カンフー映画としてのおすすめ度 ★★★★★☆☆☆☆☆
武侠系アクションの人気の舞台(紅蓮時)をベースに人気のフォン・サイヨとハン・カーロ達を中心とした少林寺焼き討ち設定を当て込んだリンゴ・ラム監督ツイ・ハーク製作によるカンフーアクション!!
作品紹介
日本劇場未公開
今回ご紹介するのは、リンゴ・ラム監督、ツイ・ハーク製作によるカンフーアクション作品です。
それでは、まずはあらすじから、
18世紀中国、清朝政府の弾圧による少林寺焼き討ちによって、少林寺の門弟たちは次々に命を落としていった。
運よく逃げ延びた者たちも、捉えられ、凄まじい拷問が繰り広げられる監獄、紅蓮寺に幽閉され、地獄のような日々を過ごしていた。
そんな時、一人の女性を救うために戦いに参加した英雄方世玉も捉えられ、投獄されるが、兵士側の人物に、見知った者を発見するのだった!?
古装片ブームの後期にリンゴ・ラム監督、ツイ・ハーク製作によって製作されたカンフーアクション作品です。
ツイ・ハークと言えば、一時期は【香港のスピルバーグ】と言われ、(男たちの挽歌)で香港ノワールブームを創り出し、
(チャイニーズゴーストストーリー)で武侠ゴーストストーリーブームを創り出し、
(ワンス・アポン・ア・タイム・インチャイナ)シリーズでワイヤーワークとカンフーアクションを見事に融合させたカンフー映画ブームを創り出し、
(スウォーズマン剣士列伝)で武侠アクション等の古装片ブームを創り出す、
という常に大きな流れを創り出す映像作家として香港映画界をけん引するような作品を多く製作していました。
そんなツイ・ハークが自ら作り出した時代カンフー映画のブームの後期に選んだ題材は(紅蓮寺)です。
(紅蓮時)が登場する作品はこれまでもモノクロ作品の時代から多く製作されていて、その都度色んな設定を加えた舞台背景として親しまれてきました。
残念ながら、日本で紹介されている作品はメン・フェイ主演の(妖術大変化)(詳しくはこちら)以外ほとんどありませんが、
大体共通するのは、悪の巣窟、というか悪人が悪事を働いたり、善人を閉じ込めている(秘密の)場所、といったイメージの設定が多く、
最終的に正義のヒーローがその悪の巣窟を焼いて滅ぼしてしまう、という流れの作品が多いように見受けられます。
そんな(紅蓮寺)を、そのまま普通に映像化し直すだけでは、パンチに欠ける、という事で、ブームを創り出す名人ツイ・ハークはそのお馴染みの設定に、
少林寺の焼き討ちで逃れてきた少林僧たちと、少林英雄、フォン・サイヨとハン・カーロの物語を融合させて、
少林寺カンフー作品として新たに復活させる、というアイデアマン、ツイ・ハークの本領発揮作品となっています。
設定としては凄く面白い発想ではないでしょうか。
ただ、本作、前半こそ広大な砂漠の荒野で、清朝政府とフォン・サイヨとのチェイスやカンフーアクション等テンポ良くアクションシーンがあって良いですが、
紅蓮寺に幽閉されてからは、基本的にその紅蓮寺のみ(要するに洞窟のようなところでのセット撮影のみ)で物語が展開されますので、
狭い範囲で延々と争いごとをしているだけ、という感じで、非常に停滞ムードに入ってしまうのが、少し残念な作品となっています。
この閉塞感というか、停滞感というか、箱庭感というか、なんとも表現しにくいですが、とにかく物語展開がほとんどないので、
途中カンフーアクションが何度も挿入される割には、ハラハラドキドキ感も薄い作品となっています。
一応、この紅蓮寺には、誰が設計したのか謎の殺人トラップが仕掛けられていて、脱出しようとすると必ず何かの仕掛けで命を落とす、
というB級魂溢れる設定にはなっていて、この紅蓮寺を仕切るラスボスは、自らも長年この紅蓮寺から出ようとしても出られない、
というぐらいに誰も入ることはできても出ることはできない、という脱出不可能な施設なはずですが、部下の兵士たちは何故か出入り自由、
というルールの良く分からい仕掛けとなっていたりするところも、ちょっと盛り上がりを削ぐ結果となっています。
この辺の設定は近年中国映画で製作された秀作、(機械城モータルラビリンス)(詳しくはこちら)等にも通じる内容ですので、
もしかすると(機械城モータルラビリンス)の製作者は本作を参考にしているのかもしれません。
設定上やや難はありますが、主演の(酔拳3)等のウェイ・ティンサンが演じるカンフーアクション自体は素晴らしく、常人離れした身の軽さで、
縦横無尽に飛び回り、中盤登場するハン・カーロが使用する虎拳とフォン・サイヨの鶴拳との激突は、本作中出色の名勝負となっています。
ただ、ウェイティン・サン、身のこなしは物凄く軽く、超絶アクションが素晴らしいのですが、なんとなく身軽すぎる、
というか、軽やか過ぎるために、いまいち力強さを感じないので、大勢の敵を力でなぎ倒していくシーンの多い役柄には、少し違和感を感じてしまいました。
恐らく、強さを表現するよりも、動きの美しさを魅せるタイプのスペシャリストという感じではないでしょうか。
どちらにしても、素晴らしいアクションスターであることは間違いないのですが。
という事で、舞台設定や、物語の進行に少し飽きを感じてしまう事もあるかもしれませんが、カンフーアクションは素晴らしいシーンの連続となっていますので、
アクション映画好き、香港映画好きの方等ご鑑賞されてみてはいかがでしょうか。
惜しくも亡くなられたリンゴ・ラム監督のカンフー映画は貴重ですので、それだけでも価値がありますよ。
作品情報
1993年製作 香港製作 カンフーアクション
監督 リンゴ・ラム 製作 ツイ・ハーク
出演 ウェイ・ティンサン、カルメン・リー、チン・トン
その他のレアカンフー作品
ニコイチ映画で有名なフィルマーク社によるアレクサンダー・ルー主演作(激突!魔拳塾)はこちら
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