田舎町に突然現れた謎の殺人カーが巻き起こす事件と、住民たちのドラマが上手く融合し、(ジョーズ)+(激突!)な展開をスリリングに描いた傑作カルトホラーアクションであるオリジナルに対して、同じシーンを描きながらも、設定を近未来B級アクションに置き換える、という思いきり過ぎた改変によってオリジナルの良さがほとんど失われてしまったリメイク版!!
ザ・カー(THE CAR)96分
おすすめ度 ★★★★★★☆☆☆☆
作品紹介
1977年8月13日公開
今回ご紹介するのは、(激突!)と(ジョーズ)を融合したようなオカルトホラーカーアクション作品です。
それでは、まずはあらすじから、
ユタ州の田舎町、サンタイネス。平和に人々が暮らす穏やかなその街に突然のエンジン音と共に、黒塗りの車がやって来る。
その車は神出鬼没で、突如現れて人々に襲い掛かり、そしてどこかへと去っていくのだった。
あまりの被害者の続出に、保安官のウェイドは、警察官総出で車の暴走を阻止するために、決死の作戦を決行する!?
田舎町の人々を襲う殺人カーを描いたオカルトアクション作品です。
1977年製作という事で、1973年に製作されたスピルバーグ監督の(激突!)と同じく1975年にスピルバーグ監督で製作された(ジョーズ)を融合しつつ、
そこに1973年に製作された(エクソシスト)や1976年に製作された(オーメン)のような当時流行りのオカルトホラー要素も加えた、ホラーアクション作品となっています。
ただ、難しく凝ったドラマが展開されるわけではなく、荒野の町はずれに突然現れた正体不明の殺人カーが、次々と住民を襲う、
というシンプルなストーリーで、そこに住民達のそれぞれのキャラクターとドラマが少しづつ描かれていきます。
で、襲い方も最初は若い男女カップル二人組というホラーのお約束的な描写であるものの、いざ本格的になってくると、
大きなイベントの数十人で構成される音楽隊(ティーンエイジャー)をまとめて襲ったり、警官隊を蹴散らしていったり、
という感じで、こっそり一人ずつじわじわ犠牲者が増えていく、というサスペンス的な流れではなく、多くの公衆の面前で、
堂々と豪快に人々に襲い掛かる、というパニックもの的な要素も加わっていきます。
この辺の展開は恐らく、(ジョーズ)の影響を大きく受けているようで、皆で逃げながら、安全地帯を目指す、
という非常にスリリングな展開が楽しめます。
ただ、襲ってきているのが、トレーラーや巨大でどう猛な動物ではなく、わりと逃げ切る事もできそうな乗用車、というのが少々難ではありますが、、、
一応、後半までは中に運転手が乗っているかも?という描き方ではあるので、演出上は、(激突!)のように正体不明のサイコ殺人ドライバーが、
人々を襲っているが、実は中には誰も居なかった、という意外性が売りになっている作品ですので、公開当時は、結構衝撃的な展開だったのではないでしょうか。
ただ、今現在となっては、【人が乗っていない死神カーが人々を襲う映画】としてオカルト系作品としてのアピールがメインになっていますので、
本来の目線では見れないのが少々残念です。
で、死神カーであることが発覚した後半は、完全にカーアクション作品となっていきますので、クライマックスは、警察チームと悪人と思っていたキャラクターの意外な活躍もあり、
大活劇展開へと突入していきます。
砂漠の荒野と崖近辺で繰り広げられるカーアクションは、非常にスリリングで、また(ジョーズ)のように命がけの決死の戦いが描かれていきますので、
見所満載で、ラストの大決着まで、見逃せない展開が続きます。
最初から最後まで非常にテンポも良くスリリングで、しかも短い上映時間にも関わらずしっかりとキャラクターとドラマも描かれていきます。
そのドラマの主人公を演じるのは、今をときめくジョシュ・ブローリンのお父さんでもあるジェームズ・ブローリンで、
二児のシングルファーザーで、新しい恋人と二人の子供たちの関係を前向きにしていこうと努力する真面目な父親でありつつ、
警察隊を率いるリーダーとして真っ向から殺人カーに立ち向かっていくバイク乗りの頼れるヒーロー役を好演しています。
特に、後半に用意されているバイクVS殺人カーのカーチェイスは非常に手に汗握る名シーンとなっています。
また、悪を許せず、DVを受けている元カノを心配する警察署長や、その元カノの現在の夫で、DVを加えている夫の意外な活躍、
断酒から2年経っていながらも、親しい人々が次々と犠牲になっていく状況に、精神的に追い込まれて、再び飲酒に走ってしまう繊細な警察官を演じたロニー・コックスの好演も作品を盛り上げていきます。
という事で、1977年に製作された本作は、色んな作品のあやかり要素のある作品ながらも、娯楽映画としてしっかりと楽しめる作品となっています。
作品情報
1977年製作 アメリカ製作 アクションホラー
監督 エリオット・シルヴァースタイン
出演 ジェームズ・ブローリン、ロニー・コックス、キャスリーン・ロイド、ジョン・マーリー、R・Gアームストロング
ザ・カー:ロード・トゥ・リベンジ(THE CAR:ROAD TO REVENGE)89分
おすすめ度 ★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
作品紹介
日本劇場未公開
という事で、名作アクションホラーの42年ぶりのリメイク作品です。
それでは、まずはあらすじから、
悪徳検事であるカドックは、犯罪集団ナイトの機密情報の入ったチップを手に入れが、
その事がきっかけで、ナイトに襲われる事となり、ついにはビルから突き落とされて命を落としてしまうのだった。
しかし、カドックが落下した先には愛車【ラザルスワン】があり、無人のはずのその車が不気味にエンジン音を上げ、ナイト一味に次々と襲い掛かるのだった!?
