お薦め度 ★★★★★★★★★★
イップ・マン 序章(葉門 IP MAN)
作品情報
2008年製作 中国・香港製作 カンフーアクション
第28回香港金像賞 最優秀作品賞・最優秀監督賞・最優秀主演俳優賞・最優秀助演俳優賞・最優秀アクション指導賞・最優秀作曲賞 受賞
監督 ウィルソン・イップ 製作 レイモンド・ウォン アクション監督 サモ・ハンキンポー
武術指導 トニー・リャン 詠春拳総顧問 イップ・チュン
音楽 川井憲次
出演 ドニー・イェン、サイモン・ヤム、ルイス・ファン、ラム・カートン、池内博之、リン・ホン
あらすじ
1935年、武術が活発で知られる中国広東省佛山。
そこで暮らすイップ・マン(ドニー・イェン)は街でも有名な詠春拳の達人であった。
ある日、北部地域からカム・サンチャウ(ルイス・ファン)と名乗る荒くれ者が佛山中の武術道場の師範に戦いを挑み打倒していっていた。
道場破りである。
その後、イップ・マンのところにも現れ、勝負を挑む。
しかし、難なくカム・サンチャウをあしらったイップマンは「勝敗を分けるのは流派の違いではなく、本人の努力次第だ。」と諭す。
平和を取り戻した佛山だったが、1938年10月日本軍の侵攻により、激動の時代を迎えるのだった、、。
感想
ドニー・イェンの出世作(イップマン)シリーズの第1作目です。
シリーズ通して鑑賞してみると、本作の時代背景が戦前、戦後という激動の時代背景もありイップマンが置かれている状況も目まぐるしく変化してきます。
そのため、やはり本作が物語的にも一番盛り上がりを見せるシーンが多く含まれています。
サモ・ハンキンポーが担当したアクションシーンも本作ですでにイップマンアクションの基本が惜しげもなく披露されており、後に生み出される数々の名シーンの布石となっています。
物語的にはラストの日本軍との試合シーンがクライマックスとなりますが、個人的には前半に登場するルイス・ファンとのバトルが一番の見どころではないかと思います。
ルイス・ファンといえば古くは日本のコミック原作の(力王)での主演で若々しいアクションを披露していましたが、その後(ブラックマスク武神黒侠)など出演作品は多数あったようですが、日本まで入ってこないかなり規模の小さい作品でしか見かけなくなっていました。
イケメンで動きも素晴らしいのに残念に思っていたのですが、本作の荒くれ北派武術家、というハマり役を得て、一躍メジャーな存在となったようです。
その後は(イップマン)シリーズの次作(イップマン葉門)や、ジェット・リーと共演した(ドラゴンゲート空飛ぶ剣と幻の秘宝)、ドニー・イェンと再び共演した(カンフージャングル)などで大活躍しているので今後も活躍が期待できそうです。
そのルイス・ファン演じる荒くれ者カム・サンチャウがイップマン家に強引に押し入り、勝負を挑むが、争いごとを好まず勝負を受けようとしないイップマンと交わした会話がイップマンという人間の人となりが分かる印象的な会話となっていました。
カム・サンチャウ『詠春拳の開祖は女らしいな。だから女々しく、女房を恐れているんだな。』
イップマン『恐れているのではない。大切に思っているのだ。』
こういう何気ない会話や小さな出来事でイップマンという人物像を詳細にアクションを踏まえて説明していった本作はまさにイップマンの序章、といった内容となっています。
イップ・マン(葉門2 IP MAN2)109分
お薦め度 ★★★★★★★★★☆
作品情報
2010年製作 中国・香港製作 カンフーアクション
第30回香港金像賞 最優秀アクション指導賞受賞
監督 ウィルソン・イップ 製作 レイモンド・ウォン アクション監督 サモ・ハンキンポー
音楽 川井憲次
出演 ドニー・イェン、サモ・ハンキンポー、ホアン・シャオミン、リン・ホン、ルイス・ファン、ケント・チェンサイモン・ヤム、ロー・マン、フォン・ハックオン、ダーレン・シャラヴィ
あらすじ
1949年、イップ・マンは妻と息子と共に香港に移住していた。
知り合いの協力で武館を開いたイップマンはそこで一番弟子ウォン(ホワン・シャオミン)と出会う。
ウォンの協力で順調に弟子を増やしていったイップマンだったが、血気盛んな弟子とライバル流派の洪家拳の門弟との間で争い事が起こる。
争いを収めるため洪家拳門弟の師匠であるホンを訪ねるイップマンだったが、ホンはこの地区の様々な流派を束ねる元締めだった。
ホンは、今後武館を開くなら自分たちにその武術の実力を認められ、会費を納める事を条件としてきたのだ。
やむを得ず拳を交えるイップマンだったが、金銭要求に対しては断固として受け入れる事はなかった。
