お薦め度 ★★★★★★★★★☆
道を外れた二人が突き進む破滅的な銃の道、その行きつく先は、、。メキシコを舞台に描く傑作ガンアクション!!
2000年製作 アメリカ ガンアクション
監督・脚本 クリストファー・カックァリー
製作 ケネス・コーキン 音楽 ジョー・クレマー
出演 ベニチオ・デルトロ、ライアン・フィリップ、ジュリエット・ルイス、ジェームズ・カーン
監督のクリストファー・マックァリーは(ユージュアルサスぺクツ)でアカデミー賞脚本賞受賞後、本作で監督デビュー。その後監督作はしばらくなかったが2008年の(ワルキューレ)で脚本を担当以降トム・クルーズのお抱えスタッフになったようで(アウトロー)、(ミッションインポッシブルローグネイション)、(ミッションインポッシブルフォールアウト)と連続で監督・脚本を担当している実力派。
出演は本作のクリストファー・マックァリー監督の脚本作品(ユージュアルサスぺクツ)で注目されその後(チェ)シリーズ、(トラフィック)、(ボーダーライン)シリーズと話題作への出演が常に続くベニチオ・デルトロ。
相棒役に(ラストサマー)、(54フィスティーフォー)、(クルーエルインテンションズ)などの青春サスペンスなどに主演後(父親たちの星条旗)や(リンカーン弁護士)などでの落ち着いた魅力で人気のイケメン俳優ライアン・フィリップ。
誘拐される妊婦役で(ケープフィアー)の娘役から(カリフォルニア)、(ナチュラルボーンキラーズ)、(フロム・ダスク・ティル・ドーン)と常に危なっかしいキャラクターの役柄を演じる事の多いジュリエット・ルイス。
そして組織の熟練の殺し屋役に(ゴッドファーザー)シリーズ、(キラーエリート)、(遠すぎた橋)と名作に多く出演してきた伝説の俳優ジェームズ・カーン。
あらすじ
アンダーグラウンドな世界で生きるロングボー(ベニチオ・ドルトロ)とパーカー(ライアン・フィリップ)は街でふと屈強なボディーガード二人に護衛された妊娠中の若妻を見かける。
その日暮らしの犯罪に手を染めていた二人はこの妊婦を誘拐し身代金を要求する計画を思いつく。しかし、成り行きで計画したこの誘拐は妊婦の父親が裏社会の大物、チダックだった事で計画は波状し、逆に組織の刺客から追われる身となってしまう。
そんな状況の中、臨月の妊婦と悪党二人の逃避行が始まる。果たして3人の運命は!?
感想
監督のクリストファー・マックァリーは本作が公開された当時は(ユージュアルサスぺクツ)のアカデミー賞受賞で話題になった直後の監督作品デビューでしたのでDVD(ビデオ)ジャケットにも大きく「ユージュアル・サスぺクツ脚本家が仕掛けた新しい罠」という宣伝文句があり、いかにもラストに何かしかけのある作品のような売り方をしています。
しかし、本作の魅力はそんなところには全くなく、とにかく他のハリウッド作品ではあまり見る事ができないようなガンアクションシーンにこそ魅力が詰まっているといえます。
原題も(THE WAY OF THE GUN)です。邦題の(誘拐犯)も内容と違うものではありませんが、せっかくこんなカッコいい原題がついているのにもう少しなんとかならなかったのでしょうか。
そんなところでも(ユージュアルサスぺクツ)のサスペンス色を少しでも出したかったという意図があったのかもしれません。まぁ、公開当時はしょうがないですね。
で、そのガンアクションの魅力ですが例えていうなら香港映画のジョニー・トー監督やジョン・ウー監督作品をイメージしていただけたら分かりやすいと思います。
淡白にパンパン打ち合って終わり、ではなくカメラワークなど一番カッコよく見える角度を十分検討して、しかもその銃撃シーンを最大限に生かせる場所を選んで撮影しています。
前半の吹き抜けの長い通路や後半のメキシコの砂漠地帯にある廃れた売春宿での立体的な銃撃戦など、もうそのシチュエーションだけでジョン・ウー作品を彷彿とさせてワクワクするような設定です。
対する敵も若手のプロのボディガード二人組と後半参戦してくる熟練の裏社会の生き残り軍団と三つ巴になっていきます。
このキャラクター設定も良くできており若手の二人の内、黒人の方にはある秘密があり、その秘密も物語展開の鍵となっています。
そして熟練軍団の存在がこの作品の世界観を決定づけています。ちょっと生意気な態度の若手ボディガードに対して「この世界で長生きしている老人は尊敬しろ。彼らは生き残っているのだから」と言い放つぐらいのレジェンドです。
ちょっと舐めてた(失礼ながら)ご老人にビシっとこんな事言われたらかなりビビッてしまいますね。
そして主演二人ですが、主人公の一人ロングボーは後のデルトロが演じる事になるキャラクターに近い感じですが本作では色々な犯罪を犯してきた裏社会に生きる男が妊婦を前にして切羽詰まった状況で最後に果たしてどのような行動にでるのか?という物語展開が一つ魅力となっています。
そしてもう一人の主人公パーカー。このパーカーのみが個人的にはちょっと設定が薄いというかはっきりしない、感情移入しにくいキャラクターとなっているように感じてしまいました。
それでもジュリエット・ルイスの相変わらずの危なっかしい熱演なども加わって登場人物全員次にどうでるか予測できない中でのラストの怒涛の銃撃戦で得られるカタルシスは半端ないです。
あと、本作で劇中流れるジョー・クレマーの素晴らしくカッコいい音楽は個人的にはアクション映画史上最高レベルにカッコいい音楽だと思っています。
この音楽があるのとないのでは本作のイメージは全く変わってきます。それぐらいにアクションシーンを盛り上げる大きな要素になっています。
ご覧になる機会があればその辺も含めて少し大きめの音量でのご鑑賞をお勧めします。しかしそんな名曲が聴けるサウンドトラックですが残念ながら日本盤は発売されていないようです。ですが、輸入盤でしたら存在していますのでこちらもご興味あれば是非聞いてみてください。
因みに本作はDVDは発売されていますが残念ながらブルーレイは発売されていません。
正直今の時期で発売されていなければ今後の発売もあまり期待できそうにありませんのでDVDなどでご鑑賞ください。DVDには特典としてなぜか音楽担当のジョー・クレマーの音声コメンタリーがついてます。この人選も他の作品とはちょっと違った人選で面白いです。
という事でブルーレイ発売にも漏れてしまった忘れられつつある本作ではありますがガンアクション映画としては非常に面白い作品ですので機会があれば是非ご覧ください。