名作アクションホラーの42年ぶり、待望のリメイク作品です。
監督・脚本は、ロジャー・コーマン監督のカルトなバイオレンスカーアクション(デスレース2000年)のジェイソン・ステイサムが出ていない方のリメイク作品(デスレース2050)を監督したG・J・エクスターンキャンプです。
内容も(デスレース2050)と似通っていて、両作品共にユニバーサル製作で、前作が好評だとも思えないので、
初めから2作品ともリメイクする計画になっていたのではないでしょうか。
という事で、あの牧歌的な田舎町の住民が、突然現れた謎の殺人カーに逃げまどいつつも、決死の作戦でなんとか激闘を制する傑作アクションホラーが、
まず、はっきり言ってしまうと、
まさかの超B級テイストな近未来SFアクション映画として蘇る、という誰も望んでいないような復活を遂げた迷作となっています。
正直、オリジナルのファンであればあるほど、受け入れなれないような180度違う世界観となっています。
ただ、オリジナルを想起させるような同じシチュエーションは何度となく登場しますので、
脚本も担当しているG・J・エクスターンキャンプ監督、恐らくオリジナルへのリスペクト愛に関しては人一倍あるのではないでしょうか。
それでも、同じシチュエーションで謎の殺人カーが人を襲うシーンが連続しても、これだけ設定や描き方が変われば、印象も変わるのか、というぐらいに、
オリジナルにあったハラハラ感はほとんど感じられない作品となっています。
原因は明らかで、オリジナルの殺人等の大犯罪とは無縁の平和で牧歌的な田舎町で巻き起こる、突然の、まるで正体不明の自然災害のような殺人カー襲来事件という
平和な日常と突然の災害という対比が作品の緊迫感を盛り上げていたのに対して、
リメイク版の方は、犯罪者が裁判で裁かれるや否やその場で処刑する、
という無茶苦茶な法制度がまかり通っている、暴力と死に溢れた近未来、という(デスレース)の世界観そのままのようなバイオレンスに溢れた世界観で、
そこに一台の乗用車が、人を襲う、という全体から見ると非常にこじんまりとした出来事を描いても、緊迫感を感じる事は逆に難しいのではないでしょうか。
さらに、今回は殺人カーの存在自体が、オリジナルのような完全な正体不明ではなく、まるで、主人公のように登場する悪徳検事が、
悪党の悪事の証拠を掴んだので、逆に恨みをかってしまって襲われ、ビルから突き落とされた下に調度黒い雰囲気満点の自家用車が停めてあって、その結果何故か車に憑依する、
という、ある意味車の【中身】がはっきりとした設定になっています。
正体がはっきりしていますので、目的もはっきりしていて、即座に自分を死に追いやった悪党に復讐するために悪党を追い詰めていきます。
ここが、また本作の乗り切れないところで、追われる側も悪党なら、追う側も悪党、しかも感情移入出来るタイプの悪党ではなく、
完全に生粋のゲスい悪党、という部分が感情移入を難しくしています。
では、誰が主人公なのか?というと、殺人カーが人間時代に、ゲスくストーキングしていた元カノ、と事件を調べているうらぶれ刑事、
という、なんとなく、その辺にいたら、消去法で、いつの間にか主人公になっていた、という感じの二人で、
そのなんとなく感が、また感情移入の妨げになっています。
さらに、この殺人カーが、実際に復讐する悪党一味が、まるで少年漫画に登場するような【ザ・SF悪党】という感じの、
例えるなら(北斗の拳)の前半ぐらいに『あ・べ・し』と言って吹き飛びしそうな感じの、あくの強い面々で、
片腕サイボーグや、近未来ガンマン、ウィリー・ウォンカに、片腕火炎放射器のパンクガール、しかもそれらを束ねるのが(マトリックス)で見たことのあるような白ラン、
という個性的、というか漫画的な面々で、とにかくオリジナルにあったような緊迫感は何一つ感じられないような阿保みたいな登場キャラクターとなっています。
カーアクション好き、というのも伝わってきますが、バイクと殺人カーのチェイス等、オリジナルと同じシチュエーションになればなる程、
コレジャナイ感が募っていってしまいます。
これが、もし、名作のリメイクではなく、オリジナルのB級アクション作品として製作された作品でしたら、それなりに楽しめるとは思われますが、
流石に、ここまでオリジナルを踏襲して、タイトルも(THE CAR)と付けている作品を別物とも思い難く、
結果的に何から何まで全部違う、という印象しか残さない作品となっています。
という事で、42年ぶりの人気作のリメイク、しかも日本では製作から3年経過してやっとリリース、という期待値が高まった状態でしたが、
内容的にはちょっと残念なリメイクとなっていますので、特にオリジナルの大ファンでどうしても鑑賞しておきたい、という方以外はオリジナルだけの鑑賞でも良いかと思われます。
因みに、オリジナルで印象的な役柄を演じたロニー・コックスがリメイクにも出演していますが、特に目立った活躍という感じではなく、顔見世的な登場でした。
作品情報
2019年製作 アメリカ製作 SFアクション
監督・脚本 G・J・エクスターンキャンプ
出演 グラント・バウラー、キャスリーン・マンロー
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