『推薦!』⦅香港映画⦆スリ(SPARROW)87分

投稿者: | 2020年6月8日

お薦め度 ★★★★★★★★★★

完成まで4年を費やした、ジョニー・トー監督の美学が光るスリの世界に生きる男たちの面子を懸けた大勝負!

香港の街の景色が綺麗に切り取られています
冒頭のワンカット長回しスリシーン
いつも食堂で作戦会議(ジョニー・トー作品は食事シーン多め)

作品紹介

日本劇場未公開

今回ご紹介するのは、ジョニー・トー監督の完成までに四年を費やした傑作アクションサスペンスです。

それでは、まずはあらすじから、

香港の街中でスリを働く4人の男たち。

そのチームのリーダーであるケイはある日、趣味であるカメラで街中を撮影中に何者かに追われる美女に遭遇する。

偶然カメラのシャッターに収まる美女。

その日以来ケイはその女性の事が忘れられなくなる。

時を同じくして他の仲間3人のところにも謎の女性が現れる。

いつも何かから逃げている女性。

やがてこの女性の背後に浮かび上がるスリの世界の大物の存在。

関わった者に命の保証はない。

しかし、ここで逃げたら明日からこの世界で前を向いて生きていくことはできない。

ケイたちは自らの面子を懸けて闇組織に戦いを挑む決意をする!

とにかく香港という町が綺麗に撮影されています
今回はちょっと小者系のサイモン・ヤム
街中を走り廻る文雀ケリー・リン

香港映画界の人気監督、ジョニー・トー監督作品です。

1990年代後半から目まぐるしく製作された傑作群を撮影しながら、旧知の仲の俳優たちと少しづつ撮影していき、完成までに実に4年間も費やした渾身の一作です。

インタビューで監督自身が語っていましたが、本作は移り行く時代の中で香港の歴史ある建物を後世に残していく、という企画意図の元に製作を決定した、との事です。

当初の企画ではミュージカルとして考えていたそうでその片鱗が完成した本編のラストの雨傘対決シーンに残っています。

そういった意味もあり、始まりから終幕まで音楽が絶えず流れているような雰囲気のある作品となったようです。

また、物語の時代設定は現代ですが、イメージとして1960年代をイメージしているらしく作中主人公が(というか4人乗りしている場面もありますが)絶えず自転車に乗っていますが、交通機関の発達している香港では現在では一部の郊外の地域以外では自転車に乗っている人も見かけなくなっておりそういった面でも歴史のある乗り物として意識的に登場させているようです。

個人的にはジョニー・トー監督作品は好きな作品いっぱいありますが、本作の完成度は群を抜いているのではないかと思います。

ストーリーは特に捻ったような物語もなく、スリを生業としている4人の男が面子をかけて大物に挑む、というシンプルな物語ですが、アンダーグラウンドなスリ、という世界に生きる人々の物語ながら本当の意味での悪人は登場しません

この物語の住民はどこにでもいそうな人たちばかりですので、銃の達人や格闘の達人などは登場しません。

そういった現実的な登場人物のキャラクターの描き方も本作の魅力の一つだと思います。

そして、ラストに展開されるスリ合戦は、まるで少年漫画の料理対決のような現実では荒唐無稽に見えそうなシーンを独特のビジュアルセンスでロマンチックで魅力的なシーンへと昇華させています。

このシーンは監督がハリウッド製の名作(シェルブールの雨傘)の大ファンなので、似たようなシーンを入れたいと思い撮影した、との事で、監督のイマジネーションの幅広さに驚かされます。

ラストシーンも素晴らしいですが、もう、始まりから終わりまでこの作品の全てが見どころです

しかしながら、本作はこれほどの傑作にも関わらず日本劇場未公開であるうえに、DVD発売はなんとか叶いましたが、ブルーレイ発売もありません。

しょうがないので香港版の輸入盤ブルーレイを購入して繰り返し鑑賞しています。

ただ、ジョニー・トー監督作品は海外でも評価が高く、リメイク率が高いです。

ブレイキングニュース)はロシアで(ニュースメーカーズ)に、(天使の眼、野獣の街)は韓国で(監視者たち)に、(毒戦ドラッグウォー)は韓国で(毒戦BELIEVER)にとリメイクされる機会が多いです。

そのタイミングで旧作であってもブルーレイ発売される可能性もありますので気長に待てばもしかしたら発売されるかもしれません。

という事で本作は日本劇場未公開という事で他のジョニー・トー監督作に比べて紹介される機会も少ないかもしれませんが、両若男女問わず楽しめる傑作だと思いますので、是非一度ご鑑賞ください。

ジョニー・トーカットですね(全員同一フレームに収まっています)
香港の街並みの中を縦横無尽に走る美女
香港の景色を堪能できます

作品情報

2008年製作 第9回東京フィルメックスでのみ上映 日本劇場未公開

香港製作 サスペンスアクション

監督 ジョニー・トー

出演 サイモン・ヤム、ケリー・リン、ラム・カートン、ロー・ホイパン

まるで中学生のような仲間たち
いや、それは危なすぎるって!

スタッフ・キャスト

監督のジョニー・トーは1980年代から1990年代中ごろまではチョウ・ユンファ主演の(過ぎゆく時の中で)や(チョウユンファゴールデンガイ)、チャウ・シンチー主演の(マッドモンク魔界ドラゴンファイター)や(チャウ・シンチー熱血弁護士)などのいわゆるスター性を前面に押し出した作品を多く製作。

しかし、自ら製作会社ミルキーウェイを設立した1990年代後半以降、(ヒーロー・ネバーダイ)、(ザ・ミッション非情の掟)、(暗戦デッドエンド)、(エグザイル絆)などの銃の世界に生きるノワールアクションを撮影する一方、(イエスタデイワンスモア)、(NEEDING YOU)などのラブコメ作品を製作するなど作家性と商業性を両方兼ね備えた秀作を数多く発表している。

主演のサイモン・ヤムはジョニー・トー監督作品の常連俳優で主演、脇役、善人、悪人となんでもこなす幅の広い演技力を武器にアンジェリーナ・ジョリー主演の(トゥームレイダー2)、オーランド・ブルーム主演の(スマートチェイス)などのハリウッド作品にも出演経験がある大ベテラン俳優。

ラストのスリ対決
ジョニー・トー監督のセンス爆発
観た事ないようなシーンです

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