カンフー映画としてのおすすめ度 ★★★★★☆☆☆☆☆
少年時代のイップマンの活躍を(イップマン宗師)のリ・リーミン監督が描く、中国映画久しぶりのしっかりしたカンフーアクション作品!!当たり前ですがカンフーシーンあります!!
作品紹介
日本劇場未公開
今回ご紹介するのは、終わりそうで終わらないイップマン作品の最新作です。
それでは、まずはあらすじから、
1917年、香港。高校生のイップマンは、同級生らと登校し、英語で行われる弁論大会の始まりを待っていた。
そんな時、突然謎の武装集団が、校内に押し入り、建物を占拠、同級生は人質に取られ、身代金を要求される。
緊迫した状況で、危機に立ち向かうイップマンだったが、対峙したボスは、良く知る人物だった!?
(イップマン)を主人公としたカンフー映画シリーズの最新作です。
とは言っても勿論、ドニー・イェンが主演したシリーズ(詳しくはこちら)とスピンオフである(イップマン外伝マスターZ)(詳しくはこちら)以外は特に関連がありませんので、
物語が連続しているという事はなく、それぞれが独立した作品内容となています。
そんな数あるイップマン映画の中の派生、というか亜流作品にハーマン・ヤウ監督、デニス・トー主演による(イップマン誕生)があります。
こちらは、主演こそドニー・イェンではありませんが、脇役で本家シリーズにも出演していたサモ・ハンやルイス・ファン、ユン・ピョウなども登場し、
本家ほどではないものの、しっかりとしたイップマン映画として楽しめる作品になっていました。
で、その後同じくデニス・トー主演で製作された(イップマン宗師)(詳しくはこちら)は、残念ながら、完全に香港映画ではなくなってしまい、
デニス・トー以外は全て中国側のスタッフ・キャストに変わってしまう、という亜流のさらに亜流、というような作品となっていました。
内容も、今ままでの有名なカンフー映画の寄せ集めのような総集編のような内容で、真似をしつくした挙句に最終的に何故かイップマンがブラックマスクになってしまう、
という何でも真似れば良いというわけではない、ような内容となっていました。
で、本作ですが、本作の監督はまさかの(イップマン宗師)の監督、リ・リーミン監督作品です。
という事で、亜流作品に主演したデニス・トー作品のさらにその亜流となる続編の監督が、またさらにデニス・トー以外のキャストで亜流を製作する、
というもうドニー・イェンとは遥か彼方にかけ離れた作品となっています。
要するに全く関係ないイップマン映画です。
という事プラス、最近の中国映画でよく見かけるカンフー映画なのにカンフーアクションシーンが全くない、
とか主演が動かないとか、ワイヤーでぶんぶん振り回されるだけ、とかの良くない状況を加味すると鑑賞前から物凄くハードルは下がりますが、、、、
実際鑑賞すると、、、
これが、まさかのちゃんとしたイップマンが主人公の娯楽カンフーアクション映画になっていました!
上映時間も短いので嫌な予感もしていたのですが、短い時間でもなんとかしっかりまとまった物語となっていて、
詠春拳を基調としたカンフーアクションも意外にしっかりと時間を割いて描かれ、主人公もできるだけ自身でアクションもこなし、
アクション自体も過度にワイヤーに頼ることなく、しっかりとした武術アクションを魅せていく、というカンフー映画として十分に楽しめる内容となっていました。
このアクションに関しては、イップマンの実子イップ・チュンがアドバイザーとして参加していますので、そういう点でもワイヤーで誤魔化すようなアクションにはしない、
という製作陣のアクションに対する意気込みが伝わってくるような作品となっています。
後半にはしっかりとライバルとのバトルや、ラスボスとのバトル展開もありますのでカンフーアクションとしてしっかりとツボを押さえた作品となっています。
上映時間が短いのでドラマ部分や人物紹介などが少な目ではありますが、とにかくカンフーアクション映画において、
当たり前のことですがカンフーアクションシーンが楽しめる、という事は一番大切な事ですので、そこをクリアできているだけでも他の作品よりもずっと価値のある作品ではないでしょうか。
そもそもカンフーアクションシーンのないカンフーアクション映画を製作しようとする意図が全く理解できない事ですが。