しかし、この金銭要求にはイギリス統治下の警察組織の汚職に関わる重大な理由があったのだった、、。
感想
前作から2年後に製作された(イップマン)シリーズ第2作目です。
時代背景的には前作から約15年ほどが経過していて、登場人物もその時の流れを感じさせます。
いきなり衝撃的なのは前作で色々お世話になったサイモン・ヤム演じるチョウ・チンチュンが前作の直後ぐらいに頭を銃弾で撃たれていてイップマンの事も判別できないぐらいになっている事です。
結構重要なキャラクターだったので回想シーンのみで実は撃たれていた、という説明はちょっと残念でした。
その他の前作からのキャラクターとしてルイス・ファン演じる荒くれ者カム・サンチャウがすっかり良い人になっていてお助けキャラとして登場します。
こちらも前作では重要なキャラクターだったのでもうちょっと物語面、アクション面でも活躍して欲しかったというのが正直なところです。
と、家族以外の前作からの引き続き登場組が少々がっかりな分、本作から登場のキャラクターが非常に良い味を出しています。
ライバルとなる洪家拳の師匠ホン役のサモ・ハンを筆頭に警察官で敵役的なキャラクターかと思いきや実はとても良い人なケント・チェン、一番弟子役でホワン・シャオミン、イップマンに勝負を挑む猿拳の師匠役ロー・マン、八卦拳の達人役にフォン・ハックオン、ラストバトルのボクサー役でダーレン・シャラヴィ、と個性豊かなキャラクターが多数登場して物語を盛り上げてくれます。
中でも刑事役のケント・チェンと猿拳の師匠ロー・マンは完結篇でも登場するほどシリーズの顔となっていきます。
個人的にはその昔、多くのカンフー映画の名作を多数製作していたショウブラザーズ社の一時期看板俳優だったロー・マンとジャッキー作品やサモ・ハン作品での悪役で大活躍していたフォン・ハックオンの元気なカンフーアクションが観れて大変楽しめました。
前作のラストバトルは詠春拳VS日本の空手、本作のラストバトルは詠春拳VSイギリスのボクシングと異種格闘的な盛り上がりを見せる後半戦ですが、
個人的には今回もラストバトルより前半にあるサモ・ハンとのバトルが一番興奮しました。
机の上でのバトルという事で正直ワイヤーが多めのファンタジックにも見えるアクションではありますが、そういう破天荒ともとれるアクションを物凄く説得力あるように描いています。
この机の上でのアクションはサモ・ハンが監督した伝説的詠春拳映画(ユン・ピョウinドラ息子カンフー)でも、少し触れられており、狭い範囲での技の応酬をどれだけこなせるかで、その技の熟練度が表現されています。
そのような状況で次第に親交を深めていくホンとイップマンですが、イギリス人ボクサーとホンが戦い、何度も倒れながら、イップマンの静止を振り切ってでも戦うために何度も立ち向かったホンが言った言葉がそのままこの作品のテーマとなっているようでした。
イップマン『ホン師匠、もう棄権された方が良いのではないですか?』
ホン『侮辱は許す事はできない。』
イップマン『誇りより命の方が大切なのではないですか?』
ホン『私は自分のために戦っているのではない。中国武術の誇りのために戦っているのだ。』
この熱いシーンを受けてラストバトル後にイップマンはインタビューに答えます。
『私が戦うのは優劣を決めるためではない。身分の違いはあっても品格は同じであって、お互いを尊重し合う事が一番大切な事である。』
イップ・マン継承(葉門3 IP MAN3)105分
お薦め度 ★★★★★★★★☆☆
作品情報
2015年製作 香港・中国製作 カンフーアクション
監督 ウィルソン・イップ 製作 レイモンド・ウォン アクション監督 ユエン・ウーピン
音楽 川井憲次
出演 ドニー・イェン、マックス・チャン、リン・ホン、マイク・タイソン、パトリック・タム、レオン・カーヤン
あらすじ
1959年、香港で暮らすイップマンは、息子チュンが就学している学校の土地買収の争いに巻き込まれる。
そんな騒動の中息子の同級生の父親チョン・ティン・チー(マックス・チャン)と知り合う。
しかし、初対面なのにチョンはイップマンにライバル心ともとれる態度を見せる。
実は、チョンも詠春拳の達人であり、同門でありながら有名で皆の尊敬を集めるイップマンに対し密かにライバル心を燃やしていたのだった。
同門の出でありながら、交わることのない関係は、チョンが金を稼ぐために黒社会の手先となってしまう事でついに激突する事になる。
感想
前作より5年ぶりの(イップマン)シリーズ第3作目です。
本作の時代背景は戦後から年月が経ち始め、イップマンを取り巻く生活も前作ほどの貧困状態という事もなくなり、そういった意味では平和な日々として物語はスタートします。
正直、その時代背景もあり、息子が通う学校の土地を買収しようとしている組織と戦う、というストーリーは戦前、戦後と激動の日々の戦いを描いた前2作と比べるとシリーズ中最も日常生活に寄り添った物語となっています。
しかし、本作はそれまでの華々しい活躍をしてきた有名人であるイップマンの陽性と、同じ流派ながら恵まれない人生を送っている日陰の存在、チョン・ティン・チーとを日常生活の中の出来事において対比させる事で、中国武術を習得する者のあり方を浮き彫りにしています。
おそらく、こういったテーマを描くのには本作のような日常に根付いた物語が一番適しているのだと思います。
チョン・ティン・チーも決して悪人というわけではなく、なぜかどこかでボタンをかけ間違えてしまったがゆえにイップマンと戦う事なります。
そういう背景で挑むことになるラストバトルはシリーズ屈指の名勝負となっています。
同じ流派であるがゆえにお互いの技の弱点も分かっていますので、そこには技術的な事よりも負けられない、という思いが少しでも勝っている者が勝利するという気迫の勝負となります。
この名勝負を展開したチョン・ティン・チーというキャラクターは好評を博し、その後チョン・ティン・チーを主役にしたユエン・ウーピン監督作(マスターZイップマン外伝)というスピンオフ作品が製作されることで形となりました。
それほど魅力的なキャラクターだったという事です。
このチョン・ティン・チーとのラストバトルも凄いのですが、やはり本作の売りの一つである実際の元ボクシング世界チャンピオン、マイク・タイソンとの重量感のあるバトルはカンフー映画史上に残名シーンとなっています。
ボクシングVSカンフーという事で前作のラストバトルでも一度描かれてはいますが、演じているものが本物の元チャンピオンという事でかなりボクサーとしてリスペクトしながらの演出でイップマンと互角に渡り合うその凄まじいパンチ力を強調したようなアクション演出が、前回や、他の作品で見られるようなボクシングバトルとは一線を画す破壊力が直に伝わる凄まじい名勝負となっていました。
それと本作は中盤エレベーター横の階段を下りながらムエタイファイターの刺客と戦う、という一風変わったシチュエーションカンフーバトルが用意されています。
数あるカンフーバトルシーンでこのような特徴的なシーンは観た事がなく、非常に興奮するシチュエーションでした。
個人的にはリュー・チャー・フィー主演作(ワンス・アポン・ア・タイム英雄少林拳武館激闘)やジェット・リー主演でドニーと激突した(ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ天地大乱)での狭い通路でお互い動きが制限されている中でのバトルに匹敵する名勝負だと思います。
というように本作は物語こそ規模の大きいものではありませんが、カンフー映画史に残るような名勝負や奥さんとの大切なシーンが用意されている、シリーズ完結篇へとつながる重要な作品となっています。
↓(イップマン)シリーズ最新作第4弾(イップマン完結)はこちら↓https://ei-ga.net/%e3%80%8e%e6%8e%a8%e8%96%a6%ef%bc%81%e3%82%ab%e3%83%b3%e3%83%95%e3%83%bc%e6%98%a0%e7%94%bb%e3%80%8f%e3%82%a4%e3%83%83%e3%83%97%e3%83%bb%e3%83%9e%e3%83%b3%e3%80%80%e5%ae%8c%e7%b5%90%ef%bc%88%e8%91%89/
↓3作目の会話で登場したイップマン詠春拳の大師匠リョンチャンの若き日々を描いた(ユン・ピョウinドラ息子カンフー)はこちら↓https://ei-ga.net/%e3%80%8e%e6%8e%a8%e8%96%a6%ef%bc%81%e3%82%ab%e3%83%b3%e3%83%95%e3%83%bc%e6%98%a0%e7%94%bb%e3%80%8f%e3%83%a6%e3%83%b3%e3%83%bb%e3%83%94%e3%83%a7%e3%82%a6in-%e3%83%89%e3%83%a9%e6%81%af%e5%ad%90/
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