私の知らないわたしの素顔(celle que vous croyez)101分

投稿者: | 2020年3月25日

50代女性の老いに対する不安や恐怖を女性目線で描く、虚実入り乱れるロマンチックスリラー

2019年 フランス製作 サスペンス

監督・脚本 サフィ・ネブー 原作 カミーユ・ロランス

出演 ジュリエット・ビノシュ、ニコール・ガルシア、フランソワ・シビル、ギョーム・グイ

出演は(存在の耐えられない軽さ)、(ポンヌフの恋人)、(イングリッシュペイシェント)などの名作に出演し、近年も是枝裕和監督の(真実)等精力的に活躍し続けるジュリエット・ビノシュ。共演は(愛と哀しみのボレロ)等の伝説の女優であり、監督でもあるニコール・ガルシアと(ラブ・セカンド・サイトはじまりは初恋のおわりから)の若手注目株フランソワ・シビル。原作小説は2016年に出版されベストセラーとなりました。

あらすじ

大学で文学を教えているクレール(ジュリエット・ビノシュ)は、精神分析医のボーマン(ニコール・ガルシア)のカウンセリングルームで自分の身の上話をしていた。2児の母である彼女は長年連れ添った夫とは離婚し、若い建築家リュド(ギョーム・グイ)と付き合っていた。ある日、リュドとの別れの予感を感じ取ったクレールはFaceBookで接触を試みるが承認拒否されてしまう。そこで別の新しいアカウントを製作し別人クララ・アントゥネスとしてリュド本人に直接ではなく友人のアレックス(フランソワ・シビル)から近づいていく。やがて、アレックスとクララ【クレール】は接触を重ねるうちに愛情が芽生え、ネット世界で親密な関係を築いていく。そしてお互いの気持ちが抑えられなくなるところまできたとき、アレックスは突然クララに会いにやって来る。そのときクララのとった行動は、、。

感想

個人的にはあまりフランス映画に詳しくなく、本作も予告編を見て興味をそそられたという理由だけで鑑賞しました。出演作品も(GODZILLAゴジラ)と(ゴースト・イン・ザ・シェル)となぜ出演したのか分からないハリウッドエンターテイメントの2作ぐらいしか見たことがないくらい出演作未見でした。もちろん存在は知っていましたし、出演作品も世界的な評価を得た名作ばかりなので大女優であるのは分かっていましたが、あまりに自分が普段見ているようなジャンルの作品とかけ離れていたジャンルだったので今まで見る機会がありませんでした。で、本作で初めて本格主演している作品を見たのですが、思ったのは小柄なのに内面の表現力の静かな爆発力がもの凄い、という事でした。本作はおそらく見る人を選びます。メインのターゲットは主人公と同世代の女性です。原作は未読なので原作と映像化された本作との違いは解りませんが、主人公が日常生活においての老いに対する不安や心の内などが非常にきめ細やかに描写されていて、同世代にとっては感情移入せずにおれないのではないかと思います。また、サフィー・ネブー監督もインタビューで答えていましたが本作は黒澤明監督の(羅生門)に影響を受けているようで、主人公が経験した事を精神科医に話す会話によって物語が進んでいきます。ですので、本当に実際起こったことなのか、はたまた主人公の空想(願望)の話なのか、が曖昧になっており後半さらに捻りが加えられながら始めて2人が接近するシーンへとなだれ込みます。このシーンは非常に切ない名シーンとなっています。おそらく同世代の女性の方は感情移入の度合いが最高潮になるシーンだと思います。正直ハリウッドのエンタメ系の作品は他のキャストが演じても問題ないような役柄でしたが、本作は年齢と経験を兼ね備えた今現在のジュリエット・ビノシュにしかできない名演技だと思います。同世代の女性の方やフランス・ヨーロッパ系の落ち着いた大人の雰囲気の日常生活に根付いたスリラー映画が見たい、といった方には特にお薦めです。

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