で、物語は割とシンプルで、高校生のイップマンが学校に登校し、弁論大会が始まるのを同級生と共に待っていると
突然テロリストが学校を占拠し、生徒を人質にとり、身代金を要求しだす、という事で、たまたま離れた場所にいたイップマンが孤軍奮闘する、
という分かりやすく言うとイップマン版ダイハード、という感じで展開していきます。
ただ、やはり上映時間を短めにする、というお約束があるのか、そこから一人づつ倒していくような展開ですと時間がかかりますので、
さっさと前半でテロリストのボス(実はかつての恩師)とご対面となり、15分間学校内をテロリストから逃げきったら人質を解放しろ、と恩師に時短勝負を持ちかけます。
普通は拒否して終わりですが、なにせ元恩師ですので、その申し出を受けて学校内を敵のテロリストと戦いながら逃げ回る、という展開になっていきます。
かなり強引ではありますが、その戦いの中で、恩師以外にも兄弟分の親友と戦ったり、全身黒づくめのレディドラゴンと戦ったりと、
なかなか娯楽要素強めのバトルが展開されていきます。
少し残念なのは、散々カッコつけて自分の渋さに酔いしれている感じのかつての恩師(何を教えている先生かはよく分かりません)が、
結局全然カンフーファイトを披露することがない、という事でしょうか。
その代わりにさっきまでだれも注目してなかったようなキャラクターが急にラスボス的に活躍しだします。
ただ、この急にラスボスに昇格した悪党は、実は無茶苦茶強い、という設定のようで、2人がかりで戦っても全く歯が立ちません。
だったらもっと早くに注目させて欲しいところですが、そんな強敵に対して二人がかりでも全く歯が立たないという絶体絶命のピンチに、どうなるのかと思いきや、、、
まさかの人質となっていた高校生たち全員(25人ぐらい)で、立ち向かうという、
こういう作品では観たことのないような展開でクライマックスへと突入していきます。
本当に観た事がないようなシーンなのでちょっと熱くなるぐらいになっています。
女子高生を含む普通の高校生のような外見の生徒たちが、ガンガン殴られ、蹴られしながらそれでも立ち上がってみんなで強敵に立ち向かっていきます。
女子高生もグーパンチでぶん殴られ、吹っ飛びます。
それでも、立ち向かっていきます。
このクライマックスは、イップマンものとしての面白さではなく、カンフー映画としての面白さでもなく、
撃たれながらも立ち上がる、若者たちの姿が熱いアクションドラマとしての熱さが強調された展開となっています。
惜しいのは、やはり短かすぎて人物や細かい描写などが描き切れていない部分がありますので、もっとちゃんとした上映時間で、
じっくりと予算を懸けて世界の映画館で上映できる作品として製作すれば、きっとイップマン映画の中でもしっかりと楽しめる作品になっていたかもしれない、というところでしょうか。
そう考えると、やはり現在の配信作品メインになってしまっている中国映画界の良くない流れを感じてしまいます。
非常に勿体ないですね。
そんな高校生イップマンを演じるのは、チェン・カイコー監督の(運命の子)で主演を演じたチャオ・ウェンハオで、
流石に巨匠に認められただけあって、しっかりとした演技で若きイップマン像を創り出していて、アクションも結構こなしています。
イップマンも良い感じですが、個人的にはかつての親友でライバルとなるハック・フー役のリー・ハオシュアンの渋さと、
しっかりとしたアクションが非常にカッコ良く映りました。
リー・ハオシュアンはこれまでにも(激突!キング・オブ・カンフー)(詳しくはこちら)でも描かれているフォ・ユエンジャ(フォ・ユンガップ)を主人公としたテレビシリーズ等にも主演しているようなので、
今後他のカンフーアクション作品でも活躍が見れるかもしれません。
という事で、本作はイップマン映画でもありつつ、しっかりしたカンフー映画にもなっている、楽しめる娯楽作品となっていますので、
イップマン好きの方や、カンフー映画好きの方等ご鑑賞されてみてはいかがでしょうか。
こういう作品ならどんどんDVD化していってもらいたいですね。
作品情報
2020年製作 中国製作 カンフーアクション
監督 リ・リーミン
出演 チャオ・ウェンハオ、ムー・ファンビン、リー・ハオシュアン、シャオ・シア
↓ランキングに参加しています。宜しければ下記をクリックお願い致します。↓