カンフー映画としてのお薦め度 ★★★★★★☆☆☆☆
奇妙な法術師たちの戦いを、手作り感満載の特撮と、超絶カンフーアクションでブレンドした、ユエンブラザース製作によるファンタジックアクション!!
作品紹介
日本劇場未公開 東京国際ファンタスティック映画祭87で上映
今回ご紹介するのは、ユエンブラザースが製作した法術師が活躍するファンタジックアクション作品です。
それでは、まずはあらすじから、
1663年、跡取りを巡って争いに発展した大法師と将軍カオの戦いは、その後何年も続き、
世間からカオが身を隠す、という形で休戦状態になっていた。
それから14年、孤児ジュコンとともに身を隠していたカオの元に、ついに大法師の魔の手が迫るのだった!?
(ドランクモンキー酔拳)のユエン・ウーピン監督がゴールデンハーベスト社で製作したアクションファンタジー作品です。
原題の(奇門遁甲)とは、遁甲盤という円形の盤を使用して様々な事柄を占った占術の一つで、そこから派生して呪術、法術などを主流とする流派も栄えていったそうです。
ですので、本作で色々な流派の法術師たちが登場しますが、ユエン・ウーピン流にファンタジックカンフーアクションとして誇張して描かれてはいるものの、
そういった世界感に関しては、存在していたようです。
因みに本作は2017年にツイ・ハーク製作・脚本の元、ユエン・ウーピン監督自身の手でリメイクが製作されていますが、中国映画祭で上映されたのみで、一般劇場未公開でパッケージソフトも未発売となっていますので、今後の公開も厳しいかもしれません。
さらに2020年にはツイ・ハーク原作で再度リメイクが製作され、そちらには本作にも出演しているエディ・コーも出演しています。
こちらは、日本で劇場公開はされなかったもののDVDでリリースとなりましたので、ご興味のある方がご鑑賞されてみてはいかがでしょうか。
という事で、本作は、ユエン・ウーピン監督が、独自の感性で、ファンタジックな法術師合戦とカンフーアクションを融合させた、娯楽作品となっています。
本作はその後続く、ユエン・ウーピン監督作(妖怪道士)シリーズや、同じユエンブラザース参加の(妖怪奇兵)なども生み出していくことになります。
また、本作で描かれた法術師同士の呪術合戦は、他の様々な呪術合戦を描いた作品などにも影響を与え、(霊幻道士)や、(チャイニーズゴーストストーリー)(リメイク版、詳しくはこちら)などにもその影響が見られます。
とはいっても、本作も同時期に製作された同じゴールデンハーベスト社製作、サモ・ハンキンポー監督・主演の(妖術秘伝鬼打鬼)の影響を大きく受けているように感じられますので、
そのような流れが既にできていた、という事でしょうか。
というような流れで製作されたファンタジックアクションですが、本作の魅力としては勿論ユエンブラザースによる超絶カンフーアクションが第一に挙げられますが、
それにプラスして魅力的なのは、その味わいのある手作り特撮シーンが挙げられます。
それなりの規模の作品ではありますが、特撮部分に関しては、かなりの手作り感で、頑張れば素人でも製作できそうなぐらいのチープさ(良い意味です)です。
誰も真似できない超絶カンフーと、誰でも真似できそうなチープな特撮、この二つが本作最大の魅力となっています。
で、その特撮ですが、円谷作品や、老舗ショウブラザースで日本の特撮チームを招いて製作された(北京原人の逆襲)(詳しくはこちら)ような精巧なミニチュアを使用したような技術力を必要とする系列の特撮ではなく、
どちらかというと奇抜な想像力をメインに押し出したような、もっと分かり易くいうと、思いついても誰もやろうとしないような系列の特撮となっています。
敵に攻撃を受ける時に首だけ衣類の下に落ち込んで、攻撃をかわして、今度は首が出てくると思いきや、拳が出てきて、敵を攻撃して、手を開いたら、手のひらに目がついている技、とか、
上下逆さまに等身大の人形を抱きかかえるように持って(自身は逆立ち状態)、一人を二人に見せかけて、時を攻撃し、相手の攻撃を受けるも、上下逆さまなので、
顔を攻撃されても、顔の部分は実際はバリボテを股に挟んでいるだけなので、痛みを感じない。
で、隙をついて相手を攻撃する、という騙し技。
という感じで、トリック撮影のようなファンタジックなシーンの合間に超絶カンフーシーンが挟まれていきます。
因みにこの騙し技、同時期製作のゴールデンハーベスト社製作、ユエン・ウーピン監督で、ユン・ピョウ主演のカンフー大作(ツーフィンガー鷹)(詳しくはこちら)でも、
本作で悪役を演じたユエン・シンシーが同じようなキャラクターの悪役で出演しており、同じように二人羽織技で、本作で兄弟子を演じているリョン・カーヤンを倒してしまう、
というシーンが存在しますので、よほどお気に入りの技なのではないでしょうか。
一応、本作では、この二人羽織技のような変装技を(奇門遁甲)だと表現して、こういう技を極める事が、法術界を極める事だと、定義して描かれています。
そんなチープなトリック撮影的な特撮が楽しい本作ですが、そのファンタジックなシーンと超絶カンフーが描かれる肝心の物語ですが、
これが、なかなかに奔放な展開の物語となっています。
まずは、開幕早々に、寝れ衣を着せられた、ユエン・ウーピン監督作品常連のエディ・コーとかつての部下たちとバトルが描かれ、
そこから発展してブランディ・ユエン演じる、子供のころから壺の中で育てられた可哀そうな白塗り壺人間とのバトルへと発展します。
ここは、緊迫感のあるシーンから急激にコメディシーンになりますので、
濡れ衣を着せられた上に奥さんを目の前で殺される、という悲劇的なシーンから超絶カンフーに発展し、そこから急激にコメディアクションになり、
その後、人質に取った皇子を死なせてしまう、という悲劇的な展開に急激に戻ります。
しかも、その間開幕10分程度です。
あまりの展開の速さなので、物語展開に付いて行くのがやっと、という感じですが、
とりあえず、この作品にとっての物語展開はあまり重要ではないという事がこの重要そうなシーンをまるでダイジェストのように開始10分程度でまとめてしまう構成で、過ぎに分かってしまいます。
で、その後すぐに物語のメインの時代である14年後に舞台は移り、
主人公のサイモン・ユエン・ジュニアと年老いたエディ・コーが2人でひっそりと暮らしているところに、かつての裏切り者であり、皇帝のご意見番である大法師(ユエン・シンイー)が捜索の手を伸ばしてきます。
14年間見つからなかったのに、エディ・コーがその日、飲み屋で酔っぱらって、自分がかつては皇帝直属の部下で、皇子にカンフーを教える師範だった、事を大声で言いふらしてしまいます。
で、速攻で大法師に見つかって、また大法師とのバトルに移ります。
そこまでで15分から20分ほどです。なので、さっき戦ったばかりですが、その間14年の月日が経過しています。
そこでサイモン・ユエン・ジュニアは、かつて人質となった皇子ではなく、全く無関係の捨て子だという事がいきなり、わかります。
皇子と思っていたら実は別人だった、とかのドラマは一切ありません。
で、大法師も別人だと分かっているのに、、そのまま皇子のフリをしろ、と言います。
これは、どう考えても、その後の展開で皇子のフリをさせたサイモン・ユエン・ジュニアを宮廷に潜入させて操り人形のように利用する展開になる、
と思いきや、まさかの、皇子ネタは、そこであっさり終了してしまいます。
で、大法師とのバトルで、目を負傷してしまったエディ・コーを治療するための薬を調達するためにサイモン・ユエン・ジュニアが街へ繰り出しますが、
たまたま歩き疲れて、もたれかかった他人の家の玄関の扉が開いてしまい、そのまま誘われように勝手に入ったら、そこにたまたま、法術師の達人のお爺さんとお婆さんがいて、
成り行きで、薬を処方してもらって、それで縁ができて、その後もお世話になる、
という結構無軌道な物語展開となっていきます。
恐らく、思いつきで軌道修正していった結果、当初想定していた物語とはズレてしまった、という事ではないでしょうか。
で、エディ・コーは残念ながらあっさり亡くなってしまい、物語は大法師とサイモン・ユエン・ジュニアの面倒を見るお爺さんとお婆さんの物語となっていきます。
一応、既に亡くなっている大師匠であるユエン・シャオティエン(壁に書かれた似顔絵で登場)に弟子入りした、という流れですので、おじいさん、おばあんさんは兄弟弟子です。
そんな二人とともに大法師の攻撃も撃退し、不穏な捨て台詞とともに大法師は姿を消します。
で、大法師とのバトルの翌日、力試し的に【全国法術大会】にサイモン・ユエン・ジュニアは出場することになりますが、
そこに謎の黒服の男が紛れています。
順調に大会のメイン競技である3つの関門をクリアしていき、いよいよ優勝目前といったことろで、黒服の男が大法師であることがわかります。
バレバレですけど。
で、クライマックスの法術合戦へと突入していきます。
そこは、ユエンブラザース印のアクションと、チープトリック特撮の夢のコラボレーションといった感じで、独創的なシーンのオンパレードとなっています。
という感じで、ファンタジックなシーンが多い分、いつものユエン・ウーピン作品よりはカンフーアクションが抑えめではありますが、
ユエン・ウーピン監督が、その後ハリウッドに渡り、(マトリックス)のアクション監督として世界的に有名になった後は、ここまで荒唐無稽な作品も少なくなってしまいましたので、
本作はこの時期特有の、ユエン・ウーピン作品の手作り感が味わえる貴重な作品群の中の中心にある作品だと思われますので、機会がありましたら是非ご鑑賞ください。
観ていて、なんか楽しくなる、懐かしい雰囲気満載の作品ですよ。
作品情報
1982年製作 香港製作 SFXアクション
監督・脚本 ユエン・ウーピン 製作総指揮 レイモンド・チョウ 制作 レナード・ホー 武術指導 ユエン・ウーピン、ユエン・チュンヤン、ユエン・シンイー、ブランディ・ユエン、サイモン・ユエン・ジュニア
出演 サイモン・ユエン・ジュニア、ユエン・チュンヤン、ユエン・シンイー、リョン・カーヤン、エディ・コー、ブランディ・ユエン、ウォン・ハー、
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