、流石に、、、というぐらいの極端さで、
さっきまで車椅子にのって移動していた不幸な境遇の少女が、一瞬でスーパーサイヤ人ぐらの超人になって、完全無欠になってしまってピンチも何も全て吹き飛んでしまう、
という展開は、そこに行き着くまでが非常に丁寧に描かれていただけに、少し残念な展開となっています。
ついでに、おばあちゃんや、となりの青年も、一切登場しなくなる、というか、もうどうでも良いぐらいに完全無欠状態になってしまいます、、。
という事で、残念なところも少々ある作品ですが、全体通してしっかりとした娯楽映画になっていて、しかもアクションシーンだけを抜き出しても十分楽しめるぐらいの作品となっていますので、
香港映画好き、アクション映画好きの方等、ご鑑賞されてみてはいかがでしょうか。
結構楽しめますよ。
作品情報
2022年製作 中国製作 SFアクション
監督 チャオ・ツォン
出演 チャン・イートン、ルー・スーホン、フー・ハオハン、ミシェル・イエ、リャン・ロン